“芸歴30周年”吉本新喜劇座長・川畑を小籔がメッタ斬り! 「いいところは2つしかない」

今年、芸歴30周年を迎えた吉本新喜劇の座長・川畑泰史。9月10日(金)に大阪・なんばグランド花月で開催される特別公演『川畑泰史 新喜劇生活30周年記念公演』には、池乃めだから新喜劇メンバーはもちろん、ナインティナイン、博多華丸・大吉、宮川大輔、矢野・兵動ら同期芸人たちがお祝いに駆け付けます。

今回は、そんなスペシャルイベントを前に、同じく座長を務める“盟友”小籔千豊との特別対談が実現! 「30周年を迎えた川畑座長を小籔が斬る!」をテーマに、歯に衣着せぬ小籔節が次々と飛び出しました。

出典: FANY マガジン

「次の新喜劇」を意識するきっかけに

——振り返れば、2人がまだ若手だった2005年にイベント(『吉本新喜劇 川畑泰史・小籔千豊公演 がんばろっカナ!?キャンペーン』)を一緒に開催していますね。そのときは、どういう経緯だったんですか?

小籔  僕が新喜劇に入ったとき(2001年)には、烏川(耕一)、安尾(信乃助)、川畑という3人が毎週、(公演に)出ていたんです。座長の次に頼りになるのがこの3人みたいな感じで、みんなから一目置かれていて。
当時、僕はなんとかギャラを上げたい、アルバイトを辞めて普通の家庭レベルの収入を得たいと思って、どうやって上に上がっていったらええんかな、どうやったら劇場ギャラが上がるんかなっていうことをずっと考えていて。とりあえず、この3人に並ぶと収入が安定しそうやなって思ったので、この人らに並ぶぐらいにはならなあかんな、と。まあ、オモロさで言うたら、そのときすでにぼろ勝ちしていたんですけど(笑)。

川畑 ははははは!

小籔 まあ、新喜劇のなかで座長はむちゃくちゃ偉くて、ベテランさんも偉い、若いグループのなかではその3人がいちばん実力もあって、頼りにされているという見られ方。だから、もうこの人らと並ばなあかんなと思っていて。座長になりたいとかはまったくなかったんですけど、なんせ生活のレベルを上げたい。そんななか、このオモんない3人がちやほやされて……。

出典: FANY マガジン

川畑 言い過ぎや!(笑)

小籔 真にオモロい俺が虐げられている、この状況を打破しないといけないなって毎日、思っていたんですけど、その3人のなかでダントツで昼ご飯に連れていってくれたのが川畑さんでした。「この流れって、なんでウケへんのですかね」とか、「同じことやってるのに人によってオモんないのはなんでですか?」とか、僕も新喜劇のことについて川畑さんによく聞いていたんです。
それから僕もちょっと立場が上がってきたときに、「この4人でイベントやりませんか」と声かけて。堺筋(大阪中心部の大通り)の近くの角の喫茶店で言うた覚えがあります。

川畑 あった、あった!

小籔 いまは串カツ屋に変わっていると思うんですけど。川畑さんが「それええな、やろう」と最初に言ってくれたんですよ。いろんなことがあって、結果的に2人だけでやることになったって感じですかね。

——川畑さんは、そんな小籔さんに触発された部分はありましたか?

川畑 そうですね、それまで後輩はいてたんですけど、小籔くんが入ってきたときくらいから、ほんまに“次の新喜劇”というのを意識するようになりました。そんな存在でしたね。

出典: FANY マガジン

川畑の台本“リフォーム”力

——川畑さんはイジられキャラが定着していると思いますが、そのことについてはどう思っていますか?

川畑 僕としては極力、イジられんようには生きているつもりなんですけどねぇ、はい。なんとなく、自分はイジられる側なんやなっていう。小籔くんがこうやって取扱説明書みたいな感じでイジられキャラとして扱ってくれることで、(新喜劇と別の)違うところへ行ってもなぜかそういうふうにしていただいている、というような。自分では、そういうつもりはなかったんですけどね。

小籔 たぶん僕が川畑さんにひれ伏していたら、新喜劇以外の人たちは「あ、そういう人なんや」と思って同じようにしていたと思うんですけど。川畑さんのいいところは、2つしかないんですよ。新喜劇の台本を“リフォーム”する力がある、イジられたときがオモロい、この2つしかない。
イジられ芸人というのは、だいたいイジらたくないと思っているんですよ。そう思っているから、イジられる。川畑さんもイジられると思っていないからこうなっている。だから、同じ座長になって、一緒にテレビに出ていく、記者会見に出るとなったときに、手ぶらで外の世界に行かなくていいように、わざと新喜劇のためにそうしてきた(イジってきた)っていうのはあります。

出典: FANY マガジン

——もうひとつの、新喜劇の台本をリフォームする力というのは?

