昨年末の漫才頂上決定戦『M-1グランプリ2020』で王者となったお笑いコンビ・マヂカルラブリー(野田クリスタル、村上)が1月17日(日)、NSC(吉本総合芸能学院)現役生に向けた特別講義をオンラインで行いました。M-1優勝以降、とにかく多忙な2人は、この日も舞台の合間を縫って登壇。東京、大阪、名古屋、沖縄の各校から参加した約290人のNSC生を前に、芸人としての生き方やネタ作りの秘訣など熱血指導しました。
“空飛ぶ芸人”で月収30万円!?
NSC生からの質問に答える形で進んだ、この日の特別講義。のっけから、村上が「あんまり尖っている人は当てないでほしい」と言えば、野田も「『野田さん大喜利しましょうよ』っていう奴はやめてね」と戦々恐々の様子です。
そんな2人にお構いなく、たくさんの挙手で講義はスタート! まずは、デビュー2年以内に月30万円稼ぐのが目標だというNSC生から、「いま、おふたりが1年目だったとして、月収30万を目指すならどう活動しますか?」とリアルな質問が投げかけられました。
それに対して、村上が「僕らが月収30万を超えたのは、最初のM-1決勝に出た後、2018年か2019年くらいにやっと」と答えると、野田も「30万って、R-1グランプリ優勝とか、一か八かでようやく手に入るくらい」と言います。
さらに、村上のアドバイスは突飛な方向に。
「ネタ番組で、すごい変なネタでハネることかな。たとえば、空を飛ぶ芸人って僕はまだ見たことないから、ジェットエンジンでも背負って空を飛んでみたらいいかも」
これに野田が「M-1決勝の登場時に(舞台装置が)せり上がるより先に、(ホバリングで)上に着いてたら面白いかも」と付け加えました。
続く「ネタづくりの際に心がけていることは?」という質問には、2人とも「コンプライアンスだよね」と即答。村上が「商品名、芸能人の名前を出さない」と言うと、野田も「配信が難しいものは避けたほうがいい」としたうえで、「あとはセンスだから」と話しました。
ツッコミは本当のことを本当の気持ちで
その後もさまざまな質問が続くなか、こんな問いも。
「ベストパフォーマンスを発揮するために、本番前にとる食事を教えてください」
野田は「それ、M-1決勝で絶対にスベらないネタを見つけた奴が、その後で考えることだよ(笑)」とツッコみながら、質問したNSC生に「芸名として名前の前に『ベストパフォーマンス』って付けなよ」と提案。さらに“ネタの内容よりも常にベストパフォーマンスを追求して、ネタ終わりに健康診断の結果を見せる芸風”にするべきだと勝手にキャラクター設定をして、会場の笑いを誘います。
そんな話の後に、野田は「ちょっと熱っぽいくらいのほうが調子いいこともある」とまじめな回答も忘れずに加え、村上も「ナイツの塙(宣之)さんは『ネタの前は、お茶ではなくてジュースを飲むほうがノドが潤う』と言ってました」とアドバイスしました。
また、「コンビを組んでいるが、強いキャラのボケにどうツッコむべきか悩んでいる」というNSC生には、「僕は本当のことを本当の気持ちで言うのが大事だと思ってます」と真摯に答える村上。野田は、質問者の相方を取り上げ、「こいつ(相方)に本心で思うことあるよね? 俺だってこいつに言いたいことあるよ。背筋ピンとしろ! 普通にしゃべれ!」とツッコミを重ねます。
「いろんな人に会って、いろんな人にツッコんでみたら、相方の見え方が変わってくる。その時に言いたいことが、君のセンスになっていくから」と村上が説明すると、野田も「自分が経験を積んで、相方をどれだけ俯瞰で見られるかだよ」と諭しました。
好きなことをやりたいようにやれ!
その後、「曲げずに独自のスタイルを続けてきた理由は?」との問いに、村上は率直にこう答えます。
「独特なネタをやろうと思ってこうなったわけじゃない。しゃべくり漫才ができないから、こういうスタイルになっただけ」
野田も「そっちのほうが楽だからやっていて、優勝したらみんなが『貫き通した』といいほうに捉えてくれた」と語り、「誰になにを言われようと、好きなことをやりたいようにやるべき」と2人ならではのメッセージを受講生に伝えました。
終盤には、同期との付き合いについて聞かれた流れから、野田がこう言い放つ場面も。
「全NSC生に告ぐ。いろんな人と出会えば、殺したい奴が出てくる。そいつのことを思って笑いを追求することこそが切磋琢磨です」
終始、真剣な問答がかわされた講義でしたが、最後の質問者はなんと、Tバックを頭にかぶって登場。それに対抗して野田が小道具のバズーカを頭にのせ、「笑いのバズーカ放つだけじゃい!」と声を上げ、笑いの中で講義は締めくくられました。
ノンスタ石田に教えてもらったら…
講義後の囲み取材で、感想を求められた村上は「みんな真面目そう。でも、より変な人がお笑いをやる時代になってきてるのかも」と語り、野田は「ネタ前の食事を気にするなんて、時代の変化だよね。面白い時代になっていくんじゃなかというワクワク感がありました」と話しました。
2人が考える理想の講義については、村上がこう答えます。
「NON STYLE・石田(明)さんにネタの作りの基本を教えてもらったら、めちゃくちゃ得だと思います。なぜこれが、このくらいウケるのかということを言語化できる人だし、それを参考にしながら、どう崩すかまで考えられるから」
一方の野田は、「永野さんの授業を受けて、みんなに一度スイッチを入れてもらいたい。芸歴0年目のうちに腹を抱えて笑えるような人に出会うと、その後が変わってくると思う」と真剣に語りました。
お笑いスターを目指すNSC生にとって、貴重な機会となった今回の特別講義。新たな才能を育てるべく、NSCは現在、2021年度入学生を募集中です。加えて今年4月には「パフォーミング」「クリエイティブ」「デジタルエンタテインメント」という3ジャンルの養成スクールが開設。高校卒業資格が取得できる「吉本興業高等学院」も同時に開校します。
これら「よしもとアカデミー」の詳細は公式サイトから。