トータルテンボス“円熟味漫才”の現在地「今回の単独ライブの結果いかんでは…」

お笑いコンビ・トータルテンボス(藤田憲右、大村朋宏)が、11月に単独公演『背広の合うふたり』を東京と大阪で開催します。『爆笑オンエアバトル』3大会連続チャンピオン、『M-1グランプリ』での活躍など、いわゆる競技漫才でのしあがってきた彼ら。年齢を重ねて“背広の似合う2人”となったいま、さらなる進化を遂げているのをご存知でしょうか。漫才師としての「現在」と「これから」を聞きました。

出典: FANY マガジン

彼らの真骨頂である新ネタ漫才と、新イタズラVTRを引っさげて開催する単独ライブ。大阪・なんばグランド花月と東京・ルミネtheよしもと(オンライン配信あり)という東西の“笑いの殿堂”で、ベテランの域に差し掛かった2人の“現在地”が堪能できる公演となっています。来年、芸歴25年を迎える彼らが話し始めたのは、2人の漫才の“新たな領域”についてでした――。

世代を問わない漫才に挑む

――芸歴25年間近で40代中盤となり、ますます円熟味のあるネタが楽しめる内容になりそうですね。

大村 ベテランならではの漫才をお見せできるんじゃないかなと思いますね。

藤田 この間、久しぶりにネタ番組に出たとき、MCの今田耕司さんからも言われたんですけど、ポジションがベテランの域になったんだなって思います(笑)。確実に若手ではないですし、中堅も通り越している感じ。漫才に円熟味を出していくべきだなって。

――オンエアバトルやM-1のころとは、まったく違ったスタイルに?

藤田 ぜんぜん違いますね。いま、(M-1のようにネタ時間が)4分だとちょっとキツいですもん。やっぱり8~10分くらいのゆったりとした間(ま)をとってやりたいです。

出典: FANY マガジン

大村 世代関係なく笑っていただくネタって難しいなって思います。いかにこれまで狭い範囲の人たちに向けて漫才をしていたのか、と思い始めたのが2、3年前。そこから徐々に若い人から年配の方まで笑っていただくネタを作ろうとはしていますけど、なかなか……。完璧に取りこぼしなく笑わせているかと言われれば、“まだまだだな”っていう日々ですね。特に若い子を笑わせることが難しくなってきている。どうしても、出てくる“たとえ”が伝わらないというか。

藤田 そうなんだよなー。いまのたとえが絶対的に古いものばかりなんだよなー。

大村 でも、“わかる人は絶対に面白いんだよな”っていうせめぎ合いというか。全員が知っているたとえを出したとて、響かないでしょうし……。そこは、すっげー難しいですね。満遍なく笑わせたうえで深く刺さるネタって、究極の課題ですもん。

――藤田さん自身は、ツッコミとしての表現や言い方に変化を感じますか?

藤田 ツッコミの仕方自体はそんなに変わってないと思うんですけど、あえて若い人の言葉を使っていますかね。この間、「えちえち」という言葉を使ったんですけど、それって若い人たちに合わせて言っているというよりは、「じつはダサいんだよ」っていうアンチも込めながら言っているところはありますね。

大村 まぁでも、ツッコミ方は変わってきていると思いますけどね。競技漫才をやっていたころは、ガムシャラに全身全霊で吠えているイメージがありましたけど、いまは緩急というかね。藤田は「ハンパねぇ!」みたいなイメージですけど、本来の彼の気質は、すごくスローペースでローテンション。言葉の使い方でくすぐらせる感じですかね。
いまは昔の雰囲気も残しつつ、本来の彼の雰囲気も合わさっているから、より緩急がハッキリ出せる。おっさんになってガンガンいくのも1周回って面白いので、年を取れば取るほど「僕に振り回されてムキになるおっさん」という構図が面白くなるんじゃないかなっていう気がします。

出典: FANY マガジン

お客さんを制圧できるかどうか

――今回は、足を運べない人たちのためにオンライン視聴もあります。

大村 もちろん劇場で観ていただいたほうが何倍も面白いと思うので、そちらを推奨しますけど、場所的に来られない方は、ぜひオンラインで楽しんでほしいです。ただ、生の観覧とオンラインは別物なので、どうしても行けない場合の保険の保険的な感覚で思っていただきたいです。劇場の価値っていうのは、“行かないと観られない”というものですから。

藤田 値段でいえば2,500円の差があるんですけど、生はそれどころの差じゃないよな。もっとあるよな。

大村 充実感・幸福度・満足度は高いだろうね。熱量の伝わり方が違うかな。

――たくさんのお客さんの前で漫才ができる喜びも感じられそうですね。

大村 たくさんのお客さんの前でやることが久しくないので、そこも“大丈夫かな?”っていう気持ちはありますね。いきなり(客席に)ブアーといて。

藤田 オロオロしちゃいそうだよな。

大村 この感覚久しぶりだなー!って、震えちゃうかもしれないですね。

出典: FANY マガジン

藤田 言い方は悪いですけど、舞台に出ていったときに“制圧できるかどうか”というのがあって。客席が(ソーシャルディスタンスで)まばらのときは余裕で制圧できるんですけど。満席のときは“制圧できるのかな?”って、グッと引き締まるというか……。

大村 こっちの空気にできるかな?って思うよな。

藤田 ネタがどうこうというか、目に見えない感覚というかね。

大村 その感じわかる。

親として息子に思うこと

――大村さんは息子の晴空(はるく)くんが『千鳥のクセがスゴいネタGP』(フジテレビ系)でブレイクしています。ここまで注目されるとは思っていましたか?

