傑出した文才と芸人ならではの知識と経験を武器に『火花』(ピース・又吉直樹)、『ホームレス中学生』(麒麟・田村裕)など、数々のベストセラーを世に送り出してきた吉本の芸人作家たち。作品は映像化・舞台化もされ、社会現象を巻き起こしてきました。そんな吉本の「次なる大ヒット原作」を発掘すべく始動した新プロジェクトが『芸人原作オーディション ゼロイチ』です! そこで今回は、最終選考に勝ち進んだ18人によるプレゼン大会の様子をレポート。名だたる審査員たちの心を動かし、初代王者となるのは果たして!?

「M-1グランプリ2025」準優勝のドンデコルテ・小橋、「ダブルインパクト2026」優勝の滝音・さすけも参戦!
【最終選考参加者】※出演順
〇ドンデコルテ・小橋共作『アメリカ人に憧れて』
〇ヒューマン中村『死神』
〇翠星チークダンス・木佐『家族割』
〇そいつどいつ・松本竹馬『選挙に行かなかったせいで』
〇軍艦・仁『二光年先の星』
〇元NMB48・安部若菜『ここにきてください』
〇滝音・さすけ『彼女』
〇あわよくば・ファビアン『ショートショートトーキョー』
〇アキナ・山名文和『テーマパークの女』『思い出のない母』『ゆうじさん』『小畑という男』
〇瀬尾健太朗『飛べない蝶は街の夢を見る』
〇平成ノブシコブシ・徳井健太『白か黒か』
〇つじくん『ループする芸人』
〇野村尚平『瀬戸際のあっこちゃん』
〇ピストジャム『リボン』
〇パタパタママ・木下貴信『清掃ロマン小説「汚れたウエスで涙を拭けるか」』
〇ホテル・橋本大祐『推しでもない芸人と繋がりたい』
〇シゲカズです『口の悪い少女』
〇ニッポンの社長・辻クラシック『仕掛けたダイナマイトが爆発した』

又吉「もらった資料は『三国志』くらいの量に」
このプロジェクトでは、2025年12月から2026年3月まで、メディアプラットフォーム「note」でエントリー作品を募集。吉本興業所属の芸人・タレント約160人・600作品を超える作品が寄せられ、そのなかから18人が最終プレゼン大会へ駒を進めました。
大会には、オブザーバーの又吉をはじめ、プロジェクトに全面協力したnote株式会社、そして、主要映像配信プラットフォーム、映画会社、出版社など、エンターテインメント業界をけん引する総勢29社が審査員として出席。さらに、野沢直子と、ロックバンド「クリープハイプ」のボーカルで、小説家としても活躍する尾崎世界観がゲストコメンテーターとして参加しました。

MCを務めたのは、ピン芸人のタケトとしずる・純。又吉は冒頭で、「18作品って、けっこう多い。もらった資料が『三国志』くらいあった」と笑いを誘いつつ、「読んでみたら、たしかに面白かったので楽しみです。プレゼンでさらに(作品の魅力を)伝えてくれるんですもんね」と笑顔を見せました。
『ゼロイチ』がユニークなのは、作品の質だけではなく最後のプレゼンまで含めて総合的に判断されるところ。作品が持つ「キャラクターの強度」「独自性(新しさ)」「展開性(IP力)」「大衆性」に、最終審査での「プレゼン力」を加えた5項目を各5点満点で審査し、その総合得点で評価が決定します。
また受賞に至らずとも、興味を持った作品があれば、審査員から芸人たちへ直接のアプローチもOK! 最終候補となった全作品に書籍化・映像化のチャンスがあります。