小籔 新喜劇は45分か50分の上演時間で、キャストも基本的には限られた人。客演なしで、ある程度の人数を出さんとあかんわけです。3人で新喜劇やります言うたら、吉本はめっちゃイヤがります。「新喜劇っぽくしてや。けど、新しくしてや」って、ワケわからんことをアホな社員が言うてくるわけですよ。
会場に来ているお客さんは「テレビ(MBSの『よしもと新喜劇』)で見たやつを見たい」って言うんです。でも、テレビの向こうの人は「それ前に見たから見たくない」って言うんです。テレビの向こうなので声は聞こえてこないですけど、確実に数字が下がるし、「またこれかい」ってチャンネル変えられている。僕らは2種類のお客さんを相手にしないといけない劇団で、そんなん他にないと思います。

――たしかに、それは高度な技術が求められますね。

小籔 新喜劇の台本ってむちゃくちゃ制限されまくっているけど、1週間に1本新作を作って、365日舞台を開けないといけない。ほんまは作家もなんのこっちゃわかっていないんです。はっきり言って、新喜劇のことをわかっている作家ってひとりもいないと思います。それは誰にもできないと思います。
ウケへんときも、どこを直してええか、みんなわかっていないんですよ。それを川畑さんは「はい、ここの柱が曲がっているので、この柱を直すことによって、あとのこのボケがウケます」と。普通の人間やったら「なんか、この家住みにくいな」としかわからないところを、「窓の光を受け入れていないから、もうちょっと色の明るいカーテンに」と変えて、一気に住みやすくなるみたいな。そんなんを気づくのが、むちゃくちゃ早いです。

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——川畑さんは実際、どんなところを意識しているんですか?

川畑 いま小籔くんが“リフォーム”って言いましたが、自分でもほんまその通りやと思います。もし自分に得意分野があるとすればなんですけど、その根底には「気持ち悪いのがイヤ」っていうのがあるのかな、って気がしますね。ただ、その「気持ち悪いのがイヤ」に関しては、僕より小籔くんのほうがより敏感でしょう。小籔くんはイチから新しいもの、みんなが見たことのないものを作る人だという感じがします。長いこと一緒にやってますけど、そこは勝たれへん。

「わからんかったら川畑さんに聞きにいけよ」

——川畑さんはNSC(吉本総合芸能学院)を卒業してすぐ新喜劇に入団した、いわば生え抜きですよね。この30年間、生え抜きとして苦労があったと思います。

川畑 もうね、出番がないとか、なかなか役(の格)が上がらないとか、しんどいこともありましたけどね、ほんまにそのとき、そのときで誰かが助けてくれました。誰かの一言で救われたこともありましたし、おカネがない、子どもが生れるっていうときに、(池乃)めだかさんがアルバイトを紹介してくれたとか、そういうこともありながら。
で、小籔くんみたいに一緒にやろうって言ってくれる人がいたり。いまは新喜劇を離れていますけど、レイザーラモン(HG、RG)とか、なかやまきんに君とかも、「一緒にやりましょう」って。みんなのおかげですね、ほんまに。新喜劇って1人でやるものじゃないので、なおさらそう思うのかもしれないですけど、ほんまにまわりの人のおかげで、しんどいときもなんとかやって来れたなっていう気はしますね。

出典: FANY マガジン

——小籔さんは今年で入団20周年ですね。小籔さんにとって、川畑さんはどんな存在でしたか?

小籔 芸人になって初めていちばん困ったというか、新喜劇はまったく種類の違うお笑いだったんですよね。だから、方法論として「こうやって、こうやったらウケるんでしょ」って思っていたことが、新喜劇ではあんまりウケへん。逆に「それはウケへんって、ベタ過ぎてオモんないわ」って思ったものがドカーンと来て、それで「あ、ベタにしたらウケるのね」って思ってベタにしたらスベったり。なんでこっちはウケて、こっちはスベるのかがわからんかったんですよ。
そのなかで「ここでオレがある程度、稼いで嫁はんにおカネをパスせなあかん。どうしよう……」と思っていたときに、川畑さんにかわいがってもらって、ご飯に連れていってもらったのは大きかったですね。

——ちょうど悩んでいたころに声をかけてもらったのですね。

小籔 僕、新喜劇に入って2年だけは、ほんま真面目やったんで。もう疑問だらけで。誰に聞いてもぼんやりとした答えが多かったなか、川畑さんは、すごいわかりやすかったんですよね。
僕はぶっちゃけ、自分は才能の塊やと思ってるんですけど、新喜劇の台本を作るうえで、いうならチーズケーキの土台の硬い部分が、新喜劇バージョンになったときにぐらついたんですよ。上のチーズのおいしさは、僕は自信がありました。その下の生地の作り方を川畑さんに教えてもらって、いまでも台本を作るときのプラスになっています。
もし川畑さんがおらへんかったら、なんとなくオモロイよなっていう台本は作れたとしても、ぼんやりとしていて、これめっちゃオモロイねんけど、どういうふうに順序立てて50分に収めたらいいのかなって、形にできてへんかったかもなって思います。

