吉本新喜劇には、さまざまな才能を持った座員がいます。このたび、アートの才能に優れた座員が集結して、「吉本新喜劇美術倶楽部」として活動を開始。3月9日（木）～13日（月）に大阪・Laugh＆Peace Art Galleryで初の展示即売会『Spring ZUKKOKE Art Festival`23』が開催されることになりました。吉本新喜劇の座員であり、芸人ライターとしても活動する𠮷岡友見が会場に潜入し、作品を鑑賞、取材をしてきました！
「新喜劇美術倶楽部」の部員は、部長のボンざわーるどをはじめ、酒井藍、吉田ヒロ、松浦真也、金原鉢子(金原早苗)、小林ゆうというアートの才能あふれるメンバーで構成されています。ふだん一緒に新喜劇の舞台に立っている皆さんがどんな作品を創作しているのかワクワクです。
末成映薫の頭は制作に10時間かかる！？
一歩会場に入るとそこには、今回のメインビジュアルとなっている美術倶楽部部員をロボットキャラにしたイラストがあります。デザインを担当したのは部長のボンです。
今回、ボンはイラストのほか、家庭用３Ⅾプリンターで制作した座員のオリジナルロボットを展示しています。私物で３Ⅾプリンターを持っている人に私は初めて会いました（笑）。
座員の特徴をつかんだロボットたちに囲まれると、おもちゃの世界に迷い込んだ気分になる完成度です。「末成映薫姉さんの頭は制作に10時間かかるねん」ととんでもないことをさらりと言うボンに、吉岡は思わず「やっぱりボンさん、変な人や……」とつぶやいてしまいました。
酒井藍座長の“野望”が詰まった絵
個展経験のある吉田ヒロ、酒井藍の本格アート作品も目を引きます。
内場勝則、吉田ヒロ、辻本茂雄、石田靖の「４座長」を描いた吉田の作品や、座員の似顔絵を得意とする酒井の作品は、描く対象をふだんから身近で見ているからこその“そっくりさ”と“愛”があります。
なんばグランド花月をバックに全座員を描いた酒井の大作「笑いの殿堂」について、酒井本人が「笑いの殿堂を新喜劇座員で支配したかった、野望の絵でございます」とまさかのコンセプトを教えてくれ、集まった記者の笑いを誘いました。
キャラ設定の定まらない「金原鉢子先生」
松浦の作品も独特です。川などに生息する生き物プラナリアの形をしたペーパーナイフ「planari a.（プラナリアー）」や、方位磁石を甲羅につけた亀の「michishiru b.（ミチシルベ―）」など動物を生活用品に見立てて、お洒落で“クスリ”としてしまうものばかり。ギターだけではない才能を見せつけます。
筆者が個人的にファンで、インスタグラムもフォローし、アトリエにもお邪魔したこともある金原鉢子（金原早苗）の植木鉢アートは「興奮と背徳」「溢れ出す欲望」などタイトルからは想像つかないポップな作品です。“鉢子先生”は「脇役と思っていたもの（鉢）が主役（植物）に負けず劣らず個性を放つ姿が新喜劇と似ている」と教えてくださいました。ちなみに植木鉢に絵をかくときだけ現れる「金原鉢子」のキャラ設定はまだ定まってないとのことです。
ふだんからカラフルな物やレトロな物を身に着け、「今日も元気です！」が合言葉の新喜劇の元気印・小林は紙粘土を使い、「今日も元気です！星人アート」を展示。タイルを使って今日も元気です！星人のバスルームを作ったり、まさしく“頭の中を覗いてみたい”小林の世界観が爆発していました。
夢はアートでタワマン？
個展初日にはボンざわーるど、酒井藍、金原鉢子の囲み取材が行われました。
――まず、今回の個展に対する思いを教えてください。
ボン 新喜劇に入団して2年が経ち、新喜劇の座員をみていると、変わった人が多いんです。そんな人たちをアートにしたいと美術倶楽部を立ち上げました。
酒井 変わった人多いっていうのが気になりますが……（笑）。
ボン 頭の中が面白い人ってことです！
酒井 うちのボン部長が面白くて、かわいい人っていうのは知っていましたが、こんなに才能あふれる方だとは知らなかったです！ まさか3Dプリンター買って家でロボット作るなんて……。いちばん変わった人です（笑）。ボンさんの頭の中はハッピーであふれています。こんな優しい部長の優しさで包まれた個展、ぜひ観に来ていただきたいです。
金原 いまは金原早苗でなく金原鉢子です。3年前から個展を目指してやっと念願叶いました。私のインスタを見て部長は私を部員にしてくださったんですよね？
ボン 鉢子さんのインスタがあるの知らなかったです（笑）。
酒井 座員でフォローしているのは私と𠮷岡ちゃんだけです。2名だけです。それでも鉢子先生は3年前からブレずにやり続けています。
金原 そうなんです。今回、個展の夢は叶ったので、鉢を売ったおカネでタワマンに住むのが次の夢です。
酒井 そんなん、馬車馬のように作らなあかんやん！
すべてが個性、すべてが作品
――美術倶楽部の今後の展開は？
ボン 一般の方も参加していただいて、写生大会とかしたいです。松浦君にギター弾いてもらって……。
酒井 松浦兄さんは描かせてもらえないんですか！？ 部員やのに（笑）。しかし改めて、新喜劇でこういう取り組みはなかったので、本当に部長のおかげです。部長は新喜劇の小道具も作ったり、創作意欲がすごい。爆発しています。
ボン 僕だけじゃなく、座員のウラの顔をもっと広めていきたいですね。
金原 石田靖兄さんも部員になりたいとおっしゃってましたよ。
ボン 石田兄さんは暴れん坊なんで断りました。鉢子先生の作品とか壊されそう（笑）。
あと、千葉公平さんもロゴアートが得意で、「やりたい」と言っていました。アートには上手い下手ないし、すべてが作品だと思います。みんな個性。違和感あるところこそ伸ばしてほしい。ほかの座員も、いろいろ参加できたらいいですね。あと、『新喜劇』ならではの「なにこれー！」と子どもたちが喜んでくれるような、『ZUKKOKE ART』というジャンルを確立させたいです。
夢は大きく、座長のスウェットも大きく
――お笑いやめてアート1本でいく気はありますか？
ボン 僕はありそうですね……。
酒井 部長！ そんなことないですから！ 新喜劇やめないで！（笑）
金原 今後の展望としては、世界目指しましょ。
ボン 鉢子先生、タワマンとか世界とか……まだ個展1回目やで（笑）。
酒井 夢は大きくですね！
今回の個展ではボン部長がデザインしたステッカーやアクリルキーホルダー、クリアファイル、トートバック、スウェットといったグッズも販売されています。どれもこれも可愛くてコンプリート欲がそそられます。ちなみにスウェットは酒井のためだけに1枚、特別にXXLをボンが作ってくれたそうです。酒井は「部長はほんまに優しい……」とつぶやいていました。
筆者は会場に入ってからずっと「すごい」「可愛い」「楽しい」と言っていました。本当に素敵な個展です。そして、自分も「なにか作りたい」と創作意欲が湧き出るハッピー空間でした。新しいことを始めたくなる春にぴったり。みなさんもぜひ足をお運びください！
展覧会概要
『Spring ZUKKOKE Art Festival ’23』
日程：3月9日（木）～13日（月）
時間：13:00～18:00
定休日：毎週火曜・水曜
会場：Laugh & Peace Art Gallery
（大阪市中央区難波千日前3－15 吉本本館1F）
入場料：無料
Laugh & Peace Art Gallery公式サイトはこちらから。
