ピン芸、コント、漫才などジャンルを問わず、“ネクストブレイク”が期待される芸人を発掘するお笑いコンテスト『ツギクル芸人グランプリ2022』が、5月21日(土)にフジテレビ系で生放送されます。今回の出場者のなかで注目を集めているのが、結成わずか1年で決勝の切符を手にした漫才コンビ・10億円(山内仁平、永見諒太)。昨年のM-1予選動画が業界関係者の間で話題となったコンビです。今回は、まだ知られていないことだらけの2人を直撃しました。
爆笑問題(太田光、田中裕二)がMCを務めるこの大会は、民放各局で人気番組制作を手掛ける現役スタッフを審査員として招聘。「地上波のプライムタイムの番組レギュラーを持っていない」という条件を満たした芸人を各事務所が推薦し、予選を勝ち上がった15組が明日のスターを夢見て戦います。
【10億円プロフィール】
山内仁平(やまうち・じんぺい)=写真左
生年月日:1996年06月03日
出身地:東京都世田谷区
永見諒太(ながみ・りょうた)=写真右
生年月日:1995年03月05日
出身地:岡山県
大学で友だちができなくてNSCに…
――まずは、コンビを組んだきっかけを教えてください。
山内 (プロフィール上では)相方の永見がNSC(吉本総合芸能学院)大阪40期生の5年目で、僕は、NSC東京25期生の3年目となっているのですが、もともと僕もNSC大阪40期で、その後、NSC東京に入り直したので、永見とは元同期。大阪時代、いちばん仲が良かったし、東京に来てからも連絡をとっていたし、ずっと、うっすらと組みたい気持ちもあって、東京に呼んで組みました。
永見 大阪でコンビを解散して、“誰と組もう”と考えたときに、コイツとやりたいと思ったんで、組めるなら東京に行こうと。(山内の前のコンビの)解散のタイミングが一緒で、マジで流れで組んだ感じです。
――山内さんは、日本一おもしろい高校生漫才師を決める大会『ハイスクールマンザイ』の出身ですが、芸人になろうと思ったきっかけは?
山内 『ハイスクールマンザイ』に出たのは、当時、(友人のなかで)ちょっと面白いヤツという感じだったのもあって、友だちから「出てみたら?」とフザケて言われたのがきっかけです。高校3年生のとき、運よく決勝に行けました。そのころは、本気で芸人をやろうとは思っていなかったんですけど、決勝に出るとNSCの授業料がタダになるという特典があって……。自分のなかでタダになったのはデカかったです。
でも、当初はNSC大阪に入るつもりはなく、NSC東京に入るつもりでいたんですよ。高校卒業後、大学で大阪に行ったんですけど、「大学は楽しいところで、女の子とも遊べる」って聞いていたのに、いざ行ったらいっさい友だちできないし、女の子も遠くのほうにいて……。
永見 お前が近づけよ(笑)。
山内 通っていた近畿大学は学生数も多かったのに、4年間で4人しか友だちができなくて。その友だちも全員、黒髪、ピアスの穴も開けずに卒業していったヤツらでした。そんなこともあって、やることなかったし、タダだったんで、大学3年生のときに友だちづくりのためにNSCに入りました。1日で100人くらい友だちができたときは、めちゃくちゃ嬉しかったですね。“髪染めてなくても友だちってできるんだ”って思いました。大学は髪染めて、ピアスしてないと人が寄ってこないんで。
――永見さんが芸人になろうと思ったきっかけは?
永見 僕もお笑いは好きやったんですけど、M-1予選の金属バット(小林圭輔、友保隼平)さんを見て、“お笑いカッコいいな”と思い、本格的に目指すようになりました。4年制の専門学校に行っていたんですけど、2年で辞めて2年間ほどアルバイトしてカネを貯めてNSCに入りました。
――NSCで出会ったお互いの印象は?
