SIDE COREら注目アーティストがひと足先に見どころを紹介! やんばるアートフェス開幕!

今年で6回目となる沖縄県北部の地域芸術祭「やんばるアートフェスティバル2022-2023」が1月14日(土)~4月9日(日)まで開催されます。開幕前日の1月13日(金)、関係者やマスコミ向けの内覧会が行われ、総合ディレクターでありアーティストとしても出展する仲程長治氏や、エキシビション部門ディレクターの金島隆弘氏ほか、多くのアーティストが出席し、今年の見どころや、作品準備段階での体験談、会場となるやんばる地域への思いなど、貴重なエピソードが次々と披露されました。

出典: FANY マガジン
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この日は、窓の外に塩屋湾を一望する絶好のローケーションを誇る大宜味村立旧塩屋小学校の体育館から、内覧会がスタート。石垣昭子 from 紅露工房「しまをまとう」からは、西表島を拠点に活動し、今回初参加となった染織家の石垣昭子が登壇しました。

石垣昭子 from 紅露工房「しまをまとう」

体育館のステージに展示された、西表島の祖納公民館に保管されていた城間紅型の緞帳幕や、自身が作成した芭蕉のタペストリー、芭蕉や苧麻・絹などを組み合わせた交布について説明。司会を務めた金島氏も、石垣が手掛けたスディナ(琉服)を着用し登場しました。

現在85歳になる石垣は、西表島での活動のきっかけとなり、昨年亡くなった大宜味村・喜如嘉の芭蕉布保存会の代表で人間国宝の平良敏子さんとの出会いについて明かしました。「自分が30代の頃、何もない時代に何からはじめようか迷っていたところ、沖縄県を通じて平良さんに芭蕉布の指導を依頼すると喜んで引き受けてくれ、西表島を訪れてくれました。今回偶然にも大宜味という平良先生と由縁ある地で作品を展示できたことが大変感慨深い。テキスタイルの世界にとっても、沖縄にとっても芭蕉布は世界に発信できる宝物だと実感しました。糸となり布となり紙にもなり循環する芭蕉は大切な植物であることを若い世代にも伝えていきたい」と今回のフェスティバルに参加できた喜びや芭蕉への思いを語ると、ギャラリーからは大きな拍手が送られました。

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Chim↑Pom from Smappa!Group「Gold Experience」

続いて、体育館に置かれた巨大なバルーンのゴミ袋「Gold Experience」の作品を手掛けたアーティストコレクティブ「Chim↑Pom from Smappa!Group」が登壇。「Gold Experience」は中に入って遊べる体験型のアトラクション作品で、これまで東京・渋谷や六本木など人々が行き交う大都会で展示されてきました。

メンバーのエリイは「作品にはどんな所に展示されてきたのかと芯にずっとあるものの2つの意味があり、場所や時間など見る角度によって、解釈の仕方や作品の持つ意味が変わってくる」と説明。「当初、消費を意識して作成したゴミ袋の『Gold Experience』も、東日本大震災の後は、放射性物質を入れる黒い袋をイメージするようになった。会場の小学校も廃校になってしまったが、本来なら子供たちが遊んだり学んだりしていた場所。もともとは人が大勢いいる場所で生まれたゴミ袋がいまなぜ、ここにあるのか。人がいなくなった場所に、改めて存在している意味を問われています。都市部以外での展示はこのフェスティバルのなかで、どうなるか楽しみ」とやんばるの地での展示に期待を膨らませていました。

出典: FANY マガジン
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Uymam Project「歩いて巡る屋外写真展 塩屋湾・ウンガミ」

北海道・白老町を拠点に活動している「Uymam Project」は、小学校からほど近くの大宜味村塩屋地区で、「歩いて巡る屋外写真展 塩屋湾・ウンガミ」を展開。「土地の記憶」をテーマに、1986年に発行された大宜味村生まれの写真家・平良孝七の記録集から、塩屋湾で400年以上続く伝統行事「ウンガミ(海神祭)」をはじめ、神行事や奉納角力(相撲)などの写真を大きく引き伸ばしたものを、実際行事が行われていた場所に展示しています。

地元の人々の協力により、映っている当時の場所や住人が特定できたそうで、展示にあたり、写真1枚を通して人々の関係や絆が改めて結び直されていくことを感じられたと、準備段階でのエピソードも明かされました。今後は、プロジェクトでサポートしながら写真の保全や塗膜の作業は地元に引継いでいくとのことで、メンバーも「これらの作業が地域の生活の中の景色になって行くと嬉しい」とコメント。

プロジェクト名「Uymam(ウイマム)」とは、アイヌ語で交易の意味があり、土地の文化に触れあって文化芸術で交易していきたいという思いが込められていることも明かされ、まさにプロジェクト名通りの展示となったことに参加者から温かい拍手が送られました。

出典: FANY マガジン
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「YAF CRAFT MARKET」

