世界自然遺産への登録も見込まれている、沖縄本島北部「山原(やんばる)」で2017年から毎年行われている地域芸術祭『やんばるアートフェスティバル(以下、YAF)』。今年も1月23日(土)から2月21日(日)まで、アート作品の展示やワークショップが楽しめるイベントを実施中です。
舞台となるのは大宜味村立旧塩屋小学校を中心に、国頭村、名護市などのホテルや商店街など。アート作品の展示やクラフトの展示販売、ワークショップ、関連イベントなどをし、のべ18万人ほどの来場者数を誇ったイベントは世界中から注目を集め続けています。
自然豊かな沖縄県北部で開催されるアートフェスティバル
やんばる地域の魅力に触れることができる、廃校舎や地域の施設を開催会場とし、アートをキーコンテンツとすることで、新たな観光客の誘客に繋げ、やんばるの観光資源を世界へ発信する同フェスティバル。
4回目を迎える今年のテーマは、「山原知新(やんばるちしん)」。総合ディレクターであり、写真家・映像作家でもある仲程長治の「今年は人類にとっても大きな転換の節目となったが、本フェスティバルにおいても『古きを訪ね、新しきを知る』機会としたい」という思いが込められています。
YAFでは、国内外にて第一線で活躍するアーティストが、沖縄・やんばるでしか制作発表できない新作や、やちむん(陶器)や琉球ガラス、紅型など注目商品を揃えた、やんばるアートフェスティバルならではのクラフトセレクションをご覧頂けます。
「エキシビション部門」に21組、沖縄の工芸品を展示販売する「クラフト部門」に20組が参加しているほか、オンラインで楽しめるインスタレーションビュー、期間中開催されるアーティストパフォーマンス、トーク、ワークショップなどのイベントも随時配信される予定となっており、盛りだくさんの内容となっています。
ファニマガでは、アーティストとして参加したジミー大西に話を聞きました!
沖縄は赤と金のイメージ
嵐のような天気となった開催前日。
ジミー大西は、窓をキャンバスに白のマーカーで、窓から見える荒れ狂う自然を描いていました。来年、作家として30周年を迎える彼の胸の内はいったい……?
—めんそーれ(ようこそ)沖縄へ。沖縄は何回目になりますか?
もう10数回は。沖縄返還(1972年)より前から、パスポート持ってきてました。
—沖縄のどんな部分に惹かれますか?
やっぱり海。僕は世界中の海をみてきましたが、沖縄の海が世界一なんやないかと思う。
僕の絵にはブルー、白は欠かせない。海の色の変化、景色の見え方も違ってくるのが面白い。
今回のお天気は最悪だけど(笑)。僕のカラフルな絵で元気になってくれるといいです。
—新作もたくさんありますね!
これなんかね(ギターに絵を描いた作品を指差しながら)、BEGINさんがインスピレーション。僕もやってみたいと思って描いてみた。
沖縄っぽい南国っぽいイメージを散りばめた。削りながら色(アクリル)を乗せているんだけど、見るよりも時間はかかっているんです。時間がかかる分、日によって、自分の見ている色の違いもあるので。
—来年は作家30周年という節目ですが、ご自身で技法などに変化は感じていますか? ジミーさんのカラフルな色づかいは、太陽が眩しい原色が映える沖縄でなお映えますよね。
年代によって技法が変わっていることは確か。腕がない分、自分の絵の表現、時代を、技法で変えています。
沖縄の色って、赤とか金のイメージがあります。これなんか(赤と金色の額縁の龍の絵を指差して)、まさに沖縄っぽいと、この(YAF)ために選んでもってきたものです。琉球の「りゅう」です(笑)。赤って絵だけじゃなく、琉球ガラスもそうでしょう? 出すの難しいんですよね。
—小さい作品も壁に散りばめられていますが、よく見ると本当に細かいですね……!
これは実は「かるた」を作ろうとはじめたものなんです。途中でやめちゃった(笑)。裏にかるたの言葉も書いてあるんよ。
—別会場で、カーペインティング作品も手がけられていますが、モチーフは2004年の作品。昔の自分の作品を別の形でやることは、どんな想いでしたか? 今回のYAFのテーマである温故知新にかけた山原知新のコンセプトにも合っていますよね。
ありがとうございます。やっぱり自分の、ひとつの分身がそういう風に進化するのはうれしい。育ったなあというか。
自分の描き方も変わった気もしますし、実際、色に対するグラデーションの技術を得たり、やっぱり技術で変化がわかる。
自分の生きてきた時代を感じることができます。
—先ほどのギターもそうですが、立体作品の面白さについても教えて下さい。
裏側まで描くのは大変だけれど、立体には立体の面白さがある。この胸を型どったブレストキャストなんかは、裏側を描くの大変だったけれど、面白かった。これは乳がんの早期発見啓発を呼びかけている団体のアートイベントのためにつくったものだけれど、レディ・ガガのではないですよ(笑)。これは『がじゅまる』というタイトル。根っこのくねくねを表現しています。最近は、絵の中に立体を取り入れた作品も手がけています。今回新作として持ってきました。これこれ(作品を指差しながら)、氷山とペンギン、シロクマは立体で白いんやけど、周りは大都会のイメージ。大都会から南極に行くイメージ。
—最後に今回の展示「Nature Land」では、来てくださる方にどんなところを一番見てほしいですか?
額の素晴らしさを見てほしい(笑)!
お金かかってるよ、絵より掛かっている(笑)。(まじめな話)額はバカになりません。絵を持っていくと額のイメージをしてくれた、作品をつくるうえで一緒にコラボレーションしてきた額縁屋さんが、実はこのコロナ禍で廃業してしまった。
額屋さんは職人さんやね。だから額を見てください(笑)。
なお、本年度のYAFはオンラインでも楽しめるコンテンツを多数実施するのだとか!
やんばるアートフェス会場や展示作品がオンラインで楽しめるインスタレーションビュー、期間中開催されるアーティストパフォーマンス、トーク、ワークショップなどイベントも随時配信される予定です。
今回は遠方からご来場が難しいお客様も楽しめるオンラインコンテンツが充実されるとあり、更なる注目が集まっています。
やんばる地区は、観光都市として栄えた沖縄南部とは異なる、独自の魅力を持っています。ヤンバルクイナなどに代表される希少な動植物や、現代まで受け継がれている伝統芸能や祭祀は原始的な魅力を放っており、近年ではスピリチュアル・スポットを求める若い方や女性にも人気のエリアです。
アートやクラフトを周遊しながら、是非やんばるという地域の魅力も体感・体験してみてくださいね。
取材・文=板谷圭
イベント概要
『やんばるアートフェスティバル 2020-2021 山原知新』
開催期間:2021年1月23日(土)~2021年2月21日(日)
開催場所:沖縄本島北部地域の各会場
大宜味村:大宜味村立旧塩屋小学校
国頭村:辺土名商店街・オクマ プライベートビーチ & リゾート
名護市:オキナワ マリオット リゾート&スパ カヌチャリゾート 名護市民会館前アグー像ほか
料金:入場無料
総合ディレクター:仲程長治
エキシビション部門ディレクター:金島隆弘
主催:やんばるアートフェスティバル実行委員会
共催:大宜味村、島ぜんぶでおーきな祭
後援:沖縄県、国頭村、東村、名護市、ほか
助成:文化庁/独立行政法人日本芸術文化振興会
最新情報や詳細などは、ホームページをご確認ください。
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