浪曲師の二代目京山幸枝若が、多年にわたる伝統芸能の振興と発展への貢献を評価され、2026年春の叙勲で「旭日小綬章」を受章しました。5月20日(水)には、東京・ホテルニューオータニで会見を実施。幸枝若が、これまでの歩みを振り返るとともに、浪曲への思いを語りました。

「これをきっかけに浪曲が繁栄してくれたら」
幸枝若は、2024年に浪曲界で初めての重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定され、その後も日々、芸を磨き続けています。金屏風の前に登場した幸枝若は、こう喜びを語りました。
「こんなにうれしいことはございません。2年前に『浪曲語り』が国の重要無形文化財に指定されました。当時もそうでしたが、本日も驚いております。これをきっかけに浪曲が繁栄してくれたら」
幸枝若は、浪曲の知名度の低さについて、「70歳代の高齢の人から『父に連れて行ってもらったことがある』という声が聞こえる程度」だと語ります。そのため、10年ほど前に「このままだと浪曲が忘れ去られてしまう」との危機感を抱き、後進の育成に取り組み始めたそうです。
「“これはやばいな”と思ったことをきっかけに若い子を増やそうと思ったけど、なかなか増えなかった。でも、2年前に保持者となったとき、人間国宝が浪曲界初ということで、東京でも話題になり、若い子たちが増えたんです。でも、肝心の関西がまったく増えない。もう少しがんばらなアカンなと思っています」
そして「補助金をうまく使いながら、若い子たちを育てる活動に取り組んでいます」と語りました。

浪曲は「和製ミュージカル」
浪曲は、三味線を弾き、節と啖呵(たんか/セリフ)で物語を演じる芸能です。幸枝若は浪曲を「和製ミュージカル」と表現。そのうえで「自分で好きなようにお芝居をして、好きなように歌を入れられる」と、魅力を熱く語ります。
「吉本の舞台でもいろいろなことをやりました。『王貞治物語』と題して、ジャイアンツのユニフォームを着て、バットとグローブを持って……僕、阪神ファンやのにね(笑)。ただ、そうしたお笑い的なことを中心にやろうとしたら漫才や落語には勝てない。やはり、浪曲の良さは『人情』や『親孝行』などのなかにお笑いがあり、涙があり、かっこよさがある。『これこそが浪曲なんやな』と気づいたのが40代でした」

自由度が高いと言っても、守るべき大切なことがあります。幸枝若は「浪曲をする若い人たちには、(表現は自由だが)『基礎となる古典を忘れたらいかんで』と言い続けています」と語りました。
幸枝若は現在、浪曲師としての公演に加え、音楽学校での特別講義、さらに会長を務めている「浪曲親友協会」の活動などで常に走り回っているとのこと。そして、「会長や人間国宝になってもこんなことするんやろうかと思いながら、公演後にのぼりを片づけています」と笑いを誘いつつ、「やっぱり浪曲が好きですから」としみじみと語りました。
息抜きや余暇の楽しみ方を問われた幸枝若は「ゴルフか甲子園ですね」と笑顔を見せます。また、健康法については「すぐに病院に行くこと」と明かし、「私、ちょっと悪かったらすぐに病院に行くんです。朝起きて気分が悪いと思ったら脳外科に行って、MRIを撮ってもらいます。病院が大好きなんで、すぐに行きます」と話しました。
旭日小綬章を受章し、人間国宝としてますます輝きを放ちながら浪曲界を牽引する幸枝若。「浪曲が好きだから」というシンプルな情熱を胸に、伝統の灯を若い世代へと繋ぎ続けます。第一人者が魅せる伝統芸能の未来から、今後も目が離せません。