元NMB48・安部「暗い、人のイヤな部分の話を書いてみようと」
18人による熱のこもったプレゼンを経て、最優秀賞・書籍化部門優秀賞・映像原作化部門優秀賞に以下の作品が選ばれました。
【最優秀賞】元NMB48・安部若菜『ここにきてください』 ※【note賞】も同時受賞
作品概要:地図アプリの口コミに、おかしな投稿を見つけた主人公が、その謎を追ううちに、奇妙な出来事に巻き込まれていくさまを描いたモキュメンタリー作品。
■最優秀作品賞
創作活動資金50万円(吉本興業全面バックアップのものと、書籍化・映像化に向けた各社との協議)
■ note賞
noteクリエイター支援プログラムにより、出版各社に書籍化の推薦を案内

今回、芸人以外で唯一、最終選考に残ったのが、この8月にNMB48を卒業したばかりの安部。すでに3冊の本を出版し、『アイドル失格』はTVドラマ化もされた実績があります。安部は今回、ホラー作品に初挑戦した理由をこう語りました。「ホラー好きの母の影響で、幼稚園のころからいろいろなホラー作品を見て育ち、いつか自分でもホラーを書いてみたいという夢を持っていました。それで、NMB48を卒業するこのタイミングで、いままでのように自分に近い世界の話ではなく、これまで書いてこなかった、暗い、人のイヤな部分の話を書いてみようと思いました」
審査員からは「タイトルだけ聞くと普通だけど、読み終わったときに、このタイトルがめちゃくちゃ気持ち悪くなってくる。ホラーでは、どれだけ気持ち悪いかというのが大事なので、すごくよかったです」と絶賛。

「アイドルをやってきて、気持ち悪いと言われることがなかったので、すごく嬉しいです!」という安部に、又吉は「僕はデビュー当時から気持ち悪いと言われ続けてきた」と笑わせつつ、「いままでのような華やかな世界や青春と、気持ち悪いものの両面を書けるのは面白い」と評価しました。
完成度の高さは“令和の星新一”
【書籍化部門優秀賞】あわよくば・ファビアン『ショートショート トーキョー』
作品概要:最終新幹線で品川駅に到着すると、舐められる感触が。なんと、品川駅の看板の『品』の3つの口から舌が出ていて……(『口』)など、東京を舞台にした不思議なショートショート作品群。
■優秀賞(映像化原作部門・書籍化部門)
各賞金5万円(吉本興業全面バックアップのものと、書籍化・映像化に向けた各社との協議)

「ネタ作りと使う脳みそが似ている」「星新一さんらショートショートの人気作家たちの作品が面白すぎた」といった理由でショートショートにハマったというファビアンは、自身の作品の特徴として「読者に感情移入をしてもらえるよう、主人公などの感情を盛り込んでいる」点をアピールしました
審査員からは「3作全部面白くて、発想が最高だし、この文章力で十分に戦える」「文章力も完成度も高い作品で驚いた。令和の星新一」と絶賛が続き、その審査コメントを聞いた尾崎は、「ずっと書き続けている人の凄みと説得力を感じる。令和の星新一というか、ファビ・アン一」と笑いを交えつつ評価しました。
ヒューマン中村「書きたかったのは“才能との壁”と“挫折”」
【映像原作化部門優秀賞】ヒューマン中村「死神」
作品概要:死神が終わらせるのは“命”だけではなかった。売れない役者の前に現れるさまざまな死神。最後に現れた“夢”担当の死神が、そんな主人公の“役者の夢”に終わりを告げる。
■優秀賞(映像化原作部門・書籍化部門)
各賞金5万円(吉本興業全面バックアップのものと、書籍化・映像化に向けた各社との協議)

