「世界で一番笑える一週間!」をテーマにした国内最大級のコメディフェスティバル『OSAKA COMEDY FESTIVAL 2025』。9月19日(金)にはHEP HALLで「日本のコメディは世界に通用する?」をテーマに、「漫才」と「AI」を融合させた公演『MANZAI×AI ~Experience Japanese Comedy~』が開催されました。出演するのは、ジョックロック(福本ユウショウ、ゆうじろー)、フースーヤ(田中ショータイム、谷口理)、ロングコートダディ(堂前透、兎)の3組。最新のAI技術を使った驚きの“翻訳漫才”で、まさに世界への手応えを感じさせる斬新なステージとなりました。

『OSAKA COMEDY FESTIVAL 2025』は、大阪府、大阪市、大阪商工会議所などによる「大阪にぎわい創出事業」の一環として行われる国内最大級のコメディフェスティバルです。大阪・関西万博の開催に合わせて「コメディの“首都”大阪」の魅力を国内外に発信し、大阪のブランド力を高めることを目的としています。
9月15日(月・祝)の開幕から9月21日(日)まで、大阪・キタエリアにあるSkyシアターMBS、HEP HALL、阪急サン広場の3会場で、さまざまなイベントが実施されてきました。
「AIとお笑いのフュージョンです!」
「MANZAI×AI」では、3組がAIの英語吹き替え技術や、FANYが開発したお笑い特化型AI字幕翻訳サービス「CHAD2」といったデジタル技術を活用して、日本人だけでなく海外からのお客さんも楽しめる2種類のネタを披露します。
1本目は「リアルコンテンツ」として、ライブの漫才に字幕を入れて披露。そして2本目は「映像コンテンツ」で、、あらかじめ収録済みの漫才動画を、最新AI技術を駆使して、まるで本人が英語で話しているかのように吹き替えて編集。会場にいる全員でその漫才動画を鑑賞するという、これまでにないライブです。

MCを務めるのはチャド・マレーン。チケットは完売で、客席には日本人はもちろん、外国人の姿もあり、注目度の高さがうかがえます。
チャドは「AIとお笑いのフュージョンです!」と今回の企画趣旨をわかりやすく説明したあと、客席にいる外国人の観客たちと英語でコミュニケーション。「日本の漫才を知っているか」など、根掘り葉掘り聞き出していました。
英語の字幕入り漫才に海外の観客も爆笑
前半は、3組による生の漫才を字幕付きで披露!
1組目に登場したのはロングコートダディです。漫才のつかみでうしろを振り返り、「おお! 字幕が出てる!」と感心する堂前と兎。2人のセリフは色分けされて、しゃべるタイミングに合わせて背後のスクリーンに映し出されます。

2組目はジョックロック。ネタの途中に出てくる「広末涼子」のくだりが「ブリトニー・スピアーズ」と翻訳されていて、2人は「おお……!」と感動していました。
最後はフースーヤ。おなじみのフレーズ「チャーハン、チャーハン」などがどのように翻訳されているか気になるようで、ネタの合間に翻訳のスクリーンをチラッと気にする2人の姿に会場は大笑いです。
3組のネタが終わったところで、字幕が見事にマッチしていたジョックロックは「気持ちよかったです」と満足そう。フースーヤについては、ラスベガスから来たという観客が「クレイジーだった」と感想を語って、みんな大爆笑でした。


ジョックロックの吹き替え漫才は「映画を見てるみたいやった」
後半は、最新AI技術で英語に吹き替えた漫才動画をみんなで鑑賞。芸人たちも、どのような動画になっているのか、この日、初めて見ることになります。
まずはジョックロックから。英語をペラペラ喋りながらネタをしていて、声もまるで本人たちの声。自然な漫才動画になっていて、観客は驚愕しつつも大笑いです。谷口も「すごいな、これ!」と驚きを隠せません。
ネタが終わると、田中は「映画を見てるみたいやった」と印象を語り、堂前も「AIやのに感情がこもってた!」と舌を巻いていました。

一方、兎が「外国人の観客と日本人の観客の、笑うポイントが違ったので、ネタをもう一度見たくなる」と話すと、田中も興奮して続けます。「じゃあ、ウケたところとウケなかったところを分析して、ウケたところを集めて漫才を作ったら、世界に通用する漫才が作れるということ!?」と世紀の発見!?
“難関”フースーヤの漫才は翻訳できる?
ロングコートダディのネタを見た福本は「途中から2人がブルース・ブラザーズに見えてきた」と感激。一方、兎は自身のネタの吹き替え版を見て、「AIがしゃべってくれてるから、ふだんオレがかむところをかまなくて、めっちゃ聞きやすかった」と語り、笑いを誘っていました。