山内 入学してすぐに相方探しの会があって、そのとき初めて会いました。これ本当なんですけど、(永見を)見たときに“こいつはなにか、ひとかどの人物になるオーラを持っているな”とビビッときて、いちばん印象に残っていました。ただ、お互いボケ志望でしたし、クラスも違ったし、コンビという選択肢ではなかったですね。
永見 もともと「面白い」という噂は聞いていました。特別講師として、ダイアン(津田篤宏、ユースケ)さんや、アキナ(秋山賢太、山名文和)さんが授業にいらっしゃって、僕らの質問に答えてくれる授業があったとき、コイツが手を上げて、めっちゃボケるんですよ。僕、後ろからその様子を見ていたんですけど、立って後ろで手を組んでいたコイツの指が1本も震えてなくて堂々たるもん。その印象がめちゃくちゃ強いです。
――大先輩を前にして緊張しなかったんですか?
山内 そもそもNSC大阪はめちゃめちゃ軽い気持ちで入りましたし、軸足は“辞める”に置いていたというか……。大学生だし、友だち作りに行っているし、芸人をやるにしても、大学卒業して東京に戻ってやる(NSC東京)のが本番だし、っていう軽い気持ちだからこそ(言えた)というのはあるかもしれません。
M-1予選動画がバズッた!
――コンビ名の由来は?
山内 大阪40期で、養成所在学中に解散した「3億円」というコンビがいたんですけど、この名前がコンビ名としてめちゃくちゃいいなと思っていて……。永見は、元3億円で、いまは「ラドリオ」というコンビを組んでいるザットゥーと仲がいいので、(譲ってもらえないか)相談するようお願いしました。
永見 山内がコンビ名を「3億円」にするか「ビッグキムチ」にするかで迷っていて、「ビッグキムチ」になるわけにはいかんと思ったんで、ザットゥーに必死で「くれ!」とお願いしました。
山内 ただ「3億円」は事件の名前にも関連するし、3以外の数字だと「10億円」かなって。
――2021年5月にコンビを結成。その後に出場したM-1の予選動画が好評でした。そして今回の決勝。コンビとして順風満帆なのでは?
永見 いやいやいや! 素晴らしき世界なだけです。
山内 まわりの人が優しいだけ。前のコンビのときは、超鳴かず飛ばずで。
永見 あのときは優しくなかったなぁ……。
――『オードリーのオールナイトニッポン』(ニッポン放送)などで知られる構成作家の飯塚大悟さんが「未来がある感じがする」とツイートしていました。
山内 あれは意味がわからなかったですね。3回戦で落ちたのに、“見る目ないと思われますよ”って思いました。でも実は率直に嬉しかったです。
永見 親にあのツイートを見せたくなりました。
――ネタはどのように作っているんですか?
山内 基本は僕が作るんですけど、ツッコミは言いやすいように変えてもらっています。
永見 彼のボケの意図が変わらんように、僕の面白いと思うフレーズも考えて……という感じです。
――スタイルや表現の仕方など、意識している点を教えてください。
山内 永見がM-1の金属(バット)さんを見て憧れたって言いましたけど、僕は逆に“面白すぎる人がいるから芸人は無理かも”って思ったくらい金属さんにめちゃくちゃ憧れていて……。わりと(漫才のスタイルも)金属さんに近い感じでもやっていたんですよ。でも、あれはおふたりだからできることじゃないですか。
そろそろプロとして結果を出していかないといけないし、永見にわざわざ東京に来てもらってコンビを組むしとか、いろいろ考えて……(ボケを)わかりやすくしたつもりではあります。
永見 それこそ僕も金属さん憧れがあって、(前のコンビでは)立ち話をしているだけのような雰囲気で漫才をやっていました。ただ、山内とコンビを組んだあと、意識はしていないんですけど、技術的なことは変わっていった気がします。むかしの僕を知っている大阪の同期から「変わったな」「頑張ったやん!」って言われることもあって、むっちゃ恥ずかしいです。
――お互い相方としてどんな魅力を感じていますか?
山内 ネタは僕が考えて作るんですけど、ボケが弱いところや、“あとにそれが効いてくるから入れとかなきゃいけないけど不安”みたいなところが、永見のツッコミ方、受け方で、めっちゃウケるようになった。それはありがたいですね。
永見 ボケ、ネタの考え方、好みが一緒、性格も面白いし、尊敬できるところもいっぱいあるし……どう? 恥ずかしい?
