ロザン菅の新著『京大中年』をコンビで分析! 宇治原「とても読みやすくて、とても面白くて、ちょっとためになる本」

“高学歴コンビ”ロザンの菅広文が、相方の宇治原史規を題材に描いた小説シリーズの最新作『京大中年』(幻冬舎)が6月8日(木)に発売されました。ベストセラー『京大芸人』の続編『京大少年』の発売から14年が過ぎ、いまや2人は中年の域へ。今回はロザンの日(6月3日)にちなんで、コンビ揃ってインタビューを敢行! 久しぶりの作品を菅はどんな思いで執筆したのか、そして宇治原はどう読んだのか、根掘り葉掘り聞き出しました。

出典: FANY マガジン
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『京大芸人』(幻冬舎文庫)、『京大少年』(同)は、“高性能勉強ロボ・宇治原”がどのように育ち、いかにして京都大学に合格し、そして2人がなぜ芸人になったのかを、相方の愛あふれる視点から小説化したものです。

今回の『京大中年』は、菅が過去の宇治原と自分に手紙を出すというユニークな構成。過去と現在を繋ぐ手紙を通して、“京大芸人式”の思考と仕事術をひも解きます。「好きな人との好きな仕事を続けていくには何が必要か。どう生きるべきか」を、爆笑しながら学べる1冊です。

宇治原「作家としてのスキルが上がっている」

――久々の新作となる『京大中年』を書いた経緯を教えてください。

 14年間ずっと書いてたとか全然そんなことはなく。『京大芸人』『京大少年』で宇治原さんの勉強法を書かせてもらっていたんです。でも、仕事のことも書きたいなと思いつつ、30代のときはまだ仕事のことを書くのもおこがましいかなと。ここに来て40代後半になって「もうそろそろ書いてもいいかな」と思い、書き始めたんです。なので、今年に入ってから書き始めて一気に書いた感じです。あと、いま(投稿サイトの)noteもやらせてもらっていて、そこでけっこう、毎日書いていたので、それも(本を書く)きっかけのひとつやったかなと思います。

出典: FANY マガジン
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――過去の自分たちに手紙を出す形というスタイルはユニークですね。

 『京大芸人』を書いたとき、(担当編集者から)「とりあえず最後まで絶対に書いてください」と言われていて、それが僕のなかで頭に残っていて……。本を書くときは、いかに最後まで書けるかってことをまず始めに考えてから書くようにしています。だから「ぜんぶ書けるには、どういう手法がいいかな」と考えて思いついたのが“手紙”やったんですよね。

――宇治原さんは、もう読みましたか? 

宇治原 はい、読みました。面白かったです。『京大芸人』を読んだときは、ただただ面白いなと。で、『京大少年』を読んだとき、わりとテクニカルに書いている印象があって。それが今回3作目で、両方の良さを合わせてあるなと。
実はまだ菅さんにも言ってない感想なんですけど、『京大芸人』のときの面白さを損なうことなく、テクニカルな書き方もしてて、いままでの2作を「織(お)った」。えらそうな言い方になるんですけど、おそらく作家さんとしてのスキルが上がっていっているんだろうなと感じました。

――この感想を聞いて、菅さんいかがでしょう?

 ……「黙れ!」と思いました。

宇治原 ふはははは(爆笑)。ここまで書いてな! ちゃんとここまで! 菅さんがこう言ってくれると思って、こっちもしゃべってますから!

 FANYマガジンだし、言ってもええかなと(笑)。でも、もちろん率直にうれしいです。

出典: FANY マガジン
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――宇治原さんが指摘したところは実際、意識していたんですか?

 いや、正直さすがやなと。実は、そこはそうですね。映画監督の新海誠さんの作品もけっこう好きで、『君の名は』が面白かったんですけど。それ以前の作品も見てみると、いろいろ自分のなかでやってきたことを、『君の名は』という作品の中で結び付けたんやろうなと。まぁそれこそ、僕のほうこそ、あちらからしたら「黙れ」なんですけど(笑)。
でも、おこがましいですけど、自分のなかではそれに感覚が近い。これまで書いてきて、この部分は良かったな、この部分はいらんかったなというのを。自分のなかで物差しみたいなんがあって、それを表現できたのがこの『京大中年』かなと思います。

宇治原の人生を肯定したかった!?

 「学校の勉強って社会に出てから役に立たない」みたいなこと言われますけど、僕はそれに否定的で、「いやいや、学校の勉強は役に立つよ」って提示したかった。そこは軸にしてますね。あと、宇治原さんの人生を肯定したかったみたいなのもある。

――え! 宇治原さんはご自身の人生を肯定していないんですか?

宇治原 肯定してますよ! 当たり前じゃないですか! 

