吉本からスター俳優を発掘するプロジェクトとは!? 第1弾公演は「作品の設定と3人のイメージがバチっと合った」

吉本興業からスターとなる俳優を見つける「モチモチプロジェクト」が始動しました。その第1弾として、ワークショップで選ばれた渡口和志、高野渚、大野瑞生の3人が7月16日(火)~7月21日 (日)に上演される舞台『ナイト―シンジュク・トラップホール』(新宿シアタートップス)に出演します。今回はこの3人と、舞台の作・演出を手掛けるオフィスPSC所属の演出家・保坂萌さんに、お互いの印象や本番に向けた手応えをたっぷり語ってもらいました!

出典: FANY マガジン
左から保坂萌さん、高野渚、渡口和志、大野瑞生 出典: FANY マガジン

吉本とオフィスPSCが共同で立ち上げた「モチモチプロジェクト」は、吉本所属の俳優とオフィスPSC所属の演出家・保坂さんがタッグを組んで、5年後に東京・渋谷のPARCO劇場での公演を目指す企画です。

今回は、保坂さんが主宰する演劇プロデュースユニット「ムシラセ」の公演に渡口、高野、大野の3人が初参加。江戸時代の浮世絵師・歌川広重の絵から着想を得たという舞台では、駆け出しの漫画家「広重」が、体を売ってホストに貢ぐ「飯炊き女」や、葛飾北斎、滝沢馬琴、十返舎一九といった有名作家たちに囲まれて過ごす日々が描かれます。

清濁入り混じる新宿を丸ごと描きたかった

――『ナイト―シンジュク・トラップホール』はどんな作品ですか。

保坂 さっき、彼らとも「これってひと言でどういう話なんだろうね」って話し合っていたんですけど……。

着想のきっかけになったのは、江戸時代の浮世絵師・歌川広重の1枚の絵でした。新宿シアタートップスさんから話をいただいたときに、劇場がある新宿の話を書こうというのは決めていて、あるとき広重の『名所江戸百景』というシリーズに、当時の新宿を描いた『四ツ谷内藤新宿』という絵を見つけたんです。

広重のほかの絵は、どれも構図もモチーフも美しいのですが、この作品は大きく馬のお尻があって、その下には馬糞が落ちていて、奥には宿場町で体を売っていた飯炊き女が描かれている。新宿きらいだったの?というくらい変な絵で(笑)。

それで、この絵を主軸に、登場人物たちに江戸時代へ飛んでもらおうと思いました。時代劇だけど現代ベースでもある、そのあたりがクロスオーバーして入り混じっていくような、とても観やすい時代劇になったと思います。

出典: FANY マガジン
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私は、清濁入り混じるというか、伊勢丹のようなきれいな場所があって、少し奥に入ると歌舞伎町のような場所があって……という、いまの新宿が好きなんです。そういう土地の感じは、むかしも変わらなかったようなので、江戸時代も現代も引っかけて、新宿を丸ごと描きたいなと思いました。そのなかで人々が消費され合っているというところが大きなテーマになっています。

群像劇ではあるけれど、私としては初挑戦となるボーイミーツガールの恋愛モノなので、(渡口)和志くんが演じる広重と(高野)渚ちゃん演じるカスミが物語の中心ですね。

「彼はいつだって真っすぐでかわいい」

――初参加となる渡口さん、高野さん、大野さんはどのように決定したのですか?

保坂 今回は吉本興業とオフィスPSCが共同で立ち上げた「モチモチプロジェクト」の第1作目ということで、ワークショップオーディションのようなものをやらせてもらい、吉本興業の俳優部から多くの方に参加していただきました。

そのときには、作品の構図やキャラクターの設計もおおよそできていて、「ここにこういう人を置きたいな」とぼんやり思っていたところに、彼ら3人と出会って、バチっとピントが合った感覚ですね。空いている席にスススっと座ってもらった感じ。

渡口・高野・大野 へぇ~。

保坂 私は当て書きをするタイプなので、それからは3人に要素をもらいながら書き進めていけました。

――3人のどんなところに魅力を感じたのでしょうか。

保坂 (物語の)真ん中にいる人には、自分が若いときに思っていたこととか、自分が失くしてしまったものを体現してほしい! とすごく思うんですよね。そう考えたときに、(渡口)和志くんはまだ19歳。もちろん、年齢のことだけではないですが、いちばん真っすぐだと思わされたのが和志くんでした。役にピタッとハマったときの芝居への立ち向かい方とかも真っすぐで、すごくいいなと思ったんです。