ヒューマンは「僕が書きたかったのは“才能との壁”と“挫折”。僕が芸人として24年間、くすぶっているなかで感じた葛藤をぶつけた作品です。日常のあるあるなども盛り込んで読みやすくしていて、読み終わったあとに日常の見え方がちょっと変わるような、そんな作品になっていると思います」と熱く語りました。
審査員からは「キャラクター設定がちゃんとしているので、主人公を変えて無限にできそう。ヒューマンのネタの面白さがよく出ていた」というコメントが寄せられたほか、野沢から「芸能界の光と闇をみた感じで、涙が出ました。でも、闇は24年で終わり!」とエールが送られました。
つじくん「売れていない芸人の主人公は僕自身」
【映像原作化部門優秀賞】つじくん『ループする芸人』
作品概要:同じ毎日を繰り返すタイムループに巻き込まれた売れない芸人の壱川は、ループから抜け出すため、悲願のM-1優勝を目指す。
■優秀賞(映像化原作部門・書籍化部門)
各賞金5万円(吉本興業全面バックアップのものと、書籍化・映像化に向けた各社との協議)

マンガ大好き芸人として活動するつじくんは、とくに熱いプレゼンを展開。「“タイムループ×売れていない芸人”というノンフィクション&フィクションだからこそ、リアルな生きざまや生々しい感情をいくらでも込めることができます。売れていない芸人である主人公のモデルは僕自身です! 売れていない自分の執念をこの作品に詰め込みました」と力説し、審査員たちの心を打ちました。
審査員からは「プレゼンで点数がババッと上がりました。まずはマンガでやりたいことをすべて描いて、いずれキャッチ―な深夜ドラマなどになっていけば」というコメントが寄せられました。
また、ショートドラマ化が確約される「FANY:D賞」を受賞したのは、自身の作品の映像化を夢見て毎日LINE動画を投稿し、誰よりも文章を書いてきたというホテルの橋本大祐。現役芸人だからこそ書ける圧倒的なリアリティで、地下界隈の実態やファンとの繋がりを赤裸々に描きました。又吉直樹が部長を務める「第一芸人文芸部」が選出する「第一芸人文芸部賞」を受賞したのは、芸歴18年目のシゲカズです。又吉に名前を呼ばれると、「正直ボロクソ言われると思ってたので、まじでボロクソ言い返したろと思ってたんですけどまじで嬉しいです」とコメントしました。
【FANY:D賞】ホテル・橋本大祐 『推しでもない芸人と繋がりたい』
作品概要:女子大生が親友の推す地下芸人とDMでつながり、優越感から関係にのめり込み全てを失う転落劇。
■FANY:D賞
ショートドラマ化決定、FANY:Dアプリでの配信が確約
【第一芸人文芸部賞】シゲカズです『口の悪い少女』
作品概要:小学生の少女が下校中、目に入るものすべてへ毒を吐くが、読後には優しさが残る短編。
■第一芸人文芸部賞
第一芸人文芸部の次回作への作品掲載、もしくはヨシモトブックス全面バックアップのもとZINEを制作・販売
ドンデコルテ・小橋が著したストリップクラブでのアルバイト体験
最終候補者の中には、こんな人気芸人たちも顔を揃えました。
ドンデコルテ・小橋共作『アメリカ人に憧れて』
作品概要:沖縄出身の小橋が、米兵が多く訪れるストリップクラブで、バーテンダーのアルバイトをしていたころのさまざまな実体験を綴ったエッセイ。

小橋は、「いま、いちばん売れている芸人である僕の作品を絶対に選んだほうがいい。なぜなら話題になるし、選んでくれた人にはSNSでたくさんの“いいね”がつく」と、ドンデコルテ人気を武器にしたプレゼンを展開。と同時に、「皆さんの日常では想像もつかない、ぶっとんだことが頻繁に起こっていて、ウソっぽいと思われるかもしれないけど、真実のみを書かせてもらっている」と作品の魅力もしっかりアピールしました。
審査員からは、「ぜひ画で見たい。マンガなら主人公のコミカルな部分を表情を崩して表現できる。コメディと哀愁の両面を見せられる作品として、最終形まで見えた」と高評価でした。
辻クラシック「いい話に腹が立って、爆発させることにした」
ニッポンの社長・辻クラシック『仕掛けたダイナマイトが爆発した』
作品概要:引きこもりの少年が、父親に無理やり連れていかれた空手道場で、道場最強の少年・ゴウキと組み手をするハメに。しかしラッキーパンチが当たり、勝利してしまう。

