若手噺家の登竜門である「令和7年度NHK新人落語大賞」が、10月25日(土)にNHK大阪ホールで開催され、全国生放送されました。予選を勝ち抜いた桂九ノ一、桂米輝、春風亭一花、春風亭昇羊、笑福亭笑利、立川かしめの6人が生放送でネタを披露。3年連続3回目の本選出場となった春風亭一花が悲願の大賞に輝き、「夢みたいです!」と目をうるませました。

同点で決選投票を制して悲願達成!
「NHK新人落語大賞」は、前身の「NHK新人落語コンクール」時代から、およそ半世紀の歴史を持つ大会。東京からは「二ツ目」、上方はそれと同程度の芸歴で、かつ入門15年未満の若手落語家たちが頂点を競います。
今回は東京予選89人、大阪予選32人の計121人が参加。本選の審査員を務めるのは、桂文珍、春風亭小朝、片岡鶴太郎のほか、関西の演芸情報を掲載するフリーペーパー『よせぴっ』の日髙美恵編集長、落語評論家でもある音楽雑誌『BURRN!』の広瀬和生編集長です。
本選出場者6人は、当日の事前抽選で決定した出番順で、この日のために練り上げた11分のネタを披露しました。すべてのネタが終了後、審査員1人10点、合計50点で採点が行われます。
合計点は出番順に、立川かしめ(東京)「まんじゅう怖い」42点、桂九ノ一(上方)「御公家女房」46点、春風亭一花(東京)「厩火事」49点、春風亭昇羊(東京)「権助提灯」47点、笑福亭笑利(上方)「苦節二十年」49点、桂米輝(上方)「シックスパック」42点となり、一花と笑利が同点に!
緊張感漂うなか、決戦投票が行われ、4票を集めた春風亭一花が見事大賞に輝きました。

一花が口演したのは古典落語「厩火事」。彼女なりの新しい解釈で夫婦の機微を表現し、オリジナルのサゲで挑みました。主人公の“お埼”そのもののようなナチュラルな演技力が光った一席を、審査員の文珍は次のように評価。
「女性の揺れ動く気持ちをうまく表現していました。お埼の微笑ましい感じが、この噺の狙い通りになっていて、良かったです」
文珍は今回の大会について「幅広いバリエーションの落語を楽しませてもらいました」と講評。そして「笑利くんも惜しかった!」と惜しくも大賞を逃した笑利を労う一幕も。
笑利は、自信作の新作落語で挑み、マクラから爆笑を掴んでいただけに悔しさを滲ませながらも、「賞金だけもらっていきます!」とボケて笑いを誘いました。
優勝が決まった瞬間、一花は、「夢みたいです! この優勝はわたしを応援してくれたお客さんのもの。トロフィーは師匠の一朝に捧げたいと思います」と感謝。放送終了後は、「ここからがチャンス。落語会を盛り上げるためにもっと頑張っていきたいです」と抱負を述べました。
「長かったです…」
大会終了後の囲み会見で、一花は、3回目の本選出場で大賞を勝ちとったことについて、「長かったです……」としみじみ。2013年に春風亭一朝に入門した一花は、「今日は結果が出たので本当によかったです」と安堵の表情を浮かべました。
今回、披露したネタについて、「自分が演じるには、本来のサゲがしっくりこなくて。筋とは関係のない無駄な部分が面白いので、それを活かしながら11分に仕上げました」と話します。大好きなネタだからこそ、納得いくまで約2年かけて練り直したと語りました。
この日、一花は、お客さんにもらったというお守りをパンパンに詰めたポーチを持参し、緊張をほぐしたとか。また、抽選で決まった出番順が昨年と同じ3番手だったことで、闘志に火が付いたといいます。

2021年に女性落語家として初めて大賞に輝いた桂二葉とは、公私ともに親しい間柄。二葉にネタのアドバイスをもらったそうで、「(前日に)焼き肉定食をごちそうしてもらいました」と明かします。
そして一花は、「面白い女性の落語家がたくさんいるので、皆さんに知っていただけるようにしたいです。古典落語が好きなので、いろんなネタに挑戦して、新しい可能性を見つけたい。これからも頑張っていきます」と意気込みました。
最後に「師匠やお客さん、たくさんの周りの人に恵まれて、ここいると感じました。ありがとうございます!」と感謝しました。
