いまをときめく芸人たち……周囲から一目置かれる存在になった彼らにも、かつて「こんなふうになりたい!」という憧れの存在があったはず。そんな売れっ子たちに、芸人を志したきっかけや憧れた芸人、そして芸人になるまでの道のりなどを語ってもらうインタビューシリーズ『あなたは誰に憧れ芸人に?』。今回は、体を張った独特な芸でYouTubeチャンネルの登録者数199万人、TikTokのフォロワー数1000万人を突破するなどSNSで話題のピン芸人・ウエスPに話を聞きました。
トガっていた高校時代
――ウエスPさんは、この世界に入ろうと思ったとき、憧れの芸人はいましたか?
ダウンタウン(浜田雅功、松本人志)さんですね。小中学生のときがいちばんお笑いを見ていて、たしか卒業文集に「お笑い芸人になる」と書いたと思います。
――学生時代に好きだった番組を教えてください。
当時、よく見ていたのは『ダウンタウンのごっつええ感じ』(フジテレビ系)、『笑う犬』(フジテレビ系)シリーズ、東京でやっていた『超!よしもと新喜劇』ですね。新喜劇には藤井隆さんが出演されていて、学校でモノマネをしていた記憶があります。
ほかにも『リチャードホール』(フジテレビ系)、『はねるのトびら』(フジテレビ系)、あと、いまの芸風に合わないですけど、松本さんのコント集『HITOSI MATSUMOTO VISUALBUM』も好きでした。
――学生時代は明るいタイプでしたか?
小学生のときは明るいほうでしたけど、思春期になって落ち着いていきました。
――お笑いを知れば知るほど、トガってしまう人もいると思います。ウエスPさんはどうでしたか?
そういうところもあったかもしれないですね。高校のときは、濃いお笑いを見始めたこともあって、クラスの明るいやつを“なにが面白いんだ”って目線で見ていました。
受験に失敗して芸人の道へ
――テレビのお笑い番組で、若手芸人のネタを見たりということは?
『M-1グランプリ』(ABCテレビ・テレビ朝日系)は見ていましたけど、ネタ番組自体には興味がなく、劇場に行くタイプでもなかったので、本格的にネタを見はじめたのは、NSC(吉本総合芸能学院)に入ってからなんです。
――そんなウエスPさんがお笑い芸人になったきっかけは何だったのでしょう?
将来、何になろうかと考えたとき、そういえばお笑いが好きだったし、芸人になりたかったなと、ぼんやりと思っていて。理系の大学を受験するときに、“これで落ちたらNSCに入ろうかな”と思っていました。決心がつかず2つの道で揺らぐなか、大学に落ちちゃったんで、浪人するよりも1回、芸人になってみようって。
――NSCではどんな芸人だったんですか?
ネタ見せしないのにトガっているヤツでしたね(笑)。卒業公演間近、コンビを組めなかったので、1人コントをやり始めました。そのころから、自分はネタを作るのがヘタだし、松本さんには絶対になれないなって思っていました。卒業後、1人コントがあまりうまくいかなかったので、途中で(活動を)休んでいる時期もあったんですけど、復帰後、こういう芸風になりました。
――『笑っていいとも!』(フジテレビ系)のコーナーに自分で応募して出演権を獲得したそうですね。
(復帰するときに)いままでと同じじゃダメだと思ったし、当時はネタ番組もなかったので、なんとかしてテレビに出るしかないと思っていました。短いショートネタでも、特技でも、テレビに出られるようなものを作ろうと切り替えたのがそのころです。
数字を出せているから、いまに満足できる
――芸人として、どのような理想を描いていましたか?
コント番組の一員になれたらなって思っていました。冠番組を目指して頑張っていましたけど、なかなか……。
――芸人として活躍するようになったいま、理想にはどの程度近づけていますか?
憧れの人やテレビで見ていた人たちの前でネタをやれたので、少しは夢が叶ったのかなって思います。ダウンタウンさんがMCをされている『ドリーム東西ネタ合戦』(TBS系)の1コーナーに出演したとき、初めて生でおふたりを見たんですけど、“実在するんだ”って思いましたね(笑)。
あとは(明石家)さんまさんの『さんまのまんま』(関西テレビ・フジテレビ系)に出させてもらったとき、身体を使ったテーブルクロス引きをやったら、さんまさんに「君みたいな芸人はあんまり吉本にいないから、このまま続けていったほうがいい」と言われて嬉しかったです。
最初に思い描いていた道とは違いますけど、こういう芸風になったからこそ、憧れの方々にお会いできたのかなって思います。
――近くで見ていて、この人すごいなと思ったり、影響を受けた先輩芸人はいますか?
ロンドンブーツ1号2号の田村淳さんはカリスマ性があるなって思いました。お会いしたことがなかったのに番組に呼ばれて、ネタをやらせていただいて。近くで見ていて、人を集めるパワーとか、求心力のある喋り方をする方だなと感じましたね。
――いま芸人としての満足度はどれくらいですか?
85パーセントくらいですかね。理想とは違いましたけど、いまとなっては満足しているのかもしれません。それは(SNSの)フォロワー数や視聴数など、数字として出ているのが大きいからだと思います。これくらいいるんだぞって、人前に出せるくらい多くの方がフォローしてくれているので、それが満足度に繋がっているのだと思います。
取材・文 浜瀬将樹
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