上方漫才協会会長の中田カウスが主宰し、選りすぐりの旬な漫才師たちを引き連れて全国をまわる本格漫才寄席『漫才のDENDO』の記念すべき100回目公演が、7月30日(日)に大阪市中央公会堂で開催されました。この日もプラス・マイナス、もりやすバンバンビガロ、和牛、アインシュタイン、ミルクボーイ、すゑひろがりず、見取り図、ミキ、天才ピアニストという人気芸人たちが出演。終演後の会見では「47都道府県に漫才劇場ができたらいい」とアツい展望が語られました。
ネタとトークで芸人の魅力全開
横山エンタツ・花菱アチャコが創り出し、吉本興業が観客とともに育んできた“漫才”という話芸。『漫才のDENDO』はその精神を受け継ぎ、カウスを中心に全国に笑いを届けてきました。
オープニングでカウスは、「47都道府県を2周ともうちょっとしてきた。大阪へ帰ってきて中央公会堂でやれるのは芸人として幸せ」と挨拶。昨年4月に110周年を迎えた吉本興業と漫才の歩みを振り返りながら、イベントの開幕を告げました。
前半は天才ピアニスト(竹内知咲、ますみ)、ミキ(亜生、昴生)、すゑひろがりず(南條庄助、三島達矢)、プラス・マイナス(兼光タカシ、岩橋良昌)の4組が、それぞれ渾身の漫才を披露して客席を沸かせました。
そしてもちろん、『漫才のDENDO』のお楽しみである、カウスと出演者のトークコーナーも。この日はカウスがプラス・マイナスの素顔を、軽快なトークで引き出しました。
「何キロあるの?」という質問から始まった岩橋のダイエットをめぐるウラ話には、会場から驚きの声が。そして岩橋の「やったらあかんことをやってしまうクセ」にまつわる衝撃のエピソードも次々と飛び出します。一方の兼光は、得意のモノマネをしっかり披露。カウス本人からカウスのモノマネをムチャぶりされて、即興で応えるひと幕もありました。
後半も、爆笑ネタが目白押し。「上方漫才協会大賞」に新たに創設された「劇場賞」を受賞したもりやすバンバンビガロは、諸芸ジャンルから参戦。さらに見取り図(盛山晋太郎、リリー)、ミルクボーイ(駒場孝、内海崇)、和牛(水田信二、川西賢志郎)、アインシュタイン(稲田直樹、河井ゆずる)が続々と舞台へ上がり、息つく間もなく笑わせます。
後半戦でカウスとのトークに臨んだのはアインシュタイン。カウスは稲田に「稲ちゃんはどこに住んでるの?」と突っ込んだ質問を繰り出したかと思うと、時事ネタまで盛り込んで爆笑をさらいます。その後も稲田の増毛秘話や天然エピソード、河井の実家ネタなど、途切れることのないトークを繰り広げました。
エンディングでは出演者が舞台上に勢ぞろい! 客席からは再び大きな拍手が送られ、2時間を超える見応えたっぷりのイベントは幕となりました。
「地方では鉄板ネタで必ずウケなさい」
終演後の記者会見には、カウスを筆頭に出演者全員が登壇。まずはカウスが『漫才のDENDO』を始めたいと思ったきっかけと、100回目を迎えた心境を語ります。
もともと2012年にABCテレビで始まった演芸番組『漫才のDENDO』で、レジェンド芸人たちの秘蔵映像や音声を紹介しながら、漫才の歴史と魅力を掘り下げてきたカウス。それが2013年からイベントへと派生し、現在まで全国各地の観客を楽しませてきました。
カウスは「全国各地に行くと、『一度、NGK(なんばグランド花月)に行きたい』『漫才を生で見たい』という人がいっぱいいる。それなら全国に漫才を届けたい……という思いでツアーが始まった」と振り返ります。
100回まで続いたことについて、芸人やスタッフに感謝しつつ、「見えない力が働いたんやなあ。それは先輩芸人さんのおかげだと感じている」と話すと、「このあとは、君たちがこれを受け継いでいかなあかん」と若手たちに声をかけました。
カウスから「『漫才のDENDO』の楽しさは、どういうところにあると思うか」と聞かれたプラス・マイナス・岩橋は、「各地方へ行って、ふだん(漫才を)見られない方の前で披露させていただくのは、しっかりウケないといけないのでピリッとする」と話しました。
一方、ミルクボーイ・内海は、漫才のつかみでおなじみの、お客さんからモノをもらうくだりについて、「地方に行けば、そこのご当地のものを言えばそれだけでウケる。楽勝ですわ。最高です」とニヤリ。
ミキは、昴生が過去の舞台でカウスから「地方のお客さんには、必ず鉄板ネタをして、必ずウケなさい」と言われたことを振り返りながら反省。その横で亜生は、じつは『漫才のDENDO』ツアーに必ず釣竿を持参していることを明かし、当初は「怒られるかも」とカウスに内緒にしていたところ、あるとき移動のバスに乗り込むと「何匹連れた?」と話しかけられた、と嬉しそうに語りました。
日本国中を隅々までまわりたい
和牛・川西は、カウスがトークで「どこで仕入れたんやろう?という情報を投げかけてくる」ことに驚きを隠せません。水田がヨガに通っていることも知っていて、当の水田も「短期間やったし、そんなに人に言ってなかったのに……」と不思議顔です。そんな水田は、「トークのときにちょっと高い椅子に座るんですが、あれが座りづらい」とぶっちゃけました。
また、ふだんから若手のネタを舞台袖からチェックしているというカウスですが、見取り図・盛山は「コロナ禍でアクリル板を挟んで漫才しているとき、板に映った下手の袖のカウス師匠が、ゴルフのパターの練習をしていた」とまさかの暴露!? これにはカウスも思わず爆笑です。
リリーは『漫才のDENDO』を通じて、カウスから漫才師としての魂を完全に受け継いだと豪語すると、「いつか弟子をとることがあれば、勝手に中田の屋号をあげる」とぶち上げました。
最後は、カウスが今後の展望を語りました。
「まだまだ行ってないところがあるので、隅々まで日本国中をまわりたい。そして、47都道府県、その街に見合う漫才劇場ができればいいなと思うので、今後ともよろしくお願いします」