京都国際映画祭2022授賞式に北大路欣也、竹野内豊が登壇! クロージングでは豪華鼎談を披露

10月14日(金)の先行企画から15日(土)、16日(日)と、今回のテーマである「A画とA―トでAやんか! 」の言葉どおり、さまざまな作品上映、イベントが行われた「京都国際映画祭2022」。最終日の16日、よしもと祇園花月で授賞式とクロージングが行われました。

出典: FANY マガジン
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3年ぶりの有観客開催

まずは授賞式から。ステージにはMCの木村祐一、佐々木ひろみが登場します。木村は「こうやって会場にお客様がいらっしゃるのが3年ぶり、戻ってきたなと言う感じがする」と笑顔を見せました。まずは、同映画祭2022アンバサダーのサヘル・ローズさんの紹介から。サヘルさんはVTRで「映画だけでなくアートにも触れて、楽しい、わくわくする気持ちになってもらえれば」とメッセージを送りました。

続いて京都市の門川大作市長の挨拶。門川市長は、同映画祭の志の高さを称えるとともに、映画発祥の地である京都の映画文化を未来に伝えるため、新たな映画賞を実施することを明かし、「幅広い人に参加してほしい」と映画賞会員を10月21日(金)から募集すること、会費は無料であることなどをアピール。来年3月から文化庁が移転してくることも併せ、一緒に盛り上げていきたいと話しました。

牧野省三賞は北大路欣也が受賞

ここから「牧野省三賞」の発表です。過去8回の受賞者の振り返りVTRが放映された後、選考委員を紹介。京都国際映画祭名誉実行委員長の中島貞夫監督、大阪大学の上倉庸敬名誉教授、奥山和由・総合プロデューサーが登壇しました。中島監督は「感激で心が震えている」と会場に感謝を伝え、「存分に授賞式を堪能してもらえたら」と挨拶しました。

そしていよいよ「牧野省三賞」の授賞式です。今年度の受賞者、俳優の北大路欣也が登場し、奥山プロデューサーから紅村窯 林侑子氏による土鋏菊花高杯のトロフィーが手渡されると、会場からは大きな拍手が起こりました。中島監督は、過去に北大路の父親である市川右太衛門も同賞を受賞していることを明かし、「親子二代にわたっての受賞は大変おめでたい」とその功績を称えました。

北大路はまず、「ありがとうございます」と感謝。そして66年前、13歳のときに父親の主演映画「父子鷹」でデビューしたこと、実は父親が出演に反対していたことなどを回想。さらに原健策、月形龍之介といった偉大な俳優の名前を挙げ、「手とり足とり教えていただき、役をやりきることができた。恵まれた環境でスタートさせていただいた」と感謝の気持ちを伝えます。そして「今も東映京都撮影所でいろいろな作品を素晴らしいスタッフのみなさんとともに汗をかき、がんばっております」と話すと、「今も元気で働ける、こんな幸せなことはありません、心新たにゆっくり一歩ずつ前進していきたいと思います」と受賞の言葉を締めくくりました。

映画を映画たらしめる、竹野内豊に三船敏郎賞

続いて、国際的な活躍が期待される俳優に贈られる「三船敏郎賞」の授与式です。こちらも過去8回の受賞者の振り返りVTRの後、選考にあたった文筆家で元黒澤映画プロダクションマネージャーの野上照代氏、三船プロダクション代表取締役の三船史郎氏、奥山プロデューサーを紹介。三船氏と奥山プロデューサーが登壇しました。

本年度の「三船敏郎賞」を受賞した竹野内豊にトロフィーと目録を手渡した奥山プロデューサーは、受賞理由として「映画を映画たらしめる、この一言につきる」と話し、「どのジャンルでも主演映画俳優というオーラを持っている、今どきなかなかそういう人はいない。本当に貴重な主演映画俳優」と絶賛します。そして竹野内が出演する「太平洋の奇跡」を挙げ、日本男児の血が感じられるすばらしい俳優であると話した後、「近くで見ていると、つくづくいい男だな、うらやましい」と笑わせます。さらに「コミカルな味わいもあり、そこも三船敏郎を彷彿とさせる」とも。これまでも毎年受賞候補として名前が挙がっていたそうで、「フリーになって大きく羽ばたく、このタイミングで受賞していただきたいと思った」と力を込めました。

竹野内は「ありがとうございます」と感謝のコメント。そして以前、イタリアで撮影を行った際、現地スタッフが三船敏郎について熱く語っていたことを明かすと、「世界中の人たちの心をずっといつまでも色あせることなく魅了し続けていて、本当にすごいな、素晴らしいと思った。同じ日本人として三船さんのことが誇らしくて、とてもうれしかった記憶があります。そんな偉大な三船さんの賞をいただけるとは夢にも思っていませんでした。身が引き締まる思いです」と受賞の心境を語りました。

アート部門も新たなチャレンジを実施

続いては京都国際映画祭アートプランナーのおかけんたが登壇。けんたは、まず「みなさん、こんばんは〜!」とおなじみのいい声を響かせると、会場入口にもアート展示をしていることや、今回もさまざまなアートに関する取り組みを行っていたことを説明します。そして京都市京セラ美術館には昨日8,500人が訪れたこと、VRを使った企画など、これまでと違った映像とアート、演劇などを「ユートピアなのかディストピアなのか」をテーマに表現したと力説。来年もまたみなさんに喜んでもらえる展示をしていきたいとアピールしました。