大村 もちろんこうなるとは思っていないですし、こういうことしたくて仕掛けたわけではないから、“そんな感じで広がっていくんだ”って驚いています。親子ばかりのオファーが多くて、これどうなんだ?って思う時期がありましたけど、漫才の仕事が中心にあるからやれている感じですかね。コンビの仕事がゼロで、親子の仕事ばかりだけだと問題ですけど、こっちはこっちで頑張れば損はないなって思っています。

――晴空くんは、芸能界に進みたいわけではないんですよね?

大村 音楽系に進みたいらしいですね。晴空的に経験になるので、いいことだとは思うんですけど「勘違いするなよ」とは言っています。「もちろんお前がギターが上手いっていうのもあるんだけど、パパがこういう仕事していて頑張った結果、2世としていただいている仕事もある。パパも大成しているわけじゃないけど、普通だったらこんなお呼びはかからないんだから、勘違いするなよ」って。「ちゃんと勉強させてもらいにいこうか」っていう感じですね。

出典: FANY マガジン

――その一言は親として大事な言葉ですね。

大村 勘違いしちゃっている子どもが、いちばんイタいんでね。

――藤田さんのお子さんは野球をしているんですよね。藤田さんは高校野球で元エース。野球好きとしても知られていますが、プロになってほしい気持ちはあるんですか?

藤田 なってくれたら嬉しいですけど、それは選ぶ側が決めることですからね。ただ、僕は大学野球をやっていないので、選手でも裏方でもいいから、できれば大学野球を経験してほしいなとは思います。高校野球で終わった人と、大学野球までやった人って、ぜんぜん違うんですよ。大学4年間、同じ釜の飯を食った仲間のつながりって、ぜんぜん違いますし、絆が深い。それによって就職が開けたり、連携によって転職が決まったりというのを聞いているので、社会勉強としても絶対いいし、続けてほしいですね。

コンビの未来を占う単独ライブ!?

――ラジオ『トータルテンボスのぬきさしならナイト!Season2』(オールナイトニッポンPODCAST)も好評です。リスナーさんの熱も感じるのでは?

藤田 『ぬきさし』好きの人ほど、僕らの感覚を好きでいてくれる人はいないんじゃないかなって思います。漫才のお客さんよりも『ぬきさし』のリスナーさんのほうが、信者度数が高いというか(笑)。

大村 本当に素のままでやってますもんね。僕と藤田が言いたいこと言って。

藤田 バッシングしようと思ったらできるし、すごくスキの多いラジオなので。

大村 中学からの仲で、そのノリでやっちゃっているから、好きな人は大好きになってくれるんですけど、“しょーもな”って思う人も、もちろんいるでしょうし(笑)。でも、そのしょーもなさが俺たちだから、っていう感じでやっていますかね。

――ラジオの場は、お互いの近況も聞けるし、会話もできる。コンビとしていい循環になるのかなと思いますが、実際どうなんですか?

藤田 めっちゃくちゃいいなと思います。仲悪いコンビほど、ラジオやったほうがいいと思いますね。ラジオブースって不思議な空間なんですよ。コンビって、改めて「楽屋で2人っきりで話しようか」なんて機会ないですし、そういうときに言えないようなことも、ラジオを通せば言えちゃったりするんですよね。

出典: FANY マガジン

大村 そんなこと考えてたんだ、ってラジオで知ることもあるし、好きなようにいい感じでやれていますね。

藤田 言っている内容とか、昔の話とか、いまのコンプライアンスにまったく合っていなくて、これが本家のオールナイトニッポンとかなら、何度も炎上していると思います。

――(笑)。最後にメッセージをお願いします。

大村 来年、芸歴25年でベテランの域なのでね。最近は若手漫才師が活躍して魅力的なネタをしていますが、そういう若いヤツじゃ出せないような味のある漫才を見ていただけたらなって思います。
そんな味のある漫才をしながらも、若い時からまったく変わらない(VTRの)イタズラ。そのギャップも楽しめるんじゃないですかね。円熟味のあるネタと、くだらないイタズラのメリハリが魅力だと思うので、ぜひ観にきていただきたいです。

藤田 今回の単独公演は、この先を占うのに、とても大事なライブだと思うんですよ。若手、中堅ときて、ベテランに差し掛かっているいま、どういう方向にいくのか……それを占うのが今年のライブ。このライブの結果いかんでは、もしかしたら芸能界をやめなければならないかもしれない。

大村 いやいや……。

藤田 ヘタしたら漫才も廃業しなきゃいけないですし。そうとう気合入れてやらないといけないなって思っています。

大村 そんな方向性でやってねーんだよ。もっと肩の力抜いてやれよ。

藤田 命かけてやっているんで、漫才師の生き様を見に来てほしいですね。

大村 そんな感じじゃないんで安心してください。

出典: FANY マガジン

公演概要

トータルテンボス単独公2021背広の合うふたり

大阪公演
会場:なんばグランド花月
日時:11月17日(水) 開場17:45 開演18:30

<東京公演>
会場:ルミネtheよしもと
日時:11月19日(金) 開場18:00 開演18:30※オンライン配信あり

チケット:前売り4,000円 当日4,500円 オリジナルマスク付チケット4,500円 配信(東京公演のみ)2,000円(GoToイベント対象価格1,600円)

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