芸人本読書感想文~相席スタート・山﨑ケイ~

芸人本読書感想文

本を愛する芸人たちが、芸人の本を読んで感想文を書く新企画『芸人読書感想文』

本を愛する芸人たちが、芸人の本を読んで感想文を書く新企画『芸人読書感想文』

本を愛する芸人たちが、芸人の本を読んで感想文を書く新企画『芸人読書感想文』。
記念すべき第1回目の「課題図書」は、マンボウやしろの初小説『あの頃な』(角川春樹事務所)。コロナ禍のなかで生きる人々の日常を描いた短編小説25篇です。
『ちょうどいいブスのススメ』『ちょうどいい結婚のカタチ』など、自身も数多くの本を出版している相席スタート・山﨑ケイが感想文を書きます。

出典: FANY マガジン
出典: FANY マガジン/書影:©角川春樹事務所/イラスト:ライス田所

私は、テレビドラマが好きでよく見ます。

中でも1話完結のドラマはとても見やすいです。ただそれゆえに少し軽く感じてしまうことも。
でもその裏に全話を通したストーリーがあると重厚感がプラスされ、見終えた後の満足度が増します。

この本もそんな一冊だと感じました。

この本における全話を通したストーリーというのは、言葉通りそれぞれ独立した短編ながらそれだけではない仕掛けと、全てにおいて『コロナ』が関わっていること。

劇場でネタをしている時、初期の頃は『コロナ』という言葉を使うだけでお客さんも少し「うっ……」と身構えてしまう感じがあったのですが、最近では芸人たちも1人ひとつくらいは、コロナエピソードトークも仕上がってきているくらい、with コロナの時代になってきています。

想像もしなかった現在にいる私たちですが、それでも日々生活している。

この本に出てくる人たちも、コロナがなければ違う人生だった人もいれば、結局同じだった人もいる。この本は、伝えたいことが明確にあるとか、読む側も「読むことで救われたい」的な受け取りたいことが明確にある、とかそういう本ではないと思います。
ノンフィクションというわけじゃないのに、どこかにある場面とそこにいる人を切り取ったような、それは私自身や私の周りにも似たような人がいたような。

じゃあこの本を読んだ後の感情って何か、というと
私は安心感だったように思います。みんなただ幸せになりたいだけよね、というか。
私たちはコロナ前も今も、生活しているだけなんです。ただそこにコロナが入ってきたことによって、色々なことが浮き彫りになった。

「コロナのおかげでって言ったら変なんだけど……」と前置きした上で、自分に起きたプラスの変化について話した経験がある人も多いと思います。おかげ、とは憎きコロナのことを言いたくないけど、でも実際あったりする。そう思いたいだけかもしれないけど。とにかく、もう良いとか悪いとかじゃないんだよね。
そんな本。これが私の感想です。

もっとざっくり言うと、すごい読みやすいです!
普段から本を読む人はもちろん、あまり本は読まないけど、電車でゲームアプリしてる時間を何かに変えたいんだよな……と思ってる人にも是非おすすめです。
ちょっとだけ出てくる性的な表現の時だけ、やしろさんの顔が浮かんできてしまうこと以外はとてもスムーズに読めるのでおすすめです!

(相席スタート・山﨑ケイ)

書籍概要

『あの頃な』

出典: FANY マガジン
©角川春樹事務所

マンボウやしろ著
発売日:2月15日(火)全国発売
四六版並製(ソフトカバー)
定価:1,650 円(10%税込)

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