ここはクラブかフェスか…実験的で挑戦的な寄席『NGKオルタナティブ三度目』を目撃!

不思議な組み合わせの出演陣に不可解な出番順、そして動く舞台セットにプロジェクションマッピングとスタイリッシュな音楽――まったく新しい演出による寄席『NGKオルタナティブ三度目』が、7月8日(金)に大阪・なんばグランド花月で開催されました。「主流に代わるもうひとつのもの」という意味を持つ「オルタナティブ」をタイトルに掲げたこの公演も、これで3回目。今回も、「笑いの殿堂も型を破る夜がある」というキャッチフレーズを具現化した“味わい深い”舞台となりました。

出典: FANY マガジン
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見せ方も音も“オルタナティブ”

2021年12月、2022年2月の公演に続いて3回目の開催となったこの日、場内に美空ひばりのノスタルジックな歌声が心地よく流れるなか、なんの前触れもなく、半裸の男が登場します。「テーブルクロス引きをさせていただきます」とマイペースに準備を始めると、Daft Punkのメガヒット曲『One More Time』のビートに乗って、サビのピークでテーブルクロス引きにチャレンジ。ドローンを使った挑戦は1回目は失敗したものの、2回目で成功し、さっそく見せ場を作ります。

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……冒頭から、TikTok芸能人フォロワー数国内No.1、世界的に注目されるウエスPをみじんも丁重に扱わないストロングスタイルな舞台です。そうこうしている間に、ステージ上には大がかりなセットが組まれていきます。

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The Chemical Brothers『Setting Sun』のド迫力サウンドに合わせて、キレキレのプロジェクションマッピングとともにスタイリッシュに現れたのは、囲碁将棋(文田大介、根建太一)。占いの「バーナム効果」(誰にでも当てはまる内容を自分のことだと勘違いしてしまう心理現象)をテーマとした、“バーナム”と言いたいがためのネタを繰り広げます。

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自ら歌う出囃子から、曲を絡めたリズム感抜群の歌ネタをシームレスに披露したのはメンバー(山口提樹、潮圭太)。

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その後は、Radioheadの名曲『Creep』をバックに、スクリーン上で、意味ありげな街の景色とコロナ禍の舞台鑑賞における注意事項が、どこぞのロックバンドのMV(ミュージックビデオ)を思わせるクオリティで上映されます。

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そしてオフローズ(明賀愛貴、宮崎駿介、カンノコレクション)が、店員同士の他愛もないやりとりからのまさかの展開で沸かせると、ハイツ友の会(清水香奈芽、西野)が力なく現れ、唐突に座右の銘についてローテンションで語り出たかと思えば、ささいな疑問点につぎつぎとツッコんで笑いを巻き起こしました。

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次のBGM もきっちり“オルタナティブ・ロック”で、The Smashing Pumpkinsの『Today』。こんなところでも“遊び心”を感じさせながら、大空から水中へと移りゆく幻想的な映像が映し出されると、続いては男性ブランコ(浦井のりひろ、平井まさあき)が登場します。

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やたらと大人な目線で父を翻弄する娘が瞬く間に成長していく5分間の人生劇場は、笑いだけでなく、ほろりとさせる見事なストーリーテリングでも魅了しました。

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ふつうに漫才をすると時空がねじれたかのような感じすらしてくる『NGKオルタナティブ』の魔力は、コマンダンテ(安田邦祐、石井輝明)の出番で気づかされます。「門真市のバーテンダー」というニッチ過ぎる設定ですでに“勝ち”のところ、その後もじっくりじわじわ笑いを引き出し、さすがの手腕を見せつけました。

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そして、前半戦の最後を飾るのは、なんと2回目の登場のメンバー! ポスターに2カ所、同じ名前が載っていたのはこういうことだったのか――と納得の“おかわり”歌ネタは、曲調は同じでも内容をガラリと変えて、見る者を楽しませました。

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何が起きるかわからない2時間は最後もまさかの…

後半は、ギター漫才3組が競演するブロックからスタート。まずはラニーノーズ(山田健人、洲崎貴郁)が、某人気リフォーム番組のテーマ曲を奏でつつ、妻に謝りながら神経を逆なでしていく匠の歌ネタで笑いをさらいます。

そこから吉本が誇る看板音曲漫才師、平和ラッパ・梅乃ハッパとのセッションが始まり、そのままバトンタッチ。ぶっちぎりのベテランながら、人懐っこい掛け合いに拍手喝采。ギター歴50年の巧みな演奏で盛り上がりました。

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そしてカラフルなカセットテープが舞うプロジェクションマッピングに導かれて、The Yardbirds『Stroll On』が響きわたると、どぶろっく(森慎太郎、江口直人)が事務所の枠を越えて出演。

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「やらかしちまった」歌ネタは共感の嵐で、バンバン笑いを取っていきます。

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一方、忘れらんねえよのエモな1曲『だっせー恋ばっかしやがって』を受けて登場したのは、ニッポンの社長(ケツ、辻)。

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おなじみの「娘さんを僕にください」のシーンを、お父さんからの質問にいっさい答えず、熱量と擬音だけで乗り切ろうとするサイコパス好青年という切り口で魅せ、終始笑いの連続でした。

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ここで、The Chemical Brothers『Setting Sun』がまたもサイレンのごとく爆音で鳴り響くと、そこに囲碁将棋の姿が! そう、メンバーと同様にポスターに2カ所、名前が載っていた理由はこれです。とんでも物件ばかりを紹介するお部屋探しにまつわるスレスレのトークは、文田が思わず「配信がないので調子に乗りました」と漏らすほどの、ライブならではの切れ味でした。

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最後は、Momのメロウな『タクシードライバー』に会場中が耳を傾けるなか、この日の出演者にまつわるようで微妙にまつわらない“マメ知識”をみんなで眺めるという謎のエンドロールから、ニッポンの社長・ケツがオリジナルソング『私上手く笑えなくて』をガチで弾き語るという、静かなるカオス。

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気づけば、いつの間にか巨大なセットはすべて取り払われ、もぬけの殻に……。とまどうケツが客席を横切って退場するなか、実験的で挑戦的な寄席『NGKオルタナティブ』はフィナーレを迎えました。

取材・文 奥“ボウイ”昌史

NGKオルタナティブ三度目ダイジェスト映像はこちら

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