山内 もうちょっと具体的に聞いてみたいですね。
永見 なんで、そんなほしがるん?(笑)
ラジオ番組をやりたい!!
――この1年で、印象に残っている仕事・出来事は?
山内 昨年のクリスマスに金属さんが出られているYouTubeチャンネル『もういっちょTV』の生配信で共演させていただけたのが嬉しかったです。ふだん僕はタバコ吸わないんですけど、金属さんと喋りたいから、タバコ吸えるフリして喫煙所に行きました。
永見 金属さんとお会いする前、“タバコ初心者”ってバレないように、コイツに吸い方をレクチャーしました(笑)。僕は、金属さんとまだ接点がないとき、おふたりのネットラジオを聴いていたら、M-1予選の動画で面白かったコンビとして、僕らの名前を出してくださったのが嬉しかったです。マジでビックリしましたし、嬉しくて、いまも永久リピートしています。
――今後、やってみたい仕事は?
山内 もちろんテレビや劇場にも出たいですけど、僕らラジオが好きなので、ラジオをやりたいです。
――どんなラジオ番組を聴いていますか?
山内 初めて聴いたのが『アルコ&ピースのオールナイトニッポン0(ZERO) 』(ニッポン放送)。それから、いまも放送されている『アルコ&ピース D.C.GARAGE』(TBSラジオ)までずっと聴いていますし、あとは『ハライチのターン!』(TBSラジオ)、『霜降り明星のオールナイトニッポン』(ニッポン放送)とか、いろいろ聴いています。
永見 高校生のころは『トータルテンボスのぬきさしならナイト!』(TBCラジオ 現在はseason2がPodcastで配信中)を聴いていて、いまは金属さんの『金属バットのMusic Sound』(GERA)、『金属バットの声流電刹』(YouTube)を聴いています。
――コンビとしての今後の目標は?
山内 大阪の劇場に立ってみたいです。まだ(10億円として)行ったことがないんですよ。
永見 ずっと大阪でやっていましたけど、僕、よしもと漫才劇場(以下、マンゲキ)に立ったことがなくて。NSC生になると絶対に立てる舞台があったんですけど、インフルエンザで休みましたし。当時は劇場のオーディションも勝てなかったですし……。ある合同説明会で書類を出すときに提出するのがマンゲキの舞台上で、それがマンゲキ初登壇。プロとしては立ててないんですよ。大阪の芸人の友だち、お世話になった先輩にもネタを見てもらいたい、という気持ちもあります。
山内 あと、高校のときに好きだった女の子と両想いだったかどうかを確かめたいです。M-1優勝したとか、結果を残したときに検証したいです。
永見 これはマジで5年前から言うてますね(笑)。それで言うと、学生時代に千鳥(大悟、ノブ)さんのロケ番組を見ていて憧れがあったので、あんな自由なロケをしてみたいですね。
――そんな目標に向けた第一歩となる『ツギクル芸人グランプリ』決勝が迫っています。ファイナリストになった感想を教えてください。
山内 予選をやってみて、すごくウケた感じではなかったし、決勝に残ってないんだろうな……って思っていたんで、ラッキーです。予選後、先輩に「どうだった?」って聞かれるたび、ずっとボケのつもりで「いちばんウケました」と返していたんですけど、結果的に決勝に決まったので、いま“あれは嫌味で言っていた”みたいになっていて、すごく恥ずかしいです。
永見 “ラッキー”とか“いいんですか?”って感情に近いですね。まだ1年しかやっていなんで、「僕らみたいなもんが、こんなに華やかな舞台に立っていいんですか?」と思っています。
山内 僕らは、まだプロ意識が足りないままで……。先日、大会の煽りVTRを撮らせてもらったとき、迷惑をかけてしまったんですよ。時間もかけてしまったし、ふつうに中指立てちゃったりしたんで(笑)。制作スタッフの方に無駄な時間を過ごさせてしまったので、申し訳なかったです。
――最後に『ツギクル芸人グランプリ』への意気込みをお願いします。
山内 100パーセント優勝です!
永見 獲るぞ! ギャラクシー賞!