桂文枝の大阪市24区創作落語プロジェクト『参地直笑祭in阿倍野区』が、6月10日(土)に開催されました。桂三語や阿倍野区にゆかりのあるシンクタンク(近江のこかじろう、タンク)、ビコーン!(樋口秀吉、前田志良)も登場。会場の阿倍野区民センターには多くのお客さんが詰めかけ、落語、漫才、トークを楽しみました。
2018年3月に住之江区からスタートした「参地直笑祭」は、大阪市と吉本興業が地域活性化などを目的に締結した包括連携協定に基づいたプロジェクトで、文枝が大阪市24区それぞれの特色を盛り込んだ創作落語を作り、地域の魅力を発信しています。コロナ禍による3年間の休止を経て、今年2月に再開。今回で第14弾を迎えました。
80歳までカウントダウン
前説には、区内に23年間住んでいるという「阿倍野区住みます芸人」のビコーン!が登場。身長144センチの小柄な前田がカバンの中から飛び出す得意の大道芸で、相方の樋口とともに会場を盛り上げます。
そして会場があたたまったところで、文枝が登場。「参地直笑祭」では毎回、現地に何度も足を運んでネタ探しをする文枝は、「阿部野区は縦長で、場所によって特色が違うので大変だった」と振り返ります。
来月の7月16日(日)に80歳を迎えることを文枝が話すと、会場からはひときわ大きな拍手が。最近は午前中に病院に行って点滴を打って、万全の状態で公演にのぞんでいるとのこと。
「あと10区も残ってる。(ネタを)覚えられない…(笑)」と嘆きながらも、「元気でいられることはありがたい」と感謝しました。
続いてシンクタンクの漫才。阿倍野区に住んでいたことがあるというタンクは、ネタの中に住んでいたマンションや通っていたスーパーの名前を盛り込みます。「スーパーの隣の鶏屋さんまだあるかな……?」と懐かしむと、客席から「ある! ある!」という声が上がり、地元のお客さんは大盛り上がり。芸歴30年を迎える熟練のしゃべくり漫才で笑わせました。
文枝の弟子である桂三語も創作落語を披露。「最近の日本は、なんでも横文字ばっかり!」と嘆くテーマで、外国人観光客が増えている賑やかな街の様子を、英語を織り交ぜた名調子で口演しました。
師匠・五代目文枝の幽霊が枕元に現れて!?
そして、いよいよ文枝による創作落語のお披露目です。ブルーの夏らしい衣装で高座に上がった文枝。マクラで「わたしの師匠である、五代目文枝は実は阿倍野区と縁があるんです」と、阿倍野区で執り行われた師匠のお葬式での珍事件や、師匠と行った海外旅行の思い出などを話しました。
そして、師匠の幽霊が文枝の枕元に現れ、「駆け出しのころにお世話になった『王子商店街』の落語をつくって、商店街を盛り上げてくれ!」と懇願されたところから本題へ。
噺のなかで、「王子商店街」の人々は、以前ほどの活気がなくなってしまった商店街を盛り上げるために卓球チームをつくります。世界大会で優勝すれば商店街が有名になるという算段。実在する卓球教室や美容室、花屋などの人物が練習や試合に奮闘する様子が描かれ、会場は爆笑の連続に。見事なサゲがきまると、どよめきとともに拍手が起こりました。
公演3日前に完成
エンディングでは、文枝が阿倍野区の山田国広区長を迎えてトークタイム。中学生のときに卓球部に所属していたという山田区長は文枝の創作落語について「縁を感じました」と笑顔を見せ、「今日の落語のように商店街を盛り上げていきたい」と話します。
文枝は、実際に区内にある「桃ヶ池卓球クラブ」を訪れ、卓球をしたそうです。数カ月にわたる取材・制作期間を経て、公演3日前に完成した噺は「しあわせの商店街」と題され、自身316作目の創作落語になりました。
今年、区制80周年を迎えた阿倍野区は文枝と同い歳。文枝は、「これから阿倍ちゃんと呼びます(笑)」と親しみを込め、「商店街は街の歴史。みんなで応援しましょう!」と呼びかけます。山田区長は、「阿倍野区は、歴史ある町並みと(あべの)ハルカスなどの近代的な施設が融合した南の玄関口。万博に向けてもっと盛り上げていきます」と力を込めました。