「熱いエンターテインメント!」「生の舞台ってやっぱりすごい」…『関西演劇祭』の7劇団が東京で初公演

演劇を通じて関西を元気にしようと、“つなぐ”をテーマに2019年に大阪でスタートした関西演劇祭。上演後に劇団員、観客、審査員が意見交換する「ティーチイン」をはじめ、参加するすべての人をさまざまな形で”つなぐ“仕掛けが用意された演劇祭として、多くの演劇ファンから注目されています。その受賞劇団が集まった初の東京公演『関西演劇祭 in Tokyo』が、3月8日(火)~13日(日)に東京・新宿シアタートップスで開催されました!

出典: FANY マガジン
出典: FANY マガジン

今回の公演には、関西演劇祭で最優秀作品に贈られる「MVO」(Most Valuable Opus)に輝いたMay(2020年受賞)、メガネニカナウ(2021年受賞)のほか、いままでに各賞を受賞した選りすぐりの5劇団(オパンポン創造社、くによし組、劇想からまわりえっちゃん、コケコッコー、ばぶれるりぐる)が参加。関西演劇祭フェスティバル・ディレクターの板尾創路、演劇関係者によるティーチインも行われ、熱い議論が交わされました。

ここでは、13日の千秋楽の模様、そしてその後、YouTubeで生配信された板尾創路と、審査員を務めた演出家の西田シャトナー氏による「関西演劇祭 in TOKYO 総括配信」のレポートをお届けします。

とにかくパワフル!「劇想からまわりえっちゃん」

千秋楽を飾るのは、劇想からまわりえっちゃん、メガネニカナウの2劇団。まずは劇想からまわりえっちゃんの『あぁサンタさんっフォォォ!! All』が上演されます。

出典: FANY マガジン
出典: FANY マガジン

保育園で働くえりこが、無能な信彦先生にいらだちながらも、一緒にクリスマス会の準備をする場面から物語はスタート。登場する子どもたちはみな、デニムの短パンにカラフルなシャツという出で立ちです。そんな登場人物たちが、いきなりサンタをモチーフにしたサンバを踊り出したり、さらにその中には、なぜかクリスマスまで生き抜いたセミがいたりと、一見脈絡のないストーリーが繰り広げられます。そして、えりこが子どものころの、父との甘くて苦いクリスマスのエピソードや、セミ夫婦のラブソングなどを挟みつつ、物語は時にミュージカル風に、パワフルでエネルギッシュに展開します。

終演後のティーチインで、作・演出を務めた青沼リョウスケ氏は「信じられない、でも信じたいものの象徴として“サンタクロース”を着想して、『信じきれる力』について伝えたかった」と思いを語りました。

出典: FANY マガジン
出典: FANY マガジン

スペクタクル感あふれる「メガネニカナウ」

続いて上演されたのは、メガネニカナウの『ほぼ永遠の稽古場』。宇宙船に乗ってテラ・セカンドに向かう途中、船内で『ロミオとジュリエット』を稽古していた劇団のメンバーたちは、突如、宇宙船のトラブルに見舞われます。航行には支障ないものの、本来は23年かかる道のりをコールドスリープするはずが、トラブルの影響で1人だけコールドスリープできない状態に……。

さてどうする!? という現実の問題と、『ロミオとジュリエット』の演目についての主演女優の不満をどうする!? という2重の問題に立ち向かうメンバーたちが繰り広げる壮大なスケールの物語でありながら、ジュリエット役のまくりを始めとするメンバーたちの会話やツッコミ、間が面白く、笑いながら気づけば没入しているような、スペクタクル感あふれる舞台となりました。

出典: FANY マガジン
出典: FANY マガジン

終演後のティーチインでは、「とっても面白かった。脚本の完成度が高かった」「欠点のない、パーフェクトな作品」と大絶賛を浴びていました。

急遽決まったMBIは……

その後、YouTubeで生配信された「関西演劇祭 in Tokyoを終えて」では、板尾と西田氏が、参加した7劇団を順に振り返りました。

【オパンポン創造社『最後の晩餐』】
「コロナ前に作られた作品なのに、コロナ禍のいま見ると、いっそうグッとくるものがあった」(板尾)
「始まりは下品なのに、終わりは崇高な作品。最小ユニットで最大を描いた会話劇」(西田)

【コケコッコー『つまずく夜は』】
「悲しくもあるけど、いい気持ちにもさせてくれる作品」(板尾)
「1人に向けてやっている、そのクローズアップ感がすごい」(西田)

【くによし組『眠る女とその周辺について』】
「ちょっと変な輝き方をしてる。(作・演出を務める)國吉さんの人柄なのか……」(板尾)
「楽しさと恐ろしさと比喩とリアルの、ピンボールマシンのような芝居」(西田)

出典: FANY マガジン
出典: FANY マガジン

【May『タンデム・ボーダー・バード』】
「前のめりになれる熱さがいい。ここまで殴り書きみたいな作品のほうが、僕はグッときますね」(板尾)
「叩きつけるようなお芝居。たぶん古代のお芝居ってそんなんやったと思うんですよ」(西田)

【ばぶれるりぐる『二十一時、宝来館』】
「NHKのシブいドラマみたいなテイストで、『いいもん見してもらいました』っていうお芝居でした」(板尾)
「話自体は苦いんですよね。でも、そこに演劇の魔法がかかって、すごくおいしい食べ物にしてくれた、みたいな」(西田)

【劇想からまわりえっちゃん『あぁサンタさんっフォォォ!! All』】
「熱いエンターテインメント。曲も踊りも全力でやるぞ!っていう。特色がすごい。本人たちも言ってたけど、まさに“空回り”」(板尾)
「ふつう芝居って押すところと引くところがあると思うんですけど、この劇団は押すところと、もっと押すところと……って、ずっと押してる。こんなしんどいこと、よっぽど献身的な気持ちで作品に尽くさないとできない」(西田)

【メガネニカナウ『ほぼ永遠の稽古場』】
「長椅子と透明の板だけで宇宙船と大宇宙の物語を作り上げるところにプロフェッショナルを感じて、生の舞台ってやっぱりすごいな、誇らしいなと思いました」(板尾)
「工夫に満ちたお芝居。物語も工夫についての物語だし、実際に彼らが体現して、宇宙船の芝居を工夫一発であそこまで実践しているところがすがすがしく、感動した」(西田)

出典: FANY マガジン
出典: FANY マガジン

配信内で急遽、板尾と西田氏の2人から「つなぐ演劇祭」として初の東京公演を無事に終えた記念にMBI(Most Big Impact=もっともインパクトを与えた劇団)を「せーの!」で選ぶことになり、2人が揃って挙げた劇団「May」に決定しました。


今年も11月に開催される予定の「関西演劇祭2022」。参加劇団の募集もスタートしており、全国どこの劇団でも応募可能。詳細は公式HPでご確認ください。

「関西演劇祭」公式サイトはこちらから。