「沖縄の音楽は大阪のお笑いと似ている」…伝説のプロデューサーが語る戦後沖縄の「記録と記憶」展

沖縄本土復帰50周年を記念して開催された展覧会『記憶と記録』が、7月6日(水)から横浜・みなとみらいのサブウェイギャラリーMで開かれています。沖縄の月刊写真誌『オキナワグラフ』の歩みとともに、年表を通して沖縄の過去と未来をつなぐ展示になっていて、やんばる(沖縄本島北部地域)の大宜味村、那覇市に続いて3回目の開催となります。今回は、芸人ライターのビスケッティ・岩橋淳が、この展覧会を企画した伝説のプロデューサー・立川直樹氏にインタビュー! 「記憶と記録」の意味、沖縄の魅力などを語っていただきました。

出典: FANY マガジン
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展覧会は、1958年創刊の月刊写真誌『オキナワグラフ』編集部が所有する膨大で貴重な記事と、開局61年のラジオ沖縄やコレクターが持つ沖縄音楽の豊富なレコードやアーティスト関連の素材を使って、戦後沖縄の歴史を現代の視点からクロニクル化したものです。

沖縄は「原色のグルーヴ」が強いんです

――今回の展覧会「記憶と記録」を開催するきっかけはなんだったのですか?

この「記憶と記録」という展覧会は、沖縄の年表と雑誌『オキナワグラフ』のビジュアルがクロスしているものになります。きっかけは、吉本の大﨑(洋)会長から「オキナワグラフという面白いグラフ紙があって、沖縄本土復帰50周年というので何か面白いことできないかなぁ?」という、そのひと言ですね。それなら「展覧会をやるのがいいのではないか?」というのが発端です。

――展示されている年表を見ると、すごく細かく出来事が記載されていました。特に音楽に関する記載が多い印象です。

音楽だけではなく、沖縄の歴史では芸能、芝居などの文化が生活に強く結びついていて、それがほかの地域に比べてより濃くあるので、たくさんの記載があるのかと思います。

出典: FANY マガジン
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――たしかに沖縄では、地域に根付いている文化が、ほかの地域に比べて濃い気がします。その理由は何でしょうか?

ルーツの色味というのかな? 沖縄は「原色のグルーヴ」が強いんですよ。

――原色のグルーヴ?

これ(レコードジャケットコーナー)を見てもらうとよくわかるんだけど、デザインに赤とか緑とか青などの原色が多くて。曲名もわかりやすい。これとか「サトウキビ音頭」ですからね。小細工をしていない(笑)。

――たしかに、喜納昌吉さんの「ハイサイおじさん」なんかもそうですよね。

出典: FANY マガジン
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「歌いたいから歌う。踊りたいから踊る」

――年表を見て特に思ったのが、メジャーアーティストだけではなく、インディーズのアーティストの名前もたくさん記載されていることでした。

そうですね。どんどん新しいものが出てくるのは、沖縄の地域性にあると思います。

――というのは?

やりたいからやる。作りたいから作る。という感覚ですね。そこはキューバやジャマイカと一緒で、歌いたいから歌う。踊りたいから踊る。沖縄にはそういう地域性や文化がたくさんあるんですよ。

――そう言われると、いまも沖縄には“ルーツ”を感じるものがたくさんある気がします。

沖縄の音楽や文化は、大阪のお笑いと似ているものがあるんです。それは生活に根付いているもので、教えられたものではなく身近にあるものだということ。それが大阪ではお笑い、沖縄では音楽などですね。

出典: FANY マガジン
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年表をどんどん“補完”していく

――初回がやんばる(沖縄本島北部地域)、次が那覇、そして今回が横浜での開催となりますが、装飾の仕方や見せ方などは変えているのでしょうか?

実は初回のときは、まだ年表がすべて出来上がってなかったんです。

――そうなんですか!?