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まあ、僕にはえげつない才能があるので、何年かかければできるようになったと思うんですけど、それを早めてくれたのが川畑さんであることは間違いないですね。もちろん、内場(勝則)さんやめだかさんにも、めっちゃ教えてもらったので、その存在も大きいですけど、最初に新喜劇の台本の仕組みみたいなのを教えてもらったのは川畑さんです。僕は、後輩らに「わからんかったら川畑さんに聞きにいけよ」ってよく言うので、聞きに行っている後輩もおると思います。

酒井藍を後継指名!?

——若い座員がよく「川畑さんに教えてもらった」と話していました。川畑さんは、後輩の面倒見がいいという印象があります。

小籔 面倒見がいいというのは、ウソなんですけどね。

川畑 そこ斬るんか!?

小籔 面倒見は別によくない。じゃあ、なんで後輩らが教えてもらうかというと、「こうやって、こうやって、こうなっているからこうやねん」と、新喜劇のメカニズムを端的に言葉で説明するのがほかの人よりかは上手やから。「あっこのボケ変えろ」とか、「あれウケてへんから、もう1回考えろ」っていうだけのダメ出しをする人が多いなか、川畑さんの場合はちゃんと言葉にして、アホな後輩でもわかりやすく言うから、「ああ、なるほど」と。
無意識にやっていることが後輩のためになっているだけで、別に「こいつをなんとかしてやろう」という気持ちは川畑さんには一切ない。説明が見事で、後輩もわかりやすいから「面倒見てもらっている」みたいなことを言うんですけど、この人ががっちり誰かを面倒見ているというのは……まあ見たことない。

川畑 はははは!

出典: FANY マガジン

——(笑)。新喜劇では、川畑さんのノウハウは受け継がれているんでしょうか?

小籔 僕は、(酒井)藍ちゃんとか生え抜きがある程度、結果を出す世界じゃないとあかんと思うんです。僕みたいなFA選手が言うことじゃないんですけど。川畑さんとかみたいに、生え抜きがきっちり結果を出せる球団のほうが組織としてはいいですよね。
なので、僕としては、すっちーもいますが、とくに生え抜きである藍ちゃんに期待していて。初の女性座長ですし。川畑さんとか僕とかの台本の作り方を藍ちゃんに受け継いでほしいな、と。僕ら2人がやりとりしながら台本を作って見えてきた部分を受け継いでほしい相手というのは、藍ちゃんだったりしますね。

——後継者の話も出ましたが、今後、新喜劇をどう盛り上げていきたいですか?

川畑 そうですね、自分らが正しいと思ってやってきたことですけど、それが何年か後に「あれ、よかったな」って思われるんじゃないかなっていう気がするんですよね。いまは僕らしかやっていないので、それが正解になったり、不正解になったりするんですけど、何年後かに、そうしたことが引き継がれていってほしいなと思います。そこから派生して、僕らができなかったことを後の人たちがどんどんやってくれたらって思いますね。

——では最後に小籔さん、改めて川畑さんに芸能生活30周年のお祝いの言葉をお願いします!

小籔 川畑さんの30周年って、まあ、はっきり言って誰も興味ないと思います。「だからどないしてん」と思ってはる方は多いと思います(笑)。川畑さんはいま54歳ですよね。僕ら新喜劇の人間からすると、芸歴50周年を迎えてもらうほうが後輩らのためにもなると思いますので、50周年を目指してがんばっていただけたらと思います。
それから、「30周年、知らんがな」っていうのがあるので、今度のイベントも自分で祝ってくれと言っているみたいで“寒いな”と思うんですけど、いまの川畑さんを見に来ていただいて。川畑さんのことを助けてやろうという同期がたくさん集まることもなかなかなくて、すごくスペシャルなものだと思いますから、ぜひ来ていただきたいです。

出典: FANY マガジン

川畑さんには健康に気を使っていただいて、50周年とかそれくらいのときには、後輩に台本のこと、ボケのことを伝えながらイジられて、お茶の間の皆さんにかわいがられる対象であってくれたらいいなと個人的には思います。

川畑 はい! がんばらせていただきます!

公演概要

『川畑泰史 新喜劇生活30周年記念公演』

出典: FANY マガジン

会場:なんばグランド花月
出演:川畑泰史、ナインティナイン、博多華丸・大吉、へびいちご、星田英利、宮川大輔、矢野・兵動、杉岡みどり、小籔千豊、すっちー、酒井藍、池乃めだか 他
チケット:前売・当日とも6,600円(全席指定)

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