三田麻央“初執筆”ライトノベルは美少年AIとの恋物語「自分の思想が文章にうつった」

元NMB48でタレントや声優として活躍する三田麻央が、初のライトノベル『夢にみるのは、きみの夢』(ガガガ文庫)を4月20日(火)に出版しました。冴えないオタクOLと美少年AIロボットの恋愛ストーリーという、彼女の“妄想”が存分に詰まったこの作品。執筆の苦労やそこから得た“気づき”など、作家・三田の思いをたっぷり語ってもらいました!

出典: FANY マガジン

1,000冊ほどのマンガ・小説を所有し、芸能界きっての“腐女子”としても知られる三田が、長編小説執筆に初挑戦。約2年を費やして、オタクOLとAIロボットの恋物語を書き上げました。これまで“受け手”だった彼女が作家の立場になったとき、どんなことを感じたのかーー。出版を記念した今回のインタビューでは、彼女の言葉一つひとつから、作品への愛とプロへのリスペクトがにじみ出ました。

【あらすじ】
オタクOLの美琴は孤独な誕生日に、AIロボットを自称する怪しい青年と出会う。自分を匿ってほしいとお願いされて一度は逃げだす美琴だったが、青年の言葉は全て事実だと判明して……。人とAIの同居恋愛ドラマ。

編集部と二人三脚で物語を執筆

――どういった経緯で小説を執筆することになったんですか?

もともと妄想癖があるので、それを生かすようにと、事務所から声をかけていただきました。「わかりましたー!」って軽く答えたら、もうてんやわんやで(笑)。もともとイラストは描いていたので、絵で何かを表現するのは得意だったんですけど、いざ自分が文章を書くとなったら難しかったですね。

――作品は、細部にわたって丁寧に描かれていて、情景がすぐに思い浮かびました。

本当に編集の方と二人三脚で作らせていただいた感覚です。物語を考え始めたころ、たとえば、“この話ってどうやって表現するんだろう”とか、“手でお茶を取る描写はどうやって書くんだろう”とか、細々とした部分ですけど、作家の「色」が出るところに苦労しました。

――文章で自分の「色」を出すのは、なかなか難しいことです。

やっぱり自分が感じた“そのまま”を文章にするって、いちばん難しいことだと思いました。いままで何気なく読んでいた小説が、「神の本」のように見えてきましたね(笑)。

出典: FANY マガジン

――苦労した点も多かったのでは?

メチャクチャありましたね。起承転結を作るところから始めたんですけど、もう大変で……。書きたいことを書けばいいわけではないし、(登場人物の)その行動には裏があって、自分が思っているだけでは伝わらない。だからこそ、編集の方から(物語の)矛盾を問い詰められるんですよ(笑)。それを「これはこうだからです」って説明すると「じゃあ、それを書きましょう」と返ってきて、本当に編集者さんと刃物を向け合いながらやっている心境でした(笑)。

――そうした指摘によって自分の足りない部分が見えてきた、と。

そうですね。最初は本当に描写不足で、冒頭部分でも6回ほど書き直しています。ようやく最後まで書き終えて、最初から読み返すと、つたなすぎて「イヤだー! なんだ、この言い回し!」みたいな部分がいっぱい出てきて(笑)。結局、ほとんど書き直し。それを何度も繰り返しました。

――恋愛ロボットと同棲する設定ですが、このアイデアはどこから思いついたんですか?

私の願望です(笑)。だって、自分の夢に出てくるような男の子が目の前に現れて一緒に住むなんて、それこそ“夢のような話”じゃないですか! 私がずっと夢見たことを(主人公の)「美琴」に捧げましたね。

――“妄想癖”でアイデアが溢れすぎて、書き切れなかったこともあるのでは?

いえ、ぜんぶここに詰め込みました(笑)。むかしの私の好きなキャラクターの傾向が、年下の可愛い系の男の子で、いわゆる「ナオ」だったんですけど、いまの私のタイプが上司の「佐々木」なんですよ。彼の特徴は、ぜんぶ私の好みです(笑)。なのでキャラ設定で困ることはなかったですね。

出典: FANY マガジン

思い入れのあるキャラクターは?

――美琴が三田さんと同い歳。キャラ作りで自分を重ねたことは?

ちょっとどころか、ぜんぶ詰め込みました。冒頭から私のシーン全開です(笑)。

――ファンタジーだけど、三田さんの私小説のような側面もあると。

本当にそうです。出てくるお店も実際にありますし、私の夢を見事にかなえてもらったような小説ですね。

――特に思い入れのあるキャラクターは?

