能、狂言、そして漫才、吉本新喜劇という“時空”を超えたさまざまなジャンルの笑いのプロフェッショナルが集結! そんな“贅沢”すぎるスペシャルイベント「狂宴御芸~和の共演 新喜劇×狂言師〜」が、2022年も年の瀬の12月27日(火)に、京都市上京区の金剛能楽堂で行われました。ふだんはあまりなじみのない伝統芸能についての解説やワークショップもあり、観客は過去と現代のお笑いを存分に堪能しました。
狂言のワークショップに興味津々
ステージはまずは能の仕舞「土蜘蛛」からスタート。仕舞とは面や装束をつけずに見どころを舞う、いわばダイジェスト版。とはいえ、土蜘蛛が投げる蜘蛛の糸が舞台に鮮やかな軌跡を描くなど、その迫力をしっかり堪能できました。
ここで、すゑひろがりず(南條庄助、三島達矢)と吉本新喜劇・高井俊彦が登場。「能に慣れていないと見ていてもよくわからない」と狂言師・野村太一郎を呼び込むと、初心者でも楽しめるワークショップがスタートします。
まずは「土蜘蛛」について、「初めて見る人もいると思うので、少し派手な演目を選ばせてもらいました」と話す野村。糸を投げる回数も、この日はふだんよりも増やして投げたのだとか。
野村が、能と狂言の関係や、狂言ならではの動きなどについて説明を続けるなかで、さっそく南條、三島が狂言の動きに挑戦しますが、個性を出しすぎる三島の姿に会場は爆笑。めげずに「大笑い」や「空笑い」、「照れ笑い」といった狂言の笑い方にチャレンジすると、今度は意外にも息の合った様子に会場から拍手が起こりました。
さらに、現代にも通じるおもしろい狂言があること、飲み物を注ぐときやお茶碗を割る際のユニークな擬音など、狂言をめぐる意外な話に観客はもちろん、すゑひろがりず、高井の3人も興味津々。最後はみんなで、狂言の「おいしい」を実演してワークショップを締めくくりました。
「笑いをこらえるのに必死」
すゑひろがりず、COWCOW、テンダラーの3組による漫才で会場が盛り上がったあとは、狂言「蝸牛」です。蝸牛を知らない太郎冠者が山伏を蝸牛と勘違い。山伏はそれをわかっていながら太郎冠者をからかっていくというお話ですが、そのユニークなストーリーに会場から笑いも。舞台いっぱいに使った動き、「でんでんむしむし」のリズミカルな声、そしてまさかの展開の物語に、最後まで目が離せませんでした。
吉本新喜劇は高井、今別府直之、レイチェル、前田まみというメンバーに加えて、野村太一郎がゲストとして参加します。能舞台に聞き慣れたテーマ音楽が流れると、新喜劇がスタート!
おなじみのメンバーによるボケの連発に会場の笑いも止まりません。狂言の動きやしゃべりそのままで登場した野村は、直前に見せた狂言「蝸牛」の要素もしっかり取り入れ、観客の笑いを取ります。さらに、狂言流のコケでも会場を大いに沸かせました。
芝居が終わったあと、野村は「笑いをこらえるのに必死でした」と明かし、今昔の笑いを堪能した会場から拍手が起きていました。