よしもと沖縄の芸人が手話を交えたコメディ劇を繰り広げる『劇団アラマンダ』の2年ぶりとなる新作公演『パーラーアラマンダ~夢追い少女と伝説の俳優~』(脚本・又吉ごはん)が9月21日(月・祝)に、沖縄県那覇市のてんぶす那覇テンブスホールで開催されました。

午後と夜の2公演。沖縄にあるパーラー(半野外の軽食屋)を舞台に展開されるドタバタ劇に、観客は両手を頭上に上げて手のひらをパタパタさせる“手話の拍手”を笑顔で伝え、ろう者も聴者も、同じ喜劇を見てみんなで楽しめる温かな空間を一緒に作り上げていました。
手話と日本語が交差する劇団

『劇団アラマンダ』は沖縄を拠点とするピン芸人・大屋あゆみが座長として2018年に立ち上げました。手話と日本語で同時にセリフを展開していく劇団です。大屋自身はろう者である両親のもとで育った、いわゆる“CODA=コーダ”であることから、手話が第一言語だったといいます。よしもと沖縄の芸人たちが志をあわせて旗揚げした『劇団アラマンダ』は、沖縄を中心に全国各地で自主公演や福祉関係のイベント出演などを精力的に行なっています。
文字ボケや手話ネームも登場

最初に登場したのは、この日は前説に専念するというハイビスカスパーティー・ちあき。「手話は久しぶりです」と言いつつも、よどみなく出てくる手話がちあきのこれまでの努力を物語ります。背中や服の中に隠していた“文字ボケ”で、観客の笑いを誘いつつもしっかりと場の空気を温めていました。誰もが目で見て楽しめる前説で、本編への期待も高まっていきます。
劇の幕が上がる前に、VTRで出演者それぞれが自らの“手話ネーム”を発表していきます。“手話ネーム”ってみなさん、ご存じですか? 実はその人に付けられるあだ名のような手話があるんです。これをまず知ってもらうことで、本編の劇でもスムーズにストーリーに入り込みやすくなります。例えば、島袋忍の“手話ネーム”は忍者のようなポーズ。これが劇中では“忍”を意味します。
7分間の無茶ぶりアドリブも

いよいよ舞台の幕が上がりました。パーラーアラマンダで元気よく働くアルバイトのあゆみ(大屋あゆみ)は、上京して女優になることを夢見て資金を貯めている途中。店長のしょう(ピーチキャッスル・マエショー)といつもどおり仕事をしていると、警察官のゆか(ハイビスカスパーティー・ゆか)から“30年以上前に活躍した伝説の俳優”がいたことを小耳に挟みます。そんな中、俳優を目指して東京にいるはずだったあゆみの兄・リョウジ(リョウジ)が突如現れると、彼を追ってきた東京の怪しげな芸能事務所社長の寺崎(寺崎ガザオ)とマネージャーの又吉(又吉ごはん)、さらにはあゆみとリョウジの父親である忍(島袋忍)も巻き込んだ騒動へと発展していきます。

劇中では、場面が展開するごとに状況を文字テロップでスクリーンにも映し出すので、手話でのセリフだけではなくストーリーの背景もしっかりと目で理解することができました。

途中では、寺崎が団員の無茶ぶりアドリブに翻弄される場面も。ほかのメンバーより少し手話が苦手な寺崎が、さまざまな物の名前を、文字ひとつひとつに対応した“指文字”で表現するようにどんどん要求されます。“七味唐辛子”“ゴーヤーチャンプルー”といったお題に対し、焦った寺崎が客席の皆さんから時折答えをカンニングしながらも約7分間のロングアドリブを乗り切る姿は、あらためて手話習得への努力の跡を感じさせる象徴的な場面ともなりました。
劇団員へ「泣きそうなぐらい」

本編終了後のあいさつで大屋はあらためて観客のみなさんにお礼を述べた後、2018年の立ち上げ時期を思い出しながら「私以外のメンバーはみんな本当にゼロから手話を始めました。その時は簡単な手話を使いながら、舞台上に手話通訳士の方がいて細かい通訳をしてもらっていましたが、コロナ禍が明けて2021年からは全部自分たちでしようって決めて。メンバーみんなとってもとっても頑張ってくれて。今思い出しても泣きそうなぐらい」と、あらためて劇団員にも感謝し、全国各地へと活動を広げていきたいという熱意を見せました。

毎回恒例となっている、沖縄県手話言語条例の手話啓発ソング『手で話そう』を会場みんなで手話付きで歌います。“手話で歌う”と、リズミカルなジェスチャーがまるでダンスのようになって会場に楽しい一体感を巻き起こしていました。

終演後は出演者みんなが出口で観客のみなさんをお見送り。写真撮影やおしゃべりを楽しんでいました。
手話が分からない人も大満足

大屋と同じくろう者の両親のもとで生まれ育ったCODAである30代の女性は、『劇団アラマンダ』の公演を観るのが今回初めて。両親と祖母に声をかけて4人で笑いに来ました。自身も演劇経験がある中で「手話と舞台をどう掛け合わせていくのかとても興味がありました。本当に楽しかったです。『この場面でこんな表現をするんだな』『初めての人でも分かりやすい手話だな』と感じながら見ていました」と振り返りました。 60代の母親は「全体的に見ていて面白かったです。特にお父さん役が面白かった」と笑い、ろう者の立場から「手話が分からない人でも学びになるような表現もあって興味深かったです」と話しました。80代の祖母は「初めてでしたけど最初から最後まで楽しめました。内容も深みがあって良かったです」と満足そうな表情で会場を後にしていきました。