うーん。全員ではあるんですけど、1人挙げるとしたら美琴の同僚・今宮華那ですね。この子のキャラクター像が自分のなかでコロコロ変わって、最後まで定まりませんでした。彼女をどうするかについては、編集の方とも話し合ったくらいです。ナオと美琴の物語ではあるんですけど、この子の在り方については迷いに迷ったので、最後、華那のことを書いていたときは、自分が泣きそうになっちゃいました(笑)。

――それほど感情移入したんですね。

大きなテーマは「夢」なんですけど、“物語に出てくる登場人物全員が主人公”という側面もあるので、読み終わった方々全員に「あなたが思う主人公は誰でしたか?」って聞いてまわりたいくらいです。

――この作品を通じて伝えたいことは、どんなことですか?

私がつねづね思っていることなんですけど、「自分にとってのハッピーエンドは誰かにとってのバッドエンド」というのがあって、1位になれば2位がいるわけで。でも、なかにはその2位がほしかった人もいて……って、いろいろな考えがあるじゃないですか。

ただ、これをテーマにしたかったというよりも、書いているうちに自分の思想が文章にうつっちゃった感じです。もともと、AIの男の子と女の子の話を書くことは決まっていたんですけど、テーマというテーマがなくて、書き進めていくうちに、逆に“私ってこういうこと思っていたんだな”って教えられました。

出典: FANY マガジン

――特にどんな人たちに読んでほしいですか?

ラノベファンの方に読んでいただきたいです。ガガガ文庫さんのSNSでこの小説の発売が発表されたとき、「三田麻央って誰?」というコメントもあったので、そういう人に読んでいただきたいですね。

ラノベ好きの方が読んで、これをどう評価してくださるのか楽しみです。厳しい目線がいっぱいあるだろうけど、次はこうしようって思えるので、辛口の意見も大好きです。

漫画化あおのなちの装丁に感涙

――装丁のイラストを担当したのは、漫画家・あおのなちさん。もともとファンだったと聞きました。 

大ファンでした。読んでいただくとわかるんですけど、私の創作物ってちょっとひねくれているんですよ(笑)。そういう作風が好きな“根本”を作ってくださったのが、あおの先生だったりもします。同人誌で活動されていたころから通販で取り寄せるくらい好きで……。

編集の方から「せっかくだったら好きな方の名前を教えてください」って言われて、挙げさせていただいたら、お忙しいのに引き受けてくださったんですよ。実際にお会いしたとき、当時買った同人誌を持って「ファンでした!」って言いました(笑)。夢見心地でしたね。だから、小説の世界観を丸ごと表現してくださった完成品がきたときは、声をあげて泣きました(笑)。

――三田さんはイラストも描いてますが、自分で描こうとは思わなかったのですか?

まったく思わなかったですね。こういうのってジャンル分けがすごく大事で、何でも手を出せばいいわけではないって思います。今回、小説に挑戦しましたけど、自分で世に出せると思えるまで詰めに詰めてやった結果の2年でしたし、どの世界にもプロの方がいて、それでご飯を食べている方がいる。だったらプロに任せたいし、隣で見てみたい。

最終的に、私がやっていて面白いと思えるものがいいんです。自分でやるのも面白いだろうけど、そうではなくて、プロの方に自分の世界を描いてもらうとどうなんだろうな、と思った自分の欲望でもあります(笑)。

――マンガ・小説が好きだからこそ、プロへのリスペクトがあるんですね。

最初は本を書くのもおこがましいし、とんでもないって思ってたんですけど、まわりの方や担当編集の方が「これをやれば、絶対身になるから」と背中を押してくれたので、じゃあ私も腹くくって絶対にいいものを作ろうって思えました。皆さんのおかげで何とか形になったので、「感無量でおよよ~!」って感じすね。

出典: FANY マガジン

――今回の執筆は、いろいろ考えたうえでの決断だったわけですね。

タレントが書いている本って少なからず偏見があって、どんなものなんだろうって読んでくださる方もいるでしょうし、私を知っている方は手にとってくださる可能性もあって、それに甘えている部分もあります。ただ、それでうまくいくとも思っていないので、内容重視で頑張ったつもりです。

――最後に読者へメッセージをお願いします。

「タレントが、元アイドルが、イラストだけではなく、ラノベにまで手を出すか。こいつ、なんでも手を出すな!」って思われると思うんですけど(笑)、いい意味でも悪い意味でも「完璧主義」が私のモットーなので、妥協することなく、胸張って「私が書きました」と言えるものを作ったつもりです。どんな意見でもお待ちしておりますので、ぜひ手にとって1ページ、2ページ、欲を言えば最後まで読んでいただけたら嬉しいです。よろしくお願いします!

書籍概要

『夢にみるのは、きみの夢』

発売日:4月20日(火)
著者:三田麻央
イラスト:あおのなち
定価:704円(本体640円+税)
発売元:小学館 ガガガ文庫

ガガガ文庫の公式サイトはこちらから。