私の舞台では、真ん中にいる人がいろいろと間違っちゃうことが多いんですけど、間違っても絶対に嫌われない感じが和志くんにはあって。そういう要素をすごく大事にしているんです。彼はいつだって真っすぐでかわいいんですよ。

出典: FANY マガジン
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カスミは、まわりを翻弄するような人にやってもらいたいと思っていました。それで、渚ちゃんの何を考えているかわからない感じがいいなと思って。感覚でやっているっぽいのに職人っぽい。ワークショップでも、不思議な雰囲気なのに芝居の戻しは早くて、“バランスのいい悪さ”みたいなものを持っているなって。私が当て書きで台本を書くときに、「どうなっちゃうの?」ってドキドキしながら書けるなと思ったんです。悶えるくらい心を撃ち抜かれる瞬間が多かったのが渚ちゃんでした。

(大野)瑞生くんは、普通にしゃべっていても哲学的だなと感じるところがありました。「生きるとは」みたいなことをちゃんと考えている人だなと。ワークショップのときにちゃんと台本を読み込んできてくれて、物語全体の構成を考えてお芝居を組み立ててくれていた。家でめちゃくちゃ考えてくれているんでしょうけど、現場ではそれを自然に表現できる人です。ホストは一元的に捉えるとヒドそうな役になりうるんですけど、瑞生くんなら、ちゃんと共感を生みだせるだろうなと思いました。

――大野さんは実際にそういう心がけをしているんですか?

大野 そういう作業がすごく好きでやっているので、頑張っているという感じではないです。

保坂 それがすごいんだよね。

フィールドワークで新宿を散歩

――出演される皆さんは、ワークショップに参加してどうでしたか?

大野 配られた台本がとにかく面白かったので、それがやりたくてワークショップに参加しました。ワークショップって、僕は遊びに行く感覚で参加するんですけど、今回は本当に楽しくて。

僕は自然体の人が好きで、初めてご一緒する保坂さんは、いつもナチュラルな感じだけど、ちゃんと緊張感も出ているし、人として信頼できるなという印象でした。演出も相手に合わせて、指示が明確で、一緒に作品を作れたら楽しいだろうなと思いました。

出典: FANY マガジン
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僕は偉い立場の人に対してつい頑張っちゃうところがあるんですけど、保坂さんに対しては頑張らなくていいやって思えた。ワークショップのときも、いまも、好印象でしかないです!

保坂 本当に? やったー!

高野 最初、「モチモチプロジェクトがあります」っていう連絡をもらったときに、「ん?モチモチプロジェクト?」って思ったんですけど……(笑)。まずはやってみちゃう性格なので、すぐに「やります!」とお返事しました。

実際に参加したら楽しい、楽しい。一緒に参加した仲間たちを知るところから始まって、フィールドワークで新宿をお散歩したのも、新鮮で楽しかったです。

保坂 変な団体だよね(笑)。

渡口 過去3作品の映像見せてもらって、台本の一部をワークショップで演じたんですけど、はじめは“これできるのかな?”と思いました。2人1組でボケとツッコミのようなやりとりをしたのですが、1回目は渚さんと組ませてもらって、渚さんがすべてのウケをかっさらっていって、すごいなって。

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一同 (笑)

渡口 台本が面白いというと、おこがましいんですけど……。

保坂 いいよ、褒めてよ(笑)。

渡口 すごく「わかるー!」って共感しながら台本を読んだりして、ワークショップはすごく勉強になりました。はじめに他己紹介をしたんですよ。相手の方と30分くらいしゃべったあとに、皆の前でその人のことを紹介する。僕は初めてだったので、難しいと思いながらもリラックスできたし、雰囲気も明るかったので楽しかったです。こんなにいろいろなことをやるワークショップは初めてでした。

保坂 人のことを紹介してもらうほうが、相手にどれくらい興味が持てる人なのかがよくわかるんですよ。

「このカンパニーは異常に仲がいいな」

――稽古に参加した感想はどうですか?

