子どもたちの読書への意欲を高めることを目的に、文部科学省と独立行政法人国立青少年教育振興機構が主催した『子どもの読書活動推進フォーラム』が、「子ども読書の日」の4月23日(土)に都内で開催されました。「子ども時代の読書活動の重要性」をテーマにしたシンポジウムでは、パネリストとしてピース・又吉直樹が登壇。自身の読書体験などについて、熱く語りました。
保育園時代に質問攻め!?
シンポジウムのコーディネーターを務めたのは、日本テレビの杉上佐智枝アナウンサー。パネリストは又吉と社会福祉法人友愛福祉会の馬場耕一郎理事長の2人です。聞けば、2人とも大阪出身で、しかも寝屋川市(又吉)と門真市(馬場氏)というお隣同士の市の出身なんだとか。
コロナ禍での“読書事情”について聞かれた又吉は、こう語ります。
「読書する時間は増えたんですけど、書店に行く機会が減ってしまって。もともと書店に行くのが好きで、書店で予定にない本に出会えるのが楽しみだったんですけど、それがなくなってしまった」
そんな又吉が、子ども時代の読書体験について驚きのエピソードを明かしました。
「実は以前、こういった講演会に出席していたとき、いちばん前の席に座っている女性がずっと手を挙げていたんですね。発言権がないってわけでもないので(笑)、話してもらったら、その方は僕が保育所に通っていたころの先生をしていた方だったんです」
その女性は、幼少期の又吉に絵本の読み聞かせをしたときのことを話し始めたそうです。
「ふつうは絵本を読んでもらうと、みんな『ふ〜ん』とか『すごい』とかそういう反応なのに、僕は質問してたんですって。『なんでなん?』『なんでこうなったん?』って。だから『直樹くんに読み聞かせをするときは緊張していたんです』と話して、僕より大きな拍手をもらってました(笑)」
そんな又吉は小学校のころ、授業の進み具合と関係なく教科書を読み進め、気になった作品を図書館で借りて読むという“読書活動”をしていたとのこと。そして当時、芥川龍之介の『トロッコ』を読んだときに感じた感覚が自分の記憶の中の感覚と同じで感動したこと、さらに、小学校5年生ぐらいから漫才やコントのようなものをノートに書き始めていたことなどを振り返ります。
また、遠足の感想文がみんなにウケたことがあって、それが嬉しかったのと同時にプレッシャーを感じることになったと言います。又吉少年は、感想文のエピソードを充実させるために、わざとお菓子を持っていくのを忘れたこともあったとのことで、馬場氏から「感想文ありきの遠足なんですね……!」と妙な感心をされていました。
読書をやめてしまうのは「もったいない」
一方、馬場氏は、小学校高学年のときの担任が「文豪の作品を読みなさい」と言う先生だったそうで、ほとんど強制的に読まされたといいます。
「読んでも何が面白いのか全然わからんかったし、読むのがツラかったんですけど、志賀直哉の作品だけは面白くて。そこで自分の読書のスイッチが入ったなという感覚がありました」
すると又吉が、「馬場さんのおっしゃった『全然わからんかった』っていう感覚がすごい大事だと思っていて。わからないことを蓄積していくことが大事なんじゃないかなと思うんです。“わからない”は“面白くない”ではないじゃないですか」と話します。そして、こんなエピソードを披露して、読書を継続することの大切さをアピールしました。
「僕、4年生まで自転車に乗れなかったんですね。それまで乗れないことが恥ずかしかったし、練習するのも嫌だった。でも、3〜4日練習して乗れたときにすごく気持ちよかったんです。それと似ていて、わからんなりに読んでいったら、どこかのタイミングで面白く感じたり、感じ方が変わったりすることってあるじゃないですか。だから、そこまでいってほしいですね。面白く感じる前にやめてしまうのは、自転車に乗れる前に練習をやめてしまうようなもので、もったいないな、と思います」
オススメ書籍は「劇…劇……」
さらに又吉は、「文章は言葉で構成されているから、言葉自体に興味を持ってもらうのも大事かも」と投げかけます。
「辞書で言葉を覚えていくと、言葉のイメージが広がっていって、それが連鎖していくと、ただ文字を追っているだけじゃなくて、読書体験が2次元じゃなくて4次元ぐらいに感じられることがあるんです。そのためには言葉をもっとよく知ることが大事だと思います」
一方で、ピース結成前に「線香花火」というコンビを組んでいたとき、オール巨人に「縁起悪いコンビ名つけるな」と言われたというエピソードを披露しました。
「自分では縁起が悪い言葉だとは思ってなかったんですけど、広辞苑で調べてみたら“一時的で、すぐに勢いがなくなるもの”って書いてあって『ほんまや!』って。実際、すぐに解散しましたし」
シンポジウムでは、オススメの書籍を聞かれた馬場氏が「いまちょっと作者のお名前を忘れてしまったんですけど、『人間』っていう小説……」とボケる“お約束”の場面も。又吉がすかさず「それ私です(笑)。ありがとうございます」と拾うと、続けて「あと、劇…劇……」とトボける馬場氏に、又吉がふたたび「『劇場』だったら私です(笑)」と返すなど、シンポジウムは終始、和やかに進行しました。