銀シャリ(鰻和弘・橋本直)の単独ライブツアー「シャリとキリギンス」の千秋楽公演が11月23日(土・祝)に大阪・大阪国際交流センター大ホールで開催されました2016年のM-1優勝など数々の実績を積んできた2人が、5月4日の静岡公演を皮切りに全国13都市15公演で1万人を動員した全国ツアーの千秋楽。超満員となる1006人の客席を2時間、沸かせ続けたライブの模様を、芸人ライターの茜チーフがレポートします!
漫才とVTRだけの“ストロングスタイル”
公演冒頭、客席の照明が消えると、舞台上のスクリーンに2人が未発表のオリジナルソングを歌っているミュージックビデオのような動画が映し出されます。この時点で、客席は音楽に合わせて手拍子を始め、すでにノリノリ。トレードマークの青ジャケット・赤ネクタイで2人がセンターマイクの前に登場すると、割れんばかりの拍手が送られました。
橋本が「知らん歌によく手拍子できましたね」と皮肉っぽく観客を褒めると、鰻は「千秋楽に切れ痔になった」と報告してさっそく客席を爆笑させて、1ネタ目に入ります。
「昔」と「今」の違いをテーマに、鰻がボケまくり橋本がツッコミまくる怒涛のしゃべくり漫才。一連の言葉のラリーのすべてが笑いどころとなっていて、さすがすぎます。
ちなみにこの日のライブは、「いつもゲスト無しで、漫才、V(VTR)、漫才、V、漫才、V……でネタをやるから“ストロングスタイル”と言われている」とご本人たちが言う通り、コーナーなしで間にブリッジVTRを挟みながら、オール新ネタの漫才を一気に6本披露するというすさまじい構成。さらに、なんとネタごとに毎回、衣装も変えるこだわりようで、漫才にかける強い思い入れが伝わってきます。
2本目の漫才では、2人は袖がオレンジと緑の色違いのTシャツに、Gパン、スニーカーというラフなスタイルで登場。元素記号の覚え方の「水兵リーベ僕の船」はスポーツの覚え方だと言い張る鰻と、それを確かめながらツッコミを入れていく橋本に観客は笑いっぱなしです。
3本目は鰻がグレー、橋本が黒のカジュアルなセットアップで登場。鰻が「生まれ変わったら鳥になりたい」と、なんとも不思議な願望を披露します。4本目は鰻が緑がかった灰色の、橋本が黒のスーツ姿で登場。鰻がツラそうな美声で「どんぐりころころ」を歌いますが、実はそこには壮大な事件性が隠されていて……という展開。5本目は2人がお揃いのワインレッドのスーツ姿で登場し、「本を読むのが好きだ」という鰻がさまざまなモノをしおりとして本に挟んでいくさまと、独特な自問自答が面白すぎました。
最後の6本目、2人は1本目と同じ青ジャケット・赤ネクタイの「いつもの」衣装に戻って登場。早口言葉が言えるようになりたいという鰻ですが、ふつうにしゃべるのも、たどたどしくなってしまうという展開で、会場は大揺れの爆笑に包まれました。
舞台上と一味違う2人の「遊園地タイム」
ネタの合間のブリッジVTRでは、北海道の函館にある素朴な遊園地で2人が遊ぶ様子が流れました。
椅子に屋根がついただけの“日本最古”の観覧車に乗り、「別々に乗っているのに会話が出来る」と笑が止まらない2人。遠心力を楽しむ回転遊具は、年齢制限が65歳までとジェットコースター並みに厳しく設定されているにもかかわらず、何の説明もなくスタート。強すぎる加速に「いたい、いたい、いたい」と大絶叫していました。
ボールを転がしてカップに入れるゲームには、「名人賞」の剣ほしさに何度も挑戦。野外の風で動き回る的に砲弾を当てるバズーカ砲ゲームでは、橋本が自身も驚くほどの才能を開花させます。
なぜかデフォルトで2周する乗り物型の遊具「新幹線」では、手作りの動物たちが沿線をにぎやかしています。2周目に突入する前に、「小さいリスを見つける」というミッションを課せられた2人。大人の勘を発揮させて見事、発見に成功した鰻は大喜びしていました。
リラックスして遊園地を思いっきり楽しむ2人は、ストイックに漫才を磨き上げる舞台上の姿とはまた違った面白さを見せてくれます。VTRが流れるたびに、客席からは大きな拍手笑いが起きていました。
千秋楽を終えて客席に「愛してます」
エンディングでは、ツアーグッズの白と黒のTシャツに着替えて登場した2人。早くも、来年のコンビ結成20周年の単独ライブツアー「純米大銀醸」の開催を発表しました。「こういうタイトルをつけたばっかりに、たまに『私アルコール無理なんで』って勘違いする人がいますが、そういうイベントじゃない。ノンアルイベントです」とアピールします。
M-1に優勝した2016年には上方漫才大賞の奨励賞も受賞している銀シャリですが、大賞にはまだ手が届いていません。「今日1000人が来てくれるって当たり前じゃない。愛してます」と客席に向かって感謝を伝えた2人は、「なぜか上方漫才大賞が永遠に獲れない。大賞獲って、結成20周年の来年、ここに凱旋で帰って来れるように」と大きな野望をぶち上げて、千秋楽は大賑わいのまま拍手と笑いに包まれて幕を下ろしました。
終演後も、名残惜しむ多くの観客が、公式グッズや10月30日に発売された橋本のエッセイ本『細かいところが気になりすぎて』(新潮社)を買うためにロビーに列をなしていました。ツアーポスターの2人の間に座っているように写真が撮れる撮影スポットにも行列ができていて、最後の最後まで大盛り上がりでした。