 わははははは。

宇治原 確かに、いまの感じだと「あんなに否定されている宇治原の人生を、僕は肯定してあげたかった」みたいな感じありましたけど(笑)。

出典: FANY マガジン
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 やっぱり思うのが、きっちり勉強した人っていい意味で要領がいいというか。勉強してきたことってダイレクトでなくても、そういう形で社会に出てから絶対に役立っているはずなので。どっかでみんな(学校と社会を)分離して考えるところがあるなと思うんですけど、僕らはそうじゃなかったですよと。みんながみんな当てはまることを書きたかったのではなくて、「僕らはこうでしたよ」と言いたかった。

宇治原 よく講演会させてもらったりもするんですけど、そこでほんまによく聞かれるんですよね。「三角関数いつ使うねん」とか、「学校卒業してから一度も使ってない」とか本当によくある。
でも、そういう使い方ではないと思っている。数学的思考、国語的思考、社会的思考、これって脳みその使う場所が違って、つながりつつも作用する場所は違うという感覚。学校の授業は、そういういろんな思考を使うというトレーニングをしている。三角関数をそのまま使うのではなく、三角関数で使っていた脳の使われ方ができれば、社会に出てから仕事をしたときに、なにがしかの役に立っているという感覚なので。
そういう意味で、きちんと5教科をバランスよく学生時代にやっているというのは、バランスよい思考ができるようになるわけで、社会に出てから役に立つと言えるわけですよね。

出典: FANY マガジン
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菅「5年後くらいに育児本を出したい」

――タイトルは「中年」ですが、おふたりとも中年を感じる瞬間はありますか? 見た目はぜんぜん変わらない気がしますけど。

宇治原 ……イジってんすか?(笑)

 そうですよ。(宇治原を見て)こんなもん、別人ですよ(笑)。

宇治原 僕、15キロ太りましたからね。正直、中年というより、僕に関しては初老ですよ(笑)。

――過去の自分と今の自分で、いちばん変化した部分はどこでしょう。

宇治原 うーーん、むかしはイジられてOKな人間性ではおそらくなかった。でも、いまやみんなフリー素材ぐらいにイジって来よるんで(笑)。ただ、まぁそれが自分の中でもぜんぜん嫌じゃないというのは、もともとそうだったのかなという気もする。

 僕はどうなんやろう。どっかのタイミングで、「こうかな? ああかな?」と考えなくなった。ある程度、定まってきた感覚があって。「今回はこれを選ぶけど、次はこれを試してみよう」みたいなのが、なくなってきたかもしれませんね。

出典: FANY マガジン
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最近、取材とかちょこちょこ受けてて。自己分析じゃないけど、そういう感じで自分たちのことを考えることがあるんですけど。僕ら2人ともけっこう適当なところがあって、世間が思っているような人間性の2人でもないんです。「まぁええか」みたい部分が2人ともけっこうあって、要は遊びが多い。そのために「芯」を作っているところがあって。その芯さえブレなかったら、ほかはどう遊んでも大丈夫ですよっていうところがあるのかもしれないです。
もちろん性格は2人とも違うし、凸凹なところもあるけど、根本の部分は2人ともそれでつながっているよなというのは感じるようになりましたね。

――いままでの本はベストセラーになりましたが、今回の本も狙っていますか?

 たぶんね、そんなんもなくなったというか。おカネとか部数とかより、「次、なに書こうかな」という気持ちのほうが大きい。もちろん売れてくれたほうがいいですけど。

――次回作の構想は?

 すでにいくつかあって。「中学歴の戦い方」とか。あと自分が親になったのもあって(2021年11月に第1子誕生)、育児本を5年後ぐらいに出すやろうなと。育児本って成功した人が書くじゃないですか? そんなんじゃなく、何にもない状態で書く育児本もおもろいかなと。

宇治原 何も成し遂げてないやつが(笑)。そんなん日記やん。

 ふはははは。あとはもうひとつ、小説みたいなんを書こうかなとも思ってます。

出典: FANY マガジン
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――最後に、この本が読みたくなるようなメッセージをお願いします!

宇治原 そうですねー。……なんやろうな、(しばし考えて)読みやすいですよ~(笑)。

 ふはははは。

宇治原 菅さんが意図してやっているかはわからないんですけど、菅さんの文章ってむかしから読みやすい。やっぱり本っていま、とっつきにくいものみたいなイメージになっている気がして。でも、この本はとても読みやすくて、とても面白くて、ちょっとためになる本です。

――では、菅さんは?

 FANYマガジンですから、そこに興味ある人も多いかなということで……ロザンならではの闇営業の切り口について書いてます(笑)。それは冗談として、気軽な気持ちで読んでみてください!

書籍概要

『京大中年』
著者 菅広文
発売日:6月8日(木)
発売:幻冬舎
定価:1,760円(税込)
判型:四六判並製

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