5つのスクールからなる、エンターテインメントの表方・裏方を目指す人たちを育成する吉本興業の教育機関「よしもとアカデミー」は、現役の人気芸人ら豪華講師陣による実践的な授業が魅力です。1月12日(木)には、その全生徒を対象に『M-1グランプリ2022』ファイナリストによる特別授業が行われ、東京校にさや香(新山、石井)、大阪校にロングコートダディ(兎、堂前透)が登場。生徒たちに熱いメッセージを送りました。
さや香をタジタジにさせる鋭い質問
東京校では、教壇に立ったさや香の2人に現役生徒たちから次々に質問が投げかけられました。憧れだったコント漫才をしていたものの、しゃべくりに転向したというNSC(吉本総合芸能学院)の生徒から、「なかなかネタが作れない」という相談が。これに対して新山は、M-1のワンシーンを引き合いに出して会場を笑わせます。
「いったん、コント漫才でいいんじゃないですか? 僕らみたいなしゃべくりって、いちばん難しいことしてるんで。サンドウィッチマンの富澤(たけし)さんの言葉を借りると、王道であそこまでウケるのはすごいんですよ」
実際、さや香の2人自身も紆余曲折がありながら“いまの形”にたどり着いただけに、「自分たちがやりたいことをやってみればいいのでは」と語りかけました。
さや香は、2017年のM-1決勝に初進出したものの1stラウンドで敗退。5年の時を経て再びファイナリストとなって準優勝した経緯があります。これについて生徒の1人から、「この間に、どんな修正をしたのか」という“鋭い”質問が飛び出すと、思わず新山が「(本当に)NSC生ですよね?」と逆質問。石井も「(メディアの記者から)まったく同じ質問をされたことがありますよ?」と舌を巻きます。
新山が、5年前の1stラウンドで披露した「歌のおにいさん」ネタについて振り返りながら答えていきました。
「(当時)“エゲつないネタ”ができたと思ったんですよ。もう売れるの確定。2本目に用意していた『強い気持ちでいくねん』というネタをやることで、『強い気持ちで行くねん』が流行る。このフレーズなら『強い気持ちで保険入んねん!』とかCMで使われる……いろいろ想像していて。でも、(審査は)90点が5人やったんです」
良くも悪くもない中途半端な点数が芸人的にイヤで、そこからスタイルを変更したと説明しながら、新山は生徒にこう語りかけました。
「(昨年)ボケ、ツッコミを入れ替えたら決勝に行けて……。いままでの時間なんやったん? みたいな。でも、そんなんの繰り返しです。ミルクボーイさんみたいに(ひとつのスタイルで)押し通していける人もおるし。自分の判断ですよね」
兎のネタ談義に堂前がツッコミ
一方の大阪校に登場したロングコートダディは、自分たちのNSC時代のエピソードを披露しました。兎は「あのときのオレらを見て、決勝へ行くなんて誰も予想できなかったと思う」と振り返りながら、生徒たちに「これからいろんなことを吸収できると思う。いまが全然ダメでも、それが面白くなってくる。なにかを身につける大切な時間になってくる」と熱弁ふるいます。
生徒からの質問コーナーでは「いいネタができるとき、どのタイミングで気づきますか」との質問が。ネタを書いていない兎が「僕は、ですけど~」と語りはじめると、堂前から「なんで、お前からやねん!」とツッコまれるお約束もありつつ、質問にある“いいネタ”について「自分が好きなネタでいいと思っている」と言う兎。
「コントなら役に入り込みやすい、漫才なら相方とやっているときに笑ってしまうとか。いまは、『いいネタ』というのは意識しなくていいと思いますよ。どんどん作っていって、何ができるのかできないのか、それをわかっていくのが、いまの時間だと思う」
一方の堂前は「何をもって“いいネタ”とするか、ですよね」と生徒たちに語りかけます。ウケるネタをいいネタとするか、自分たちがやっていて楽しいことを重視するか、あるいは、ウケなくても展開が美しすぎるとか……さまざまな例を挙げながら、人気芸人ならではの苦労も口にします。
「僕らくらいの芸歴になると、『あ、これは賞レース狙えるネタかもしれん』と頭によぎって、自分のなかでのハードルが上がってしまうときもある」
最終的に「あまり気にせんと、どんどん書いて、やっていったらいいんじゃないかなと思います」とアドバイスすると、質問した生徒は興味津々で頷いていました。
授業の最後にロングコートダディの2人は、改めて生徒たちにこんなメッセージを送りました。
「いまはどんどん変化していく時期だと思うので、その変化を楽しんでもらえたらなと思います。これが完璧なカタチだとか決めずに、いろいろ挑戦して、失敗して、成長していってください」(兎)
「僕らもNSCを卒業して十何年経ちましたが、すごい勢いでここまで来たわけじゃなく、ほんまに自分らのペースでやってこられて、ほぼ後悔はありません。でも、NSC在学中にひとつだけ後悔があって……ほんまにもっと女の子と遊んどけばよかった」(堂前)
生徒のレベルが上がっている!!
授業終了後、東京と大阪を繋いでオンライン取材が行われました。体調不良による休養が明けて初仕事だった兎が、授業の感想をこう語ります。
「若者の力はすごい。真っ直ぐな視線で見てこられたので、ふざけたくなるところをグッと堪えて『真っ直ぐに答えないと』と思って、柄にもなく真面目な授業をしてしまった」
これに堂前から「(兎は)療養明けの初仕事のせいか、いまの感じと同様に授業のときも薄く、長~く答えてました」とツッコミが入ると、兎はすぐさま「いやいや、熱く、濃く、短く答えていました!」と物言いをつけていました。
さらに、自分たちの時代と現在のNSC生との違いについて聞かれると、それぞれこう答えました。
「僕たちのときは、まともに喋れる人がひとりもいなかった。当てられても『ゔー、ゔー』とかしか言えない子ばかりでしたが、いまの子はハキハキと答えていて、お笑いというか、人間としてのレベルが上がっている気がします。これから考えられないくらいのレベルの方たちが出てくるのかな、と考えるとワクワクで夜も眠れない感じです」(兎)
「M-1とか賞レースの質問がめちゃくちゃ多かったですね。僕らが在学中のときは、そんなに意識してなかったからすごい。賞レース全体が盛り上がってきてる証拠なんかなと思います」(堂前)
一方、さや香・石井はM-1後の“変化”について、「今日、ダウンタウンさんの番組に初めて出させていただきまして。それ終わりに来たので、授業はあんまり集中してなかったですね。そこでエネルギー使ったので」と笑わせつつ、あらゆる仕事に「がむしゃらで向き合っている」と語りました。
相方の新山も「(M-1決勝でネタにした)佐賀からのお仕事もオファーが来てまして。けっこう遠いので、マネージャーがスケジュールの組み方でテンパっています。佐賀の方が許してくださって、ありがたいことです」と“意外な反響”を語りました。
【よしもとアカデミー】
昨年40周年を迎えた国内最大級のお笑い養成所「NSC(吉本総合芸能学院)」、クリエイター・プロデューサー・構成作家などエンタメスタッフを育成する「YCA(よしもとクリエイティブアカデミー)」、歌唱・パフォーマンス・演技、幅広くエンタテインメントを学ぶ「YPA(よしもとパフォーミングアカデミー)」、エンタメ×デジタルの幅広い知識と実践スキルを身に付ける「YDA(よしもとデジタルエンタテインメントアカデミー)」の4校に加え、これらのカリキュラムを学びながら高等学校卒業の資格もとれる「吉本興業高等学院」で構成されています。資料請求は、よしもとアカデミーまで。
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