さらに、小学校の校舎に移動し各教室に展示されたアーティストごとの作品も見学。クラフト部門に出展するアーティストの作品を見て、触れて、実際に購入することができる「YAF CRAFT MARKET」では、キュレーターを務める麦島美樹氏から、本フェスティバルの今年のテーマ『シマを繋ぎ シマに響く』に基づいて、ここでは「クラフトを通じて島や人を繋ぎたい」という思いから、沖縄県内18作家のやちむん(焼き物)、ガラス、アクセサリー、芭蕉布、木工、紅型などさまざまなジャンルでセレクトしていると説明がありました。

また、今回は、芭蕉布の復興と伝承に尽力した平良敏子さんへの追悼の意を込めて、生前使われていた道具や、仕事場の再現オブジェなども展示しています。フェスティバルの第1回から携わっていただいた平良さんの仕事と暮らしを感じられる空間に作り上げられているのでぜひ注目して欲しい展示の一つです。

出典: FANY マガジン
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大小島真木「胎海──海を孕む、海に孕まれる」

次に、ひとつの教室を人間の胎内に見立てた、大小島真木の「胎海──海を孕む、海に孕まれる」を紹介。海を孕んだ輩――、と人間を含む哺乳類の生態を言いあらわした、解剖学者・三木成夫の著書「胎児の世界」にインスパイアされたという展示は、教室内に心音が響き、大きなクジラや人間の臓器などが描かれ、セラミックで作られた妊娠35日目の胎芽(たいが)置かれています。

大小島は、胎芽が魚のような形で爬虫類のような顔をしていること、哺乳類の羊水の成分が太古の海水の成分によく似ていること、人間のルーツを探ったときに人と海は切り離せない関係であることなどを解説。魚類、両生類、爬虫類などあらゆる生き物が混ざりあい進化しながら人として生まれる生命の神秘や不思議を肌で感じられる展示をぜひ体感して欲しいと語りました。

出典: FANY マガジン
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西永怜央菜「ある人物」

続けて、沖縄県浦添市出身で、自身のルーツがやんばるにあるという西永怜央菜のインスタレーション作品「ある人物」を紹介。その昔、経済的な理由などから海外に渡った移民がやんばるに大勢いたことや、自身にも移民の親戚がいることを明かしました。西永は今回、影絵(切り絵)を用いて、親戚での移民で画家であった彼の物語を制作。現代とクロスオーバーさせた展示は、西永の個人的な物語でありながら沖縄の歴史的背景も色濃く描かれており、臨場感あふれる仕上がりです。

出典: FANY マガジン
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SIDE CORE×KOM-I×新美太基×KINJO「Spool of Time」

その後は、第2会場となる六田原展望台に移動。高台にあり、塩屋湾から東シナ海、本部半島、古宇利島などが眼下に広がるこの場所には、過去に廃業した大型ホテルの跡地があり、SIDE CORE×KOM-I×新美太基×KINJOが廃墟となった建物を使用し、“記憶を留めること、記憶の追憶すること”をテーマに「Spool of Time」と題したアートを展示しています。糸車で時間を早送りしたり巻き戻しする感覚から「Spool of Time」というタイトルを決定したそうです。

今回、SIDE CORE×KOM-I×新美太基×KINJOの1人として参加した、音楽ユニット・水曜日のカンパネラの初代ボーカルで、俳優としても活動するKOM-I(コムアイ)は、大宜味村・喜如嘉の芭蕉布についてフォーカス。芭蕉の糸の生産から機織りまでの長いプロセスや、芭蕉布を作る女性の姿をインスパイアした作品を制作しました。「喜如嘉の女性たちが手から手へ作業を受け渡して、共同体で一反の織物を作り上げていく姿や、産業や工芸が持つ美しさに惹かれた」と明かし、中でも、芭蕉の繊維を裂いて1ミリにも満たない細い糸をつないでいく「苧績み(うーうみ)」という工程に心を打たれ、顕微鏡で見た「苧績み」の結び目が握手をしているように見えたことから、自身と関係性が深い人とが手を握るたくさんの写真と、平良さんが「苧績み」した糸を廃墟内に展示しています。喜如嘉の女性の姿と彼女のパーソナルな部分を掛け合わせ表現した、作品の数々に込められたメッセージをぜひこの機会に感じてみて下さい。

出典: FANY マガジン
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『やんばるアートフェスティバル2022-2023』は、大宜味村立旧塩屋小学校をメイン会場に、1月14日(土)~4月9日(日)まで行われます。独自の自然や文化が根付き、沖縄の原風景が色濃く残る「やんばる」を舞台に、現代アートや沖縄をはじめ日本各地の伝統工芸を肌で感じられるフェスティバルに足を運んでみませんか。

開催概要

『やんばるアートフェスティバル2022-2023 シマを繋ぎ シマに響く』

【開催期間】
2023年1月14日(土)ー 4月9日(日)
※メイン会場・大宜味村立旧塩屋小学校を含む複数会場は、金土日祝のみ開館

【参加アーティスト】
エキシビション部門:30組、クラフト部門:18組

【会場】
大宜味村立旧塩屋小学校(大宜味ユーティティーセンター)
六田原展望台
やんばる酒造
オクマ プライベートビーチ&リゾート
辺土名商店街
オリエンタルホテル 沖縄リゾート&スパ
カヌチャリゾート
名護市民会館前アグー像

【料金】
入場無料

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