マンボウやしろの初小説にピース又吉「ドキドキしながら読んだ」 タイトルはダジャレの『あの頃な』

マンボウやしろの初めての小説『あの頃な』(角川春樹事務所)の発売を記念して、2月4日(金)にオンラインイベントが開催されました。お笑いコンビ・カリカの解散後、脚本家、演出家として舞台やテレビドラマを手がけてきたやしろが上梓したのは、コロナ禍のなかで生きる人々の日常を描いた短編小説25篇。この日はゲストとして芥川賞作家のピース・又吉直樹も登場し、旧知の仲である2人だからこそのトークが繰り広げられました。

出典: FANY マガジン
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コロナのことしか…

東京・渋谷のSHIBUYA TSUTAYAから生配信されたこの日のイベントは、冒頭から濃い小説談義となりました。執筆のオファーを受けた当初、やしろはまったく違う題材を予定していたと話します。

「コロナ禍になってコロナのことしか考えられなくなったから、“そういう短編を書いていいですか?”って聞いたら“いい”と言われたんです。だから、タイトルは『あの頃な』……あのコロナ……ダジャレです」

すかさず「気づいてましたよ」と又吉が返します。

「いろんな手法で書かれていて、全編通して連作になっていたりする。なかには戯曲スタイルのものもあって、読み応えがあった。やしろさんっぽいスタイルを、小説でやったらこうなるんやと思いました」

さらに、25の短編の中から“やしろらしさ”を感じたものをいくつかピックアップした又吉は、これらについて「カリカだったり、演劇でやっていたコントと近い。これまでの活躍がにじみ出ている」と分析しました。

出典: FANY マガジン
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「文章を書くのが得意ではないと痛感」

イベントではやしろが突然、又吉に対して「僕、怒ってるんだよ?」と切り出す場面も。

「小説を書くのが怖かった。語彙力がない。単語を知らないし、描写というものがあんまり得意じゃない。又吉さんが芥川賞を獲ったじゃない? 小説を書くと、芸人みんなが(又吉と)比較される」

これに対して又吉も「(小説を書く芸人は)もうちょっと異議を申し立てたほうがいい」と語ります。

「学生さん、フリーター、医者(の場合)は“新人作家さんの誕生、おめでとう”と言われるのに、芸人は“入り口で又吉と戦っとけ”と言われているようなもの。僕も(芸人が小説を書くたびに)毎回、呼び出されている。もっと自由でいい」

出典: FANY マガジン
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一方で、やしろが今回、執筆を決意したのは「この先、声をかけていただくことなんてないかもしれないと思ったから」と言いますが、執筆作業は一筋縄ではいかなかった様子。

「コントや舞台、ドラマの脚本を書く脚本家だから会話劇は書けるけど、(実際、小説を書いてみて)文章を書くのが得意ではないと痛感した」

そんなときに、やしろの背中を押したのは、交流のある俳優・山崎樹範の言葉だったといいます。「書けないかも」と相談したやしろに、「会話で成り立ってる小説も多いよ。難しく考えないでいいよ」と答えた山崎。これを聞いて気持ちが軽くなったというやしろは、「好きに書いていいと思って書いたら楽しかった」と執筆を振り返りました。

やしろが又吉へ露骨すぎるお願い

重版を願うやしろは又吉に「(この本を)絶賛してほしい!」と懇願します。

「又吉に(このイベントの)オファーをするのは気が引けた。(又吉のほうが)後輩だし、芥川賞も獲ってる。立場的に、オレの書いたものを褒めるしかないから申し訳なかった。(でも)あの又吉直樹がここまで褒めるかっていうくらいの、ネットニュースまでいきたい!」

出典: FANY マガジン
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露骨なお願いに思わず笑い出しながらも、又吉は『あの頃な』をこうアピールしました。

「期待していただきたい。これまでのやしろさんの活動を見てきた人もそうじゃない人も楽しめます。やしろさんが何かを発表する時はいつも期待しているので、今回も楽しみに読んだんですけど、さすが期待に応えてくださいました。ドキドキしながら読みましたもん」

満足そうな表情を浮かべながら「“ドキドキしながら読みました”……(ニュースのタイトルに)切り取らせていただきます」と告げるやしろに、又吉は「切り取らないでください!」と冷静に返していました。

このほか小説の書き方、コロナ禍を題材とした理由や心意気など、45分にも及んだ2人の対談は、SHIBUYA TSUTAYA の公式YouTubeチャンネル「シブツタchannel」で見逃し視聴ができます。

シブツタchannelはこちらから。

書籍概要

『あの頃な』
著者:マンボウやしろ
発売日:2月15日(火)
出版社‎:角川春樹事務所
定価:1,650円

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