ピース又吉が“復帰50年”クラシック公演で新作エッセイ朗読! 「父のことを書くと沖縄と大阪がつながる」

父親が沖縄出身で、沖縄に自身のルーツを持つピース・又吉直樹が、6月5日(日)に大阪市北区のザ・シンフォニーホールで開催された「沖縄復帰 50 周年記念 琉球交響楽団大阪特別公演」にゲスト出演し、新作エッセイ『沖縄と家族』を朗読しました。沖縄について語ることは、沖縄で育った父を語ること――で始まる朗読は、沖縄民謡のエッセンスが散りばめられた音楽とともに、沖縄と大阪がつながるスペシャルな一夜を演出しました。

出典: FANY マガジン
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琉球交響楽団は、2001年に誕生した沖縄県初のプロオーケストラ。いままで沖縄県内を中心に活動してきましたが、沖縄本土復帰から50年を迎えた今年、楽団として初となる大阪公演が行われました。

ブラームス「大学祝典序曲」からチャイコフスキー「ピアノ協奏曲第1番 変ロ短調 Op.23」、そして休憩をはさんで、オリジナル曲「沖縄交響歳時記」と演奏が続くなか、又吉は「沖縄交響歳時記」の演奏前に、指揮者・大友直人とともに琉球交響楽団のメンバーが待つステージに登場。深々と一礼をして椅子に座り、スポットライトに照らされながら、書き下ろしエッセイ『沖縄と家族』を朗読しました。

「沖縄で育った父」を語る

出典: FANY マガジン
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「沖縄について語ることは、沖縄で育った父を語ること」という出だしから始まる、このエッセイ。父との思い出はもちろん、「又吉」という沖縄由来の苗字について、さらに父に連れられて沖縄本島に帰省したときのエピソードなども語られ、「調子に乗らずに笑いを起こしたい」という自身の芸風がなぜ生まれたか、その誕生秘話も披露。また、奄美大島出身の母と父のなれそめについて、「琉球が持つ言語文化が、父と母を大阪で結び付けた」と語りました。

朗読が終わり、又吉の“沖縄の記憶”に重なるように始まった「沖縄交響歳時記」は、「新年」「春」「夏」「秋」「冬」「カチャーシー」の6楽章からなり、「唐船ドーイ」や「かぎやで風」など随所に沖縄音楽のエッセンスが散りばめられ、庶民の間で歌い継がれた沖縄民謡の軽快さと、琉球古典民謡の持つ荘厳さが織り交ぜられた作品。沖縄の空と海、そして伝統が感じられる楽曲に、観客はじっくりと耳を傾けていました。

沖縄は「実家」に近い感覚

出典: FANY マガジン
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コンサート終了後、今回のコラボレーションについて又吉に話を聞きました。

――クラシック公演に出演することはなかなかないと思いますが、今回、コラボしてみてどうでしたか?

なかなかオーケストラの皆さんと一緒できる機会がないので、すごく刺激的で、楽しかったです。

――朗読したエッセイ『沖縄と家族』は、どのような思いで?

琉球交響楽団の皆さんが大阪で初めて公演をされるということで、沖縄について書けたらいいなという思いと、うちの父も、沖縄が返還されて少し経った時期に大阪に来たので、父のことを書くと、なんとなく大阪と沖縄で、今回の公演につながっていくかなと思いました。

――又吉さんにとって、沖縄はどのような存在なのでしょうか。

実家にかなり近い感覚ですかね。親せきや祖母も住んでいて、10年ほど前から父も戻って住んでいるので、実家とはまた違いますが、感覚的にはかなり近いですかね。大阪にはまだ母が住んでいるので、仕事で大阪に行ったら母とか姉にも会いますし、大阪にも親せきがいますし、大阪も沖縄も同じくらいです。

――朗読のあとに演奏された「沖縄交響歳時記」を聴いて、どんな印象でしたか?

子どものころから聞きなじみのある沖縄民謡のフレーズもあって、懐かしさもあるんですけど、こういうふうに交響楽団でやるとまた迫力があって、(沖縄民謡が)ぜんぜん違うものに聞こえて。懐かしさと斬新さの両方を感じましたね。面白かったです。

――最後のカーテンコールも堂々としたものでした。

クラシック公演のカーテンコールに出たのも初めてだったので、カーテンコールのルールを知らなくて緊張しましたね。指揮者の大友直人さんの動きを見ていました。

――黒で統一した衣装も、なじんでいましたね。

公演がどういうふうになるのかよくつかめていなかったので、中のシャツは、なんとなく沖縄っぽい柄のシャツにしました。ジャケットの前を開けるとかなりラフな感じになるので、どっちでもいけるようにと思って。リハーサルのときに「今日はぜったいラフな格好じゃないな」と思ったので、ステージには黒のジャケットを羽織って出ました。オーケストラの方も皆さん黒い服だったので、なじんでいてよかったです(笑)。

又吉直樹が週三回書き下ろしの文章を更新しているオフィシャルコミュニティ 【月と散文】 はこちらから

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