6月15日(日)、シグネチャーパビリオン「Dialogue Theater – いのちのあかし – 森の集会所」で行われたのが、『Walk the Talk for SDGs in EXPO2025 UN&YOSHIMOTO』SPECIAL TALK SESSION「世界に隠された20の悲劇」。パビリオンのプロデューサーの河瀨直美氏、UNDP 駐日代表のハジアリッチ秀子氏、ココリコ・田中直樹がトークショーを行いました。

シグネチャーパビリオン「Dialogue Theater – いのちのあかし – 」は、「対話」を通じて、世界の至るところにある「分断」を明らかにし、解決を試みる実験場。万博期間中、毎日違う問いかけについて、知らない者同士が対話しています。今回はパビリオン敷地内にある「森の集会所」でトークショーを実施。「世界に隠れされた20の悲劇」をテーマに、3者が「対話」を行いました。
初対面の3人がトークセッション

MCを務めるのは大自然・ロジャー。まずは『Walk the Talk for SDGs in EXPO2025UN&YOSHIMOTO』について説明。そして出演者3人を紹介します。田中はロジャーに負けじと低音ボイスで笑いを誘います。
3人は完全に初対面であることを明かすと、河瀨氏は「さっき対話をしてちょっとだけわかりました」と笑顔。「対話」を体験してきた田中は、誰が出るかわからない状態で河瀨氏が出てきて本当にビックリした、と振り返ると、「対話」の内容を少しだけ明かし、笑わせます。
対話を聞いていたというハジアリッチ氏は、親友の家に泊まって会話しているみたいな感じだったと話すと、田中は「(河瀨氏に)引き出していただいた」、河瀨氏も「私も汗かいた」と明かし、笑わせます。河瀨氏はパビリオンで行われる毎回違う「対話」に魅せられ、何十回も通っている人がいること、さらに自身「UNESCO(国際連合教育科学文化機関)」の親善大使を務めていることも伝えました。
「20の悲劇」が描かれたパネルを展示
ここでステージの後ろにあるパネルについての説明が。ロジャーは、これが世界約170か国で途上国を支援する国連開発計画(UNDP)により創られた「世界に隠された20の悲劇」という作品と説明。
ハジアリッチ氏は最初に、先進国に途上国の問題なんだと上から目線で見てほしくないというのがあったと話すと、「一見楽しく見える絵の中に悲劇があります」と伝えます。世界では11人に1人が飢餓に苦しんでいる一方で、世界では5分の1の食べ物が捨てられていて日本では一人当たり年間38キロのフードロスが発生してるということも指摘。

河瀨氏は世界のあちこちにある「分断」についても言及。分断が起こる理由について、正義と正義だと思うと話し、「それぞれのまっすぐがあって、それをどうやったら解決できるのか、初めて聞く意見でも深く落とし込む、広げるということができたら」と話します。
さらにイスラエルとイランの問題などについても触れ、「何をどうしたらいいの?」と自問自答。ロジャーが沖縄出身であることがわかると、沖縄についてもトーク。ロジャーに「今度出て!」と直接オファーも飛び出しました。
世界の分断、複雑な問題についても「対話」
ここから田中、河瀨氏、そして来場者で絵の中にある「20の悲劇」を見つけることに。田中は水を入れた桶を頭の上にのせて橋をわたる人たち、枯れた畑やたくさんの人が乗っているボート、河瀨氏はトイレのイラストなどをチェック。来場者もイラストの中から様々な問題を見つけると、ハジアリッチ氏は挙げられたそれぞれの悲劇について、具体的な数字も入れつつ、説明していきます。
気候変動についてのトークでは、田中が昨日訪れていたという南三陸の水温が上昇していることを例に挙げ、大きく気候が変わっていることを指摘。河瀨氏は教育の大切さに思いを馳せつつ、実際に体験した国同士の深い分断についてもトーク、会場も静けさに包まれます。そして、複雑過ぎる問題に何度も「どうしたらいい?」と問いかけつつ、対話を重ねるしかない、と話しました。

続けて今回のイベントについては、「笑いで間口広げて、みんなが考えるきっかけにする、このイベントはすごい!」と絶賛すると、田中も終わってしまうのがもったいない、もっとお話を聞きたいから、期間中はもちろん、万博が終わってからもこういったことが継続されていくべきだと思うと同意。
ハジアリッチ氏は万博のテーマが未来社会を作るであることに触れ、技術やハイテクに目が行きがちなものの、この20の悲劇のイラストに浮き出ているような現実を無視して未来は語れない、いい結果になれば、と話しました。
万博後のパビリオンの使い方は…?
トークセッションのあとには、囲み取材も行われました。河瀨氏は意義のあるもの、その時間を与えていただいたことに感謝したいと話すと、お客さんの反応が熱心でよかった、私のパビリオンの中でこんな時間を持たせてもらってよかった、と振り返りました。

田中は対話の大切さについて言及。対話と会話でこんなに心の踊り方、考え方が違うということ、対話は相手がいて成立するものだと感じた、対話の大切さをすごく気づかせてもらったと話しました。ハジアリッチ氏は今論破する、されるが流行っているが、そうじゃなく対話していることにハッとさせられたと話すと、物事を発信するときにアーティストといっしょにやった方がより多くの人にわかっていただける、と気付いたと話しました。
3人で「対話」するとしたらどんなテーマがいい? という問いには「自然?」「魚?」といきなりトークがスタート。河瀨氏は自然というのがどういう状態をいうのかということもあると問題提起。里山を例に挙げ、ある意味人間との対話によって出来上がっている、人間が丁寧に関係を持ちながら整えていると話します。
そこからもパビリオンについてなど、トークは継続。河瀨氏は会期が終わったあとについて、移築に関して国連、吉本興業に協力を仰ぎつつ、里山で朽ちるしかなかった校舎を移築したことで記憶は移築できると思ったと話します。田中は河瀨氏とのトークを振り返り、本当に初めてだったものの腹を割ってしゃべるから10分でもものすごく距離が縮まる、そういうのがベースになっていけばいいなと話しました。

ハジアリッチ氏は今回の「世界に隠された20の悲劇」について、教科書的なパンフレットなどは素通りされてしまうことが多いため、何回も練って企画したと明かし、世界の距離は縮まっているものの、すぐ近くでこういうことが起こっているという現実も見ていただきたいと力を込めました。
最後に河瀨氏は改めてパビリオンについて、どこかに移築して、例えば世界の課題を考えにくる研修センターのような使い方、都会のビルの中で話し合うより、奈良の山の中など自然の中で過ごしながら話し合ってもらえたら違うアイデアも出てくるのでは、そういうことを目指しています、と話しました。