でも、いいんです。年表というのはずっと続いていく「記録」だから。終わらなくていいんです。それをどんどん“補完”していこうと。なので、この展示の説明に「ネバーエンディング・クロニクル」という言葉を付けたんです。

やんばるの開催時には人々の「記憶」をメインにして、オキナワグラフの記事をコラージュしたり、当時の家具をディスプレイしたりするところから始めていきました。次の那覇では、もう少し展覧会のように。そして今回はより、オキナワグラフにフューチャーした形にしました。

出典: FANY マガジン
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――前回までの展示と比べると、今回の会場は装飾なども最小限で、簡素化されている感じがしました。

この会場(サブウェイギャラリーM)はやんばるや那覇とロケーションが違うので、こういう形をとらせていただきました。沖縄での開催ではなく、関東圏の皆さまに楽しんでいただくには、これが正解なのではないかと考えています。

――今回の展示会を開催する前と開催後では、沖縄の印象は変わりましたか?

むかしから沖縄にはよく行っていたので魅力は感じていたのですが、今回の展示会を通じて、歴史を改めて感じることにより、どんどん沖縄のことが好きになっていきましたね。

――8月11日(木・祝)からは大阪でも開催されます。

大阪では、横浜での展示をベースにして、今年4月の「島ぜんぶでお~きな祭 第14回沖縄国際映画祭」でもやった、Technicsの最高峰機材を使って貴重なレコード盤などをかける「スーパーオーディオライブ」を行う予定です。ほかにも三線のライブなんかも実施されるそうですよ。沖縄の持つ文化と大阪の明るい人間性が融合して、面白いものになるのではないかと思っています。

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沖縄はすべてがチャンプルーなんです

――最後に今後、コロナ禍が落ち着けば、沖縄旅行に行けるようにもなるかと思いますが、その沖縄の文化を感じるのにオススメのスポットなどありますか?

そうですね……決めて行かないほうがいいと思いますね。いまは、調べたら有名な観光スポットや食事ができるところがたくさん出てきますけど、自分の感覚やアンテナを頼りに回ったほうが僕はいいと思います。なにに行かなきゃ、どこに行かなきゃではなく、どこか適当なお店に入ってビールでも飲んで、そこの店員さんと話たりしてるほうがよっぽど楽しいと思いますよ。島ぜんぶが面白いので。沖縄はすべてがいい感じでチャンプルー(ごちゃまぜ)ですから。

――お話を聞かせていただいて、過去と未来をつなぐ展覧会なんだなと思いました。

そう、最終的にはいろんな人が年表に書き込んでいける「年表の家」みたいなのが作れたら面白いなと思ってるんだよね。

――それはいいですね! 「記憶と記録」というタイトルもとても素晴らしいと思います。

自分で言うのも恥ずかしいけど、僕もいいタイトルだなって思ってる(笑)。

出典: FANY マガジン
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立川氏のインタビューは以上です。終始、にこやかに沖縄の魅力について話していただきました。横浜会場は7月16日(土)まで開催しています。ぜひ沖縄の“原色のグルーヴ”を感じながら、「記録と記憶」の旅に出てみてはいかがでしょうか!?

展覧会概要

展示企画『OKINAWA MEMORIES AND RECORDS –沖縄・記憶と記録ー』
プロデューサー:立川直樹、杉山恒太郎
展示ディレクション:小山健一郎
協力:オキナワグラフ

【横浜会場】
会場:サブウェイギャラリーM(横浜市西区みなとみらい3-5)
会期:7月6日(水)~7月16日(土)
開館時間:10:30~18:30
入場料:500円(高校生以下無料)

【大阪会場】
会場:大阪府立江之子島文化芸術創造センター(enoco)
会期:8月11日(木)~8月20日(土) ※8月15日(月)休館
開館時間:11:00~19:00
入場料:500円(高校生以下無料)

<同時開催>
『やんばるアートフェスティバル CRAFT POP-UP』
内容:沖縄・やんばるの豊かな自然が生んだ選りすぐりの工芸品を展示販売
参加作家(予定):陶藝玉城(やちむん)、シーサー陶房大海(やちむん)、田村窯(やちむん)、芭蕉布織物工房(芭蕉布)、金細工まつ(琉球鋳器)、加治工紅型工房(紅型)、琉球ガラス工房 glass32 (琉球ガラス)、南の島の布紀行いろいろ(紅型工房ひがしや)、藍房中村(藍染)、工房うるはし(木工)

公式サイトはこちらから。