こがけんの元相方で、FANYマガジンでもコラム連載中のピン芸人ピストジャムが、初の著書『こんなにバイトして芸人つづけなあかんか』(新潮社)を刊行しました。その出版記念イベントが、11月3日(水)に東京・下北沢の本屋B&Bで開催され、ピストジャムの2年先輩で本の帯も担当したピース・又吉直樹が登場。長い付き合いの2人だからこその軽快なトークで観客を楽しませました。
尋常ではないバイト経験
ピストジャムは、慶應義塾大学法学部を卒業した高学歴芸人。NSC(吉本総合芸能学院)東京の7期生として吉本興業に入所したものの、芸人だけでは食べて行けずにバイト生活を続けています。
この本は、そんなピストジャムのアルバイト遍歴をまとめたもの。極貧生活を招いた「時給90円」の仕事、金髪NGを突破する裏ワザ、二度と経験したくない飛び降りの後始末、宅配ピザチェーンをかけもちしたばかりにミスを連発した話など、不思議な仕事からトンデモ職場まで、めくるめくバイトの世界をつづったエッセイ集となっています。
又吉はトークイベントの冒頭、本を読んだ感想としてこう賛辞を送ります。
「面白かった。笑える漫談のように読めるし、文章は分かりやすくて正確。あと登場人物には、社会規範から逸脱してる人物がいるんですけど、素敵。可愛らしかったり、魅力的な人物がいっぱい出てくる」
さらに、「バイトをいっぱいやったからと言って、必ずしもこれぐらいのエピソードが揃うかと言ったら揃わないと思う。ピストジャムの20何年間の芸歴が集約されているんじゃないか」と絶賛。ピストジャムが恐縮した面持ちで「すべて、その通りです」と相槌を打つと、会場に笑いが起きました。
ピストジャムが本に込めた又吉の「教え」
その後も又吉は、バイト生活を続けることが、いかにすごいことか力説します。コミュニケーションが苦手な又吉は、面接に落ちたり、受かってもすぐに辞めたりということが何度もあったとのこと。そんなバイト生活を続けるピストジャムは「すごい精神力」だと感心しきりです。
一方、ピストジャムは、この本の隠れテーマは、又吉から教わった「人生は”フリ“だと思えば楽になる」という考え方であることを明かします。ツラいことがあったとしても、“いつかいいことが起こるための前フリ“という思いで書いたと、熱く語りました。
また、又吉が「『こんなにバイトして芸人つづけなあかんか』はすごくいいタイトル」とほめると、ピストジャムは、ほかの最終候補となったタイトル案を紹介。「『芸人バイト黙示録』や『学歴も芸歴も無駄遣い。今日もバイトしてます』というただの悪口なんじゃないかというのもあった」と語ると、又吉は「それはそれで読みたくなる」と爆笑していました。
「何のメッセージ性もない。ただ読んで笑ってほしい」
トークは進み、ピストジャムは、お互いにまだ若かったころに街で見かけた又吉の驚きのエピソードを披露します。
「深夜に下北沢を歩いていたら、シャッターにもたれかかって携帯を触っている人がいて、通り過ぎたら又吉さんだった。『こんな時間に何をやってるんですか』って言ったら、『いま原稿書いてんねん』って」
このエピソードについて、又吉が「締め切りヤバいときな。家におったら寝てまうから」と説明すると、ピストジャムは「外で立って原稿を書く。モノを書くってこんな世界なんやと衝撃を受けた」と振り返りました。
イベントの最後に、ピストジャムは改めて、自身初となる著作をこうアピールしました。
「本当に20年のアルバイト生活、芸人生活をぜんぶ詰め込んで書きました。この本は何のメッセージ性もないんです。単純に笑ってもらえたら。本棚の一個にプププって笑える本があることが、皆さんの生活のうるおいになったらいいなと思うので、楽しんで読んでもらえたらなと思います」
この発言に又吉も深くうなずき、会場からも大きな拍手。こうして記念すべきトークイベントはお開きとなりました。
書籍概要
『こんなにバイトして芸人つづけなあかんか』
著者:ピストジャム
発売日:10月27日
単行本(ソフトカバー):208ページ
出版社:新潮社
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