渡口 保坂さんは一緒になって考えてくれるので、すごくありがたいです。

高野 初日に皆さんとご飯に行ったんですが、そのときから私たちが入りやすい空気を作ってくださいました。だから、はじめから安心して、やりたいようにやらせてもらえたので、ありがたい気持ちでいっぱいでした。保坂さんはキャラクターについて細かいところまで説明してくださるので、脳内にすっと明確なイメージが浮かぶ感じです。

出典: FANY マガジン
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大野 本読みのときにめちゃくちゃ笑いが起きて、でもシリアスなシーンでは空気がすっと引き締まる感じというか……。本の面白さ、役者の皆さんの力ももちろんあるけど、カンパニー全体で空気を共有しようとする意思が感じられて、ここは無防備で臨んでいいところなんだって思いました。

そこから稽古が進んでいったら、みんながいろいろなアプローチをしだすし、最年長のベテランである有薗(芳記)さんたちがはっちゃけてくれるし、とにかく面白いんですよ。

みんなで楽しみながら、やることはちゃんとやっているっていう、すごく理想のカンパニーだと思います。

――若い皆さんから絶賛されていますが、保坂さんから見て、稽古場の様子はどうですか?

保坂 今回はお三方含め、14人中4人が初参加だったのに、1週間くらいで「このカンパニーは異常に仲がいいな」って思ったんですよね。だから、私が皆さんに甘えさせてもらっている感じです。

今回の作品は、場面が飛んだり、恋愛ものであったり、私があまりやってこなかった手法で作っているんですけど、悩んだときに「こういう風にしませんか?」って言ってもらえることが多い。意味がわからない案も飛び出しますが(笑)、スタート時に「全員で作りたい」とお伝えしたことが叶っている現場だなと思っています。

「若い2人の一瞬のまたたき」を感じてほしい

――最後に、作品への意気込みをお願いします。

高野 今回、新宿の話を新宿でやるので、新宿で観ることに意味があると思います。ぜひ、新宿でご覧いただきたいです!

渡口 常連の皆さんと初めてご一緒させていただきますが、絶対に素敵な舞台になると思うので、少しでも多くの人に観に来ていただきたいです。

大野 作品全体に共通しているのが“業”というもので、それはたぶん、すべての人に当てはまることだと思います。難しい話ではまったくなくて、でも、誰にでも刺さる話で……。だから、この作品を観て、新宿を見たら、景色が何か変わってるんじゃないかなって。この作品を通してあらゆる人を肯定できる気持ちになって、新宿をぐるっと見渡してほしいなって思います。

出典: FANY マガジン
出典: FANY マガジン

保坂 今回、新宿で新宿の話をかけられるというのは恵まれていて、再演は難しいなと思っています。私が描きたいのは、若い2人の一瞬のまたたきみたいなものなので、それを劇場で感じていただきたいのと、配信でもご覧いただければと思います。

「演劇って面白いの?」と思う方もいらっしゃるかと思いますが、私の作劇は「わかりやすい」を信条にしているので、わかりやすくて、面白くて、次の日と、そのまた次の日まで残る物語になればいいなと思ってやっています。いろいろな方に観ていただきたいですね。

また、今回は「モチモチプロジェクト」の第1弾作品となります。今後、また3人とやらせてもらうことも、もちろんあると思いますが、吉本の俳優部は、本当に素敵で印象深い方が多いので、今後はもっといろいろなことしていきたいですね。

舞台を大きくしていくことも1つの目標ですが、シンデレラを発掘するというよりは、一緒にそうなっていきたいなと思っています。上から引っ張ってあげるよ、ということではなく、一緒に階段を上がっていけるようなプロジェクトにしていきたい。ときにはちっちゃいところに寄り道もしながら、大きいところを目指して、皆で旅ができればいいですね。

公演概要

ムシラセ本公演「ナイト―シンジュク・トラップホール」

日程:
7月16日(火)19:00開演〇
7月17日(水)19:00開演②
7月18日(木)14:00開演/19:00開演
7月19日(金)14:00開演☆/19:00開演☆
7月20日(土)14:00開演
7月21日(日)14:00開演 ※公演終了後有料配信あり
場所:新宿シアタートップス
出演:渡口和志・高野渚・大野瑞生 他
脚本・演出・写真:保坂萌(ムシラセ主宰)
ゲスト:中野亜美(あやめ十八番)
日替わり前説ゲストあり(各種SNSで発表)

チケット料金:前売 4,800円/当日 5,300円
推し応援チケット10,000円(キャスト別・要予約)
※キャストブロマイドと楽しいグッズ付き
○初日みやげ付き チラシ全14種と特製クリアファイル(非売品)
②二日目なぜか入らない割 前売4,000円/当日4,500円
☆お江戸おともだちーズおまけ公演付き(公演後)
チケット取扱:カンフェティ

カンフェティはこちらから。

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