最後にどう映画祭実行委員会委員長の中村伊知哉氏がステージへ。中村氏は今年のテーマ「A画とA―トでAやんか!」を改めて紹介。祇園祭、五山送り火が3年ぶりに本来の姿を取り戻したことに触れ、同映画祭もコロナ後の姿を示したいと思っていたと明かします。そして改めて各会場、関係者に感謝を述べると、来年は京都の街、オンラインも使って新しい賑わいを作っていきたいと力を込めました。

出典: FANY マガジン
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北大路欣也×中島監督の豪華鼎談

続いてはクロージング。中島貞夫監督とゲストによる鼎談が行われました。1人目のゲストは、「牧野省三賞」を受賞した北大路欣也。MCの木村から2人の出会いについて質問があると、北大路は松方弘樹と一緒に刑務所から脱走する役を演じたこと、そしてその少しあとに三船プロダクションで「犬笛」に使ってもらったと振り返ります。

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ここで東映京都撮影所での中島監督と北大路の貴重な写真が紹介されると、会場からは拍手が。北大路は「私もですが監督も若いですね」と笑顔。写真が1975年、北大路と松方弘樹が共演した「暴動島根刑務所」のオフショットであることが明かされると、「大変な仕事、きつかったです」と北大路。中島監督は「この作品の特徴はラストシーン、手錠でつながれていた2人がどうやって解放されるか」と話すと、北大路は「怖かったですよ」と回想。中島監督は、北大路と松方が電車の鉄橋のレールに手錠の鎖でぶらさがっての撮影だったことを話すと「やる方もやってもらう方も無茶です」とポロリ。北大路も「めちゃくちゃ怖いですよ、決死の思いでした」と振り返っていました。ここから北大路による盟友、松方弘樹の思い出話へ。「弘樹ちゃんのいいところも悪いところも全部わかってる。とても楽しく仕事させてもらえた」と話すと、「もういろんなことを体験しております」と含み笑い。そして「今とは時代が全然違う、今だったらどこかに入ってる」と笑わせました。

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中島監督は2人について、「映画の時代劇が難しくなっていったその転換期に2人がいた」と回想。さらに「2人は対照的で、北大路はものをちゃんと考えられる人、松方は行動の人と」評しますが、北大路本人は「プライベートは逆、すごく気遣いの人だった」と明かします。そして松方弘樹の父親である近衛十四郎との思い出、松方が飲ませ上手で歌もうまかったことなども話したあと、改めて「やさしく思いやりのある素晴らしい男性だった。人間味を感じます」と称えました。

最後に中島監督は北大路について「お父さんから続く系譜のなかでいろんな勉強もしている。もしできれば命がある間にじっくりと仕事をしてみたい」と称賛。北大路は「13歳でデビューさせていただいて、本当に素晴らしいスタッフの方、俳優の方と一緒に仕事ができた。教えてもいただいた。こんな恵まれた環境のなかで今日まで来れたことが幸せだと思う。宝の山にいたって感じですね」と締めくくりました。

ステージでは殺陣の披露も

続いてはサムライアーティストの島口哲朗氏、マルチクリエーターの広井王子氏がゲストとして登壇。島口氏が「剱伎衆かむゐ」を主宰、映画「キル・ビル」第一作に出演、殺陣を担当したこと、広井氏がアニメ、ゲームの原作や舞台演出などを手掛けているほか「少女歌劇団ミモザーヌ」の総合演出を務めていること、ゲーム「サクラ大戦」には主人公たちの剣術シーンが盛り込まれていたことなどが紹介されます。

島口氏は「剱伎衆かむゐ」について、24年前に結成し、海外での活動が多いこと、そして殺陣にこだわっていろいろなスタイルを行っているという説明に続き、ステージ上で迫力満点の実演を行います。これには中島監督も「見事ですね」と称賛。島口氏は「サムライアーティストとして殺陣をひとつのアートにできないか、と公演をしている」とのこと。そして「キル・ビル」のクエンティン・タランティーノ監督とはアメリカでストリートパフォーマンスをしているときに出会ったことなどを明かします。そのタランティーノ監督との写真が紹介されると、現場はハッピーだったと振り返り、言葉は通じないものの、文化交流としておもしろく、今の自分の活動につながっていると話しました。

殺陣を見た広井氏も「すごいですね」と驚きの表情。そして「チャンバラ」や東映の悪役などについてもトーク。自身が剣術に興味を持ったきっかけは女剣劇だったそうで、女剣劇の歴史などについても語りました。

たかがちゃんばら、されどちゃんばら

ここで中島監督は改めて島口氏の殺陣について、チャンバラごっこが始まるかと思ったけど、間合いのとり方は一朝一夕ではできないものと話し、殺陣の距離感などについて島口氏に質問します。島口氏は「目に見えない間合いなどは置いていきがちなところではあるものの、そこにこだわっている」と力を込め、「殺陣は演技ではあるものの、全身全霊で相手に向き合わないといけない」と話します。中島監督が「ちょっと肩に力が入りすぎてるのかな、という感じもしたんだけど」と話すと会場からは笑いも起こりました。

今後の活動について、島口氏はサウジアラビア、ヨーロッパへ渡ることを明かし、「パフォーマンスと道場を繰り返してやっていこうと思っている」と話しました。広井氏は現在手がけている少女歌劇団に「来年くらいには剣劇をいれようかと思っている」と新プランを公表。そして「(美空)ひばりさんで歌いながら斬るというのがある。それがショーになりやすい。ちゃんばらが好きなのでそういうのをやってみたい」と力を込めました。中島監督も「いいもんですね」と笑顔。そして「たかがちゃんばら、されどちゃんばらですな」という中島監督の言葉に拍手が起こり、クロージングは終了しました。