男性ブランコが“丸投げ”する作家・大澤紀佳のお仕事「正直、こんなにデキる人ってバレてほしくない」【芸人と、作家と】

芸人と、作家と

ネタ作り、ライブ、テレビ、YouTube……さまざまなシーンで、芸人たちを支える“作家”。芸人たちは、どのように作家と仕事をしているのでしょうか。芸人×作家のスペシャル対談シリーズ

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ネタ作り、ライブ、テレビ、YouTube……さまざまなシーンで、芸人たちを陰で支えている“作家”と呼ばれる職業の人たちがいます。第一線で活躍する芸人たちは、どのように作家と仕事をしているのでしょうか。芸人×作家のスペシャル対談シリーズ『芸人と、作家と』。今回は、昨年の「キングオブコント」「M-1グランプリ」の活躍で勢いに乗る男性ブランコ(浦井のりひろ・平井まさあき)と、彼らが上京してまもなくから仕事をしてきた作家の大澤紀佳が登場。お笑いライブの作りかたを中心に、芸人と作家の仕事について語ります。

出典: FANY マガジン
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その日のうちに声をかけられて…

――大澤さんと男性ブランコのおふたりの出会いは?

平井 2016年かな、僕らが上京してきて……。

浦井 その年のクリスマスでしたっけ。

平井 お、なんか情景が浮かぶ言い方(笑)。

大澤 冬でしたっけ? とにかく、私がYCC(よしもとクリエイティブカレッジ=現YCA:よしもとクリエイティブアカデミー、吉本興業が運営する作家・スタッフ養成所)を卒業して1年目のときです。YCCの現役生徒が配信で番組を作るということで、そこにOBとして呼ばれて。

平井 その番組に僕らと、アイロンヘッドさんの2組が出てて……。

浦井 生徒たちが考えたコーナーとかをやったんだよね。

平井 大澤さんが、その指揮官みたいな役割でした。

浦井 そう、リーダー。

平井 僕らは演者として行って傍から見ただけですけど、「むちゃくちゃ仕事ができるな」と思いました。ちょうどそのころ、ライブをするにあたって作家さんを探していたんですよ。僕ら上京したばかりで、東京に知り合いの作家さんもいないし。

浦井 お世話になっていた作家さんはみんな大阪の方だったんで、こっちに頼める人がいなくて。単独ライブに向けて、「作家さんおらんかな」と言ってたところで。

平井 ダメもとで「もしよかったら作家さんとしてついてくれませんか」と言ったら、「全然いいですよ」と言ってくれて、そこからずっとついてもらってます。

出典: FANY マガジン
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――大澤さんはYCC卒業後、何をしていたんですか?

大澤 ヨシモト∞ホールで進行をやっていました。

平井 そうだった! だから、ちょっと顔も見たことあって。

大澤 もともと男性ブランコさんとアイロンヘッドさんが面白いなと思っていたんです。当時はまだ2組ともサードクラス(当時のランキングでいちばん下のクラス)で……。

平井 まだランキングでは全然下だった。

大澤 YCCの事務局の人に「好きな芸人さんを呼んでいいよ」と言われて、「いまこの2組が面白いので、私もお仕事してみたいから呼んでいいですか」とお願いしました。

――大澤さんが男性ブランコの2人を呼んでいたわけですね。

大澤 その日のうちに「単独ライブについてほしい」と言ってもらって……。「1年目ですけど、本当に大丈夫ですか?」と。

平井 めちゃくちゃテキパキ動いてはったので、もう絶対大丈夫だと思って声をかけました。

――大澤さんは、お笑いの作家をめざしてYCCに入ったんですか?

大澤 はい、作家志望でした。もともと演劇が好きで、いろんなYouTubeを見ているうちにコントも好きになって。それこそ、最初に声をかけていただいた日に、おふたりに「好きな芸人さんは?」と聞かれて「ラーメンズさんです」と答えたんです。そこでおふたりと好きな方向性が似ていたことも、「じゃあ、一緒に」となったきっかけだったと思います。

出典: FANY マガジン
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平井 そうそう。好みは似通ってましたよね。

――大澤さん自身はそれまで、ほかの芸人さんに作家としてついたりは?

