日本一面白い大学お笑いサークルを決めるお笑い団体戦『NOROSHI2023』の決勝戦が、3月16日(木)に東京・ルミネtheよしもとで開催されました。近年では次世代のお笑いスターが次々と輩出しているだけあって、観覧チケットは、なんと1分で完売という人気ぶり! 今年は全168組のなかから決勝に勝ち上がった8チームが熱い戦いを繰り広げ、会場は終始、熱気と大きな笑い声に包まれました。
『NOROSHI』は、漫才・コント・ピンの3組でチームを組み、学生芸人の最高峰を目指す大会で、今年で9年目。これまでもラランドや令和ロマン、ラパルフェ・都留、にゃんこスター・アンゴラ村長ら人気芸人が登場してきました。
「世間はWBCで盛り上がっているのに…」
昨年までに引き続きMCを務めたのは、お笑いコンビのジャルジャル(後藤淳平、福徳秀介)。ほぼ満席の客席を見渡した後藤は、「世間がWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)の試合で盛り上がっているなか、ここへきているお客さんは異常ですよ」といって笑わせます。
審査員は、バッファロー吾郎・竹若元博、とろサーモン・久保田かずのぶ、放送作家の遠藤敬氏の3人。昨年も審査員を務めた竹若は、「NOROSHIは、(出場チームの)ネタの発想がすごくよくて、こちらも刺激を受けるので、今年も楽しみにしています」と期待を込めて挨拶しました。
そして、いよいよ大会がスタート! 1組目は、早稲田大学お笑い工房LUDO「チーム新都心」です。先鋒を務めたピンの「ヒップ斎藤」は超巨大なヒップとともに登場し、さっそく爆笑をさらいます。また、漫才の「カイザー・ソゼ」は、数字を羅列する難易度MAXのネタを鮮やかにこなし観客を圧倒。トップバッターとして、見事に大会に勢いを付けました。
2組目は法政大学お笑いサークルHOS「チーム兄貴感謝」。コントの「虎ノ門」は音楽とアクションをセンスよく使い、バイオレンスなネタを軽やかに見せて笑わせます。また、ピンの「福来る」は“変人写真家”のネタで、不気味ながらクセになるキャラクターでインパクトを残しました。
3組目は一橋大学お笑いサークルIOK「チーム水彩フォーマルハウト」。漫才の「インサイド」は独特のボケとワードセンスが光る巧みなツッコみで大きな笑いを生みます。また、コントの「黄巾の乱」は男女混合の6人編成で、“歌声担当大臣”が登場する歌あり笑いありのネタを披露しました。
斬新な発想のネタが続々
4組目は明治大学お笑いサークル木曜会Z「supermarket romance」。コントの「うごメモ世代」は「望月亭大助ら」という6人組落語家のネタで勝負。また、ピンの「THE SENZAKI a.k.a THE」は、B’zの名曲に合わせてひたすらタップを踏むという、いずれも斬新な発想のネタで笑わせました。
5組目は早稲田大学お笑い工房LUDO「チームテネシー」。コントの「こるくぼーど」は、銀行強盗に入られたことであらわになる、男女のコンビニ店員の本性をユニークに描きます。ピンの「ミスター・サン・アントニオ」は、同じコンビニでも、電子決済時の音で遊ぶ不真面目な店員のネタで、チームで幅のある笑いを生み出しました。
6組目は決勝戦では唯一、女性のみの5人組で結成された慶應義塾大学お笑い道場O-keis「ダンス・チャンス・ロマンス」。“お母さん”を題材に独特なテンポで展開する漫才の「犬派」、魔女がシュールにフリップネタを披露するピンの「もみもじ」と、独自の個性を発揮しました。
7組目は創価大学落語研究会「赤組」。コントの「ピンキーブーツ」は男女コンビで、お嬢さまと執事の心の駆け引きを、どこか演劇のような雰囲気で描きました。ピンの「ダイナマイト入澤」は、ウルフルズの名曲『ガッツだぜ』にのせて、歌詞とは真逆の“根性ではどうにもならないこと”をフリップで連発。爆笑をさらいました。
最後の8組目は慶應義塾大学お笑い道場O-keis「チーム空島」。4年生コンビの「モザンレーション」は“カンニング”をテーマに動きと勢いのある巧みな漫才を披露。大会の大トリとなった「半谷守備職人」はフリップを使ったランキングネタで、“国家予算の使い道”から“男子が言われてうれしい言葉”まで、緩急をつけながらパワフルに展開し、最後に爆発的な笑いを得ました。
