コントの作り手であり、賞レースや劇場でも活躍しているやさしいズ・タイ、男性ブランコ・平井まさあき、サンシャイン・坂田光、空気階段・水川かたまり、そいつどいつ・松本竹馬――この5人の実力派コント師が結成したユニット「コント犬」が、12月29日(木)に東京・ルミネtheよしもとでの初公演『コント犬~今日が貴方の犬バーサリー~』を開催します。そこで今回は、これまでのベストネタライブというこの公演を前に、5人にユニットへの思いを存分に語ってもらいました。仲睦まじいコント師たちの“空気感”に注目しつつご覧ください!
2019年に「コントだけで犬を養える生活を目指す」をコンセプトに活動を始めたコント犬。定期的に劇場公演を開催し、今年8月には初のDVDも発売しました。今回の公演では、これまでのコントからベストネタを披露します。
かたまり「どう転んでも、このメンバーになっていた」
――まず、ユニット結成の経緯を教えてください。
タイ 僕のなかで「コントで稼ぎたい」とか「コントって楽しいものだと知ってほしい」とか、いろんな思いがあって、まずはかたまりに声をかけました。喫茶店で「(ユニット名は)コント犬だ」って決めて、みんなに電話しましたね。僕は仲がよくてコントもめっちゃ面白い同期の坂田と平井を、かたまりは竹馬を選びました。
かたまり (ユニットの人選は)どう転ぼうが、結局はこのメンバーになっていたと思います。(後輩の竹馬を選んだのは)友だちだからです。
――(笑)。呼ばれたときはどんなことを思いましたか?
坂田 タイとは、NSC(吉本総合芸能学院)から同じクラスでしたし、長年一緒に住んでいましたし、本当に仲よかったんでワクワクしました。映画『天空の城ラピュタ』で、(ヒロインの)シータが空から降ってきたときの思いについて、(主人公の)パズーが「ドキドキしたんだ。きっとステキなことが始まったんだって」と言いましたが、タイから誘われたとき同じこと言っちゃった気がします。
平井 (笑)。当時は大阪から上京して3~4年くらいで、もちろんテレビも出ていないころ。そういうときに声をかけてくれたのは嬉しかったですね。東京に来ても、同期、先輩、後輩みんな優しい。いろんなライブに呼んでくれたり、こうやって声をかけてくれたり、そのおかげで苦しい時期を乗り越えることができました。
松本 かたまりさんからは、居酒屋で飲んでいるときに言われました。(嬉しくて)いつもより2杯多く飲みましたね。
坂田 そのとき、なにを飲んだの?
松本 ……コント(一同爆笑)。
――「コント犬」のメンバーとして初公演をやってみて、どんなことを思いましたか?
タイ それぞれ1本ずつコントを書いてもらって、5本くらいやったんですけど、ただ楽しいだけじゃない、コンビでは味わえない刺激がありました。みんなが書いてきたネタが面白かったし、すごくいいバランスだなと思いました。
“ふつうのコンビなら解散する”アクシデントも!?
――今回のルミネはベストネタライブです。これまでの公演で印象的な出来事・事件は?
かたまり 平井さんがセーラー服を着たふつうの女子高生役で、タイさんが、口に割りばしをツッコんだ出オチ役のコントがあったんですけど、なにを思ったのか、平井さんが舞台袖でスカートを胸のところまで上げだして……。女子高生役なのに、“チン”が浮き彫りになるくらいパンツを見せていたんですよ(笑)。板付いたとき(幕が上がったときや明転時にすでに舞台上にいる状態)は戦慄が走りました。そんなことするから、タイさんのインパクトも弱まるし。
平井 いわゆるサプライズというか、かたまりを笑わせたかったというか……。かたまりは、『新世紀エヴァンゲリオン』の綾波レイのようなクールビューティーな役だったので、そんな子が思わず、エヘッと笑みをこぼすのがいちばん可愛い。それが見たかったんです。
かたまり それを暗転板付きで狙わないですよ(笑)。
――そのあと、タイさんの登場は大丈夫だったんですか?
タイ 大丈夫じゃないですよ。スベるならスベり切ったほうがいいのに、台本がよかったので、ちょっとだけウケちゃったんですよ。いちばん気持ち悪い、ややウケというイヤな結果に終わりました。あと、松本も髪をビシャビシャに濡らしてシャンプーして出てくることもあったし。
松本 お客さんもリピーターの方が多いので、たとえば3公演やると、だんだんウケなくなっていくんですよ。だから(エスカレートして)、千秋楽だけ観に来たお客さんから「なんだこれは」という声はありました。これはいいところでもあり、悪いところでもあるなと思います(笑)。
坂田 あと、かたまりが書いてくれたコントで、僕と松本が出たんですけど、内容はめっちゃよかったのに、あまりウケなくて。そこで僕らのなかで「ウケるまでやめることはできねぇ」ってヘンなスイッチが入っちゃって……。
松本 5~6分で終わるネタだったのに、12分やりましたね。
坂田 (笑)。大汗かいて8キロ痩せました。お互い舞台上で「なんとかしろ」ってキレながらやってたし、ふつうのコンビだったらあの舞台後に解散していたと思います。最高の刺激でした。いま思い出すだけでも体が熱くなります。
コントを作る幅が広がる
――ユニットをやっていて、なにが得られましたか?