最後は、監修を務めたチャドが「難関」と評したフースーヤのネタ。「オーマイゴッドファーザー降臨」や「ジョージ・クルーニー卵とじ」といった独特なギャグもうまく吹き替えられていて、2人は大喜びです。
「交響曲第九」は「シンフォニーナンバーナイン」と語感もよく翻訳されていて大爆笑でした。先のラスベガスからの観客も「ランダムで面白かった」と満足した様子。
そしてイベントの最後に、いろいろと感想を語ってくれた件の外国人が、なんと世界的パフォーマンス集団「シルク・ドゥ・ソレイユ」のキャスティング担当者だったことが発覚! 全員で出演を猛アピールすると、「検討します。まずは一度、ラスベガスへ」と好感触!?
最新AIのおかげで、言葉の壁も国境も越えて日本の漫才で爆笑するという、とてもハッピーなイベントとなりました。

ジャスティン・ビーバーにネタを届ける!
終演後の囲み会見に登壇したのは、これまでにない斬新なステージをやり終えた3組と、この公演のMCと、言葉のニュアンスやリズムの監修を務めたチャド。
実はチャドは、英語字幕版公演の第一人者。今回の公演について、目を輝かせて語ります。
「今回は、最新AIを使った吹き替え版をできたことが素晴らしかった。新しい時代がやってきました。お笑いの夜明けが来てワクワクしています。このために僕はNSC(吉本総合芸能学院)に入ったのかなと思えるくらいうれしい」
ネタを披露した谷口は、吹き替え版が衝撃的だったと語ります。
「僕らの漫才は日本語のダジャレが多いんで、そこはAIとチャドさんにニュアンスを組み取っていただいて、そのおかげでかなり伝えることができたと思います」

一方で、この日の外国人のお客さんの反応をリアルに見て、「メロディや元気さ、クレイジーさは(言葉がわからなくても)通じるんだなというのを知ることができてよかった」との感触も。フースーヤのネタでよく登場する「よいしょ!」は、今回のAI翻訳で「way to go」と訳され、「これはいい成果が出た」と満足そうです。
田中は「『チャーハン、チャーハン』のギャグは以前、YouTubeで海外に向けていろんな国の言葉で作ったことがあるんです」と明かします。実は、ジャスティン・ビーバーに届けたくて英語のネタを作った時期もあったとのこと。
「昔から海外は視野に入れてたんですけど、今日でボヤけていた視野がはっきりと見えた。これからは“世界のフースーヤ”になりたいと思います」

「ピクサー作品のテンポ感に似ていてびっくりした」
ロングコートダディ・兎は、こう話します。
「日本語って、僕は世界でいちばん難しい言語だと思っていて、ひらがな・カタカナ・漢字のすべてを使い分け、しかもお笑いだとそこにニュアンスも加わってくるので、絶対にAIではそんな表現はできないとナメてかかっていました。でも、見事に僕がナメられました。すごいなと思います」
特にAIの吹き替え漫才を見て衝撃を受けた様子。
「おじさん同士が話しているだけでも、英語吹き替え版になることで、ひとつの映画を観ている感じになる。自分の知ってるネタでも、より引き込まれて『おもろいな』と思えました。漫才にとって、本当に新しい道が見えてきた。素晴らしい現場に立ち合わせていただいて感謝です」

堂前も「(AIが)テンポや間もちゃんとおもしろくしてくれるのは、本当にすごいなと思います」と驚きを隠せません。そのテンポは「ピクサー作品のテンポ感に似ていてびっくりした」とも語りました。
「お笑いにとって万博よりも大きなできごと」
ジョックロック・ゆうじろーは「漫才は日本だけのものだと思っていたけど、(AI吹き替え版を)YouTubeにアップしたら、世界的に再生回数も増えてくるのではと思いました」と期待を込めて語ります。
福本は「ロングコートダディさんの漫才は、アメリカのコメディ俳優のようでした」と感激した様子で語ると、自分たちのこんな野望も披露!
「僕らがこれまでドラマや映画のネタをやってるのは、これを足がかりにドラマや映画に出ようっていう作戦だったんです。でも、これを機に、日本を超えてもう海外ドラマとか……。次のシーズンの『ウォーキング・デッド』に出たい」

世界への可能性を開いたAI翻訳漫才。チャドは「大阪が“お笑いのまち”ということが、世界的に知られるのはまだ先です」と冷静に分析しながら、こう続けます。
「先行して、先ほど皆さんに見ていただいた吹き替え版や字幕版の漫才が海外で通用すると思うので、まずはそれが道を切り開いていく。というのも、こんなことをやっている人は海外のどこにもいないからです。だからおもしろい。お笑いにとっては、(大阪・関西)万博より大きいことやと思います」
これを聞いて谷口も、「今回のイベントはすごく画期的だと思ったし、お笑いにとって“Xデー”やったと思います!」と力を込めました。

『OSAKA COMEDY FESTIVAL 2025』公式サイト:https://osaka-fringe.com/