「粗削り」に勝るキラキラした情熱が魅力
すべてのネタが終了し、いよいよ審査へ。順位は3人の審査員票と会場の客席投票で決定します。集計の結果、168組の頂きに立ったのは慶應義塾大学お笑い道場O-keis「チーム空島」! メンバー5人は舞台の上を跳ね回って喜びました。
惜しくも準優勝となったのは一橋大学お笑いサークルIOK「チーム水彩フォーマルハウト」。3位は同率で法政大学お笑いサークルHOS「チーム兄貴感謝」と明治大学お笑いサークル木曜会Z「supermarket romance」が続きました。
また、「チーム兄貴感謝」は、最も審査員票を集めた「審査員特別賞」にも選ばれました。
最後に、3人の審査員が総括を。
「粗削りなところもありましたが、それに勝る情熱がたくさん見られたので、素敵な瞬間でした。そのキラキラしたものを、これからも失くさずに磨いてみてください」(竹若)
「僕はここ(審査員特別賞の「チーム兄貴感謝」)が頭2つくらい出ていたと思うのですが、(ピンの)「福来る」くんに全部持っていかれましたね。サイコパスな感じのなかにアートがある。冷静に考えたら、こいつおかしいよなと(笑)。でも、皆さんすごいなと思いました」(久保田)
「どのチームも本当に面白かった。最下位のチームも全国168組の中の8組に選ばれているわけですから、自信を持っていいと思います。2年前に開催中止を余儀なくされましたが、そのときに『本当に頑張って笑いをやってきたので、決勝だけでもやってほしい』という学生さんたちの声を聞いていました。そんななか、今年はこうして開催できて本当によかったと思います。やはり、プロにはないアマチュア精神というか、学生のスポーツを観ているような熱い熱気が、演者にも、お客さんにもあって感動しました。これからもこの感動のイベントを続けていってほしいと思います」(遠藤)
「会場のウケ具合や一体感がすごい」
大会終了後に、MCの後藤と優勝した慶應義塾大学お笑い道場O-keis「チーム空島」が囲み取材に応じました。
数日後に卒業を控え、今回の大会を最後にお笑いを辞めて就職するという髙橋海さん。これまでの大会も振り返りながら、「3年生までは準決勝までも上がれていなかったので、優勝できてうれしかったのと、お笑いでいい思いができてよかったと思いました」と笑顔で語りました。
また、そんな髙橋さんと下島さんのコンビ・モザンレーションに、大学入学前から憧れ続けてきたというピンの半谷守備職人さんは、「ずっと背中を追いかけていたのに、勝てていないモザンレーションを見てきたので、勝たせたい一心でした。今日は最高の瞬間を味わえて、めちゃくちゃ嬉しかったです」と感動的に語りました。
盛り上がりが加速するNOROSHIをMCとして見続けてきた後藤は、今回の大会を終えた率直な感想をこう語りました。
「年々レベルが上がって、規模も大きくなって、会場のウケ具合や一体感もすごいですし、どこまでいくんだろう、NOROSHI、という感じはします。もう“素人大学生の大会”というアマチュアのイメージではなく、いまやNOROSHIを卒業して、そのままプロで活躍する人も増えてきています。NOROSHIが今後、どこまで大きくなるのか、MCをしながら楽しみです」
また、髙橋と同じく4年生の下島は、大会途中のインタビューで、もしも優勝したら、優勝者特典であるNSC(吉本総合芸能学院)特別奨学金でNSCに入学したいと意気込んでいましたが、「留年してしまったので……」とポツリ。後藤に「もう1年、大学生やるの?」と驚かれると、春からは大学生とNSCの2足のわらじで頑張りたいと意気込みました。
最後に、お笑いの道に進むメンバーへのアドバイスを求められた後藤が、エールを送ります。「NOROSHIの決勝戦に出ていたメンバーが吉本に入って、ルミネの舞台の前説をしていたりするので、絶対にまた会うことにはなると思います。ヒナが初めて見た相手を親だと思うように、僕らはどこまでいっても彼らにとって偉大な先輩だと思います(笑)。今後を楽しみにしています」