平井 その人がどんなことを言ったら、どんな役をしたら、どんな台詞を言ったら、面白くなりそうか――と考えながらネタを作れるようになりました。その人を思い浮かべながらネタを作るのが、こんなに楽しい作業なんだなと発見がありましたね。竹馬だったら、僕が発掘した「竹馬ぷりちーキャラ」というのがあるんですけど、プーッて(ポーズを)やったら本当にかわいいんで、それを毎回、ネタに入れるっていう。
松本 もうパワハラですけどね。
平井 (笑)。スベるとかウケるとかじゃなくて。あれはみんな「かわいい」と思ってるだけやから。
坂田 コントを楽しむ幅が広がりました。長尺のお芝居のようなコントもやるんですけど、それはそれでふつうのユニットコントとは違う笑いのとり方だったり、見せ方だったりするので、いつもじゃ味わえない刺激や感動があります。気心も知れているんで、本番で「ノッてんな」「いまのいいの出たな」というものがあったときは、倍々に気持ちよくなっていきますね。
タイ コンビでやらないようなネタができるし、一緒にコントしないとわからないお互いのよさもわかったし、逆にみんながネタを書いてくれるので、「自分はこういうこともできるんだ」と発見もありました。視野が広くなりましたね。
かたまり コンビでは基本的になんでもやってみようというスタンスでいるんですけど、たとえば「すごくカッコつける人」とかの設定を思いついたとしても、さすがに自分たちに合わないから、ってやらない設定もあるんですよ。そういうコントを考えることが多いです。
松本 「すべての道はローマに通ず」じゃないですけど。
タイ じゃないですけど?
平井 じゃあ言うな(笑)。
松本 ユニットコントでネタを作る道は、僕ら、そいつどいつのコントを作る道に通じているんだなって思いました。僕、いちばん後輩なんですけど、「おもろ兄さんたちは、こうやってネタを作ってはるんや」って勉強になるし。
平井 「はるんや」って(笑)。“兄さんたち”も言うたことないやろ。
松本 ウチらのコントを作るときにも、「ここは『コント犬』で平井はんが、こんな演出してはったな」とか。そういうことを思い出しています。
平井 平井“はん”?(笑)
松本 基本的に兄さん方は心が広うて優しい。今日、僕だけ遅刻しちゃったんですけど、そういうのも笑い飛ばして「ええよ、ええよ!」と言うてくれました(一同爆笑)。
松本「ゆくゆくはこの5人でテレビに出たい」
――コント犬として、これからどんなことをやってみたいと思いますか?
かたまり 結成したときの目標が「コントだけで犬を養える生活をする」というものだったので、最終的には「コント動物王国」を郊外に作って、そこに劇場を併設したいです。
タイ スケジュール的に、いままでのようなペースでライブをするのは無理なんですけど、それでも定期的に公演を打って、いっぱいおカネを稼いで、コントだけで犬を養えるような生活を目指したいです。
坂田 いま35歳で最近、発覚したんですけど、どうやら僕、猫アレルギーみたいで(苦笑)。友だちの家に猫がいたときに、くしゃみが止まらないし、目のかゆみも止まらないなって思ったんですよ。これで犬アレルギーが発覚したら非常に怖いんで、コントで稼いだおカネで、アレルギーの特効薬を作ってもらって、それから犬を飼いたいです。
平井 『コント犬』に関しては、1回もギスギスしたことないので、楽しいままでいたいですかね。「しんどい」となるのは、いちばんイヤですね。
タイ なんとなくの共通認識で「コンビ活動に支障があるのは違うよね」というのもあるんで。
平井 楽しいこのスタイルは大前提でいたいなと思います。
松本 むかしからテレビコントを観て育ってきたので、ゆくゆくは、この5人でテレビコントがしたいです。一応、僕のなかでは明確なプランがあるんですけど、ユニット名が『コント犬』なので、番組名は『笑う犬の人生』。
平井 もう『笑う犬』という冠のコント番組、あんねん(笑)。
公演概要
『コント犬~今日が貴方の犬バーサリー~』
日時:12月29日(木) 開場19:00 開演19:30
場所:ルミネtheよしもと
チケット:前売3000円 配信1600円
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