辻はあらすじについて、「少年が空手道場からの帰りに、道場を爆発させるという話」と説明。まだ芸人としての仕事がなかった13年前に、なぜかときどき思い出す、空手道場で強い相手にたまたま勝ったときの記憶をブログに綴っていたといい、「書いてみたら、何かノスタルジックなええ話になってるっていうことに腹が立ってきて、爆発させようって」と辻らしい発想を語ると、審査員から笑いが起きました。
審査員からは「(ニッポンの社長の)コントの不条理さが文章にも表れている。最後に台なしになるところが子どもも大人も楽しんで読めるので、絵本やコミカライズに向いている」というコメントが寄せられました。
プレゼンは「この先、書ける作品がわかるのが面白い」
大会終了後、又吉と最優秀賞に輝いた安部に話を聞きました。
まず安部は、初のホラー作品で錚々たる顔ぶれの審査員から評価された感想や今後の展望をこう語りました。
「たくさんのエントリーがあったなかで最優秀賞をいただけるなんて思っていなかったので、びっくりしているのがいちばんです。“芸人原作オーディション”なのに、芸人じゃない自分を初代王者に選んでいただいたので、本当にウソなしで審査していただいたんだなと(笑)、すごく嬉しかったです。今回は短編でしたが、アイデアのストックはいろいろあります。幼稚園のときに『エクソシスト』『リング』『呪怨』を見るという(ホラーの)英才教育を受けてきたので、映像化にも興味があります」

又吉は、改めて第1回『ゼロイチ』の審査を終えた感想をこう語りました。
「作品はもちろん、プレゼンすることで、その先にどんな作品を書けるのかなど踏み込めるのは、実はすごく現実的。1作書いて終わりという人もいるなかで、継続性も確認できる場というのは面白いと思いました」
また、長く文筆活動を続けるアドバイスを求められると「本を読むこと」と回答。「小説に限定していえば、いっさい小説を読まずに書くのは不可能だと思います。今日集まってくれた皆さんはポテンシャルがとんでもないと思うので、それと読書量が結びつけば、どんどんすごくなっていくんじゃないかな。みんなが前のめりで、エンタメを盛り上げていこうという気概も感じました」と期待を寄せました。

『芸人原作オーディション ゼロイチ』の模様は、8月23日(日)にBSよしもとで放送され、BSよしもとYouTubeチャンネルでもご覧いただけます。応募作品はすべてnoteで読めるので、番組を見て気になったものがあればぜひチェックしてください。
<note投稿作品は下記から読むことができます>
https://note.com/hashtag/%E3%82%88%E3%81%97%E3%82%82%E3%81%A8%E5%8E%9F%E4%BD%9C%E9%96%8B%E7%99%BA
※作品タイトルとnote記事のタイトルが異なる場合があります。

番組概要
『芸人原作オーディション ゼロイチ』

放送日時:8月23日(日)18:00〜20:00
出演者:
ゲストコメンテーター:ピース・又吉直樹、野沢直子、尾崎世界観
MC:タケト、しずる・純
ファイナリスト:ドンデコルテ・小橋共作、ヒューマン中村、翠星チークダンス・木佐、そいつどいつ・松本竹馬、軍艦・仁、元NMB48・安部若菜、滝音・さすけ、あわよくば・ファビアン、アキナ・山名文和、瀬尾健太朗、平成ノブシコブシ・徳井健太、つじくん、野村尚平、ピストジャム、パタパタママ・木下貴信、ホテル・橋本大祐、シゲカズです、ニッポンの社長・辻クラシック
放送局:BSよしもと(BS265ch)
視聴方法:TV BS265ch(無料放送)
番組ホームページ:https://bsy.co.jp/programs/by0000024355
BSよしもとYouTube:https://youtu.be/HFX-y_igTbs