大澤 そのちょっと前に、うるとらブギーズさんに。

浦井 で、次に僕らがお願いして。

大澤 だから、いちばん付き合いが長いのはうるブギさんと男ブラさんです。

平井 いまじゃあもう、アイロンヘッドさん、大自然さん、あと佐久間一行さんにもついてるよね。

浦井 無限大(ホール)の人たちが、めっちゃお世話になってる作家さんなんですよ。

台本に「赤ペン」を入れていく

――大澤さんは作家として具体的にどんなお仕事をしているんですか?

大澤 いまは「なんでも屋」になりました。

平井 本当に。それこそ台本を、音響や照明を担当する技術さんに渡せるように作り変えてくれたり、演出面で相談に答えてくれたり。僕が投げた台本を見て、「ここには曲があったほうがいいですよ」とか、「照明はこういう方が」とか言ってくれるんです。

大澤 流れとしては、まず平井さんがLINEで台本を送ってきてくださるのが最初です。もともと平井さんの台本って本当にきれいで、正直、手を加える必要がないくらいなんです。でも一応、単独のコントは今後も使えるように書き起こして、「ここで曲スタートとありますが、どこで切りますか?」「ここは照明いりますか?」とか、赤ペン先生みたいな感じで書き込んで返信すると、そこに対する答えが青ペンで返ってくる、というやりとりです。

出典: FANY マガジン
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平井 ほかにも道具表や衣装表を作ってくれたり、「ここは技打ち(技術打ち合わせ)前に照明さんに伝えておいた方がスムーズだと思います」と指摘してくれたり。

浦井 僕らが相談まで至らないところに、大澤さんは気づいてくれるんですよ。「あ、そう言われたらそうですね」と、言われて気づくことがたくさんあって、すごくありがたいです。

平井 いつも意見を論理立てて言ってくれるし、だいぶ細かいところまで確認しておいてくれるおかげで、技打ちもだいたいスムーズだもんね。

浦井 そうだね。

大澤 技術の方と打ち合わせするのは、だいたい本番の1週間前なんです。そこに台本の起こしを間に合わせるためには、その3日前に平井さんから台本をいただく必要があって。でも、だいたい締め切り前にそろってるんです。

平井 今回(4月公演『しょんぼりサーベルタイガー学園前』)の台本は、ちょっと遅くなりましたけど(笑)。

出典: FANY マガジン
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大澤 いや、そもそも単独の前日に台本が上がるのが普通の世界なので、すごいです。技打ちのタイミングで台本があること自体が奇跡です。しかも1月の単独を終えて打ち合わせまで、実質1週間くらいで……。

浦井 たぶん準備期間は、これまででいちばん短い。

大澤 それでも台本がほぼそろっていましたから。

――台本が早くできるからこそ、照明や音響の部分で手をかける余裕があるんですね。

大澤 はい。男性ブランコの単独は、おふたりの努力があるからスムーズにできあがるんだと思います。

頼まれるままにアニメーション作りまで!?

平井 あと大澤さんはすごく器用で、小道具もクオリティの高いものを作ってくれます。それと映像ですね。単独ライブのオープニングとか幕間の映像とか、センスフルな、めちゃくちゃ抜群のやつを作ってくれるんですよ。

浦井 だから丸投げだよね。

平井 映像なんて、「この曲でお願いします」くらい。去年一度だけオープニングをアニメーションの方に頼んだことがありましたけど、それ以外はぜんぶ大澤さんが作ってくれています。

大澤 というのも、男ブラさんは今年から毎月、単独をやっていまして。スケジュール的に頼める映像さんがなかなかいないというのもあって。

平井 だから「大澤さん、お願いしますっ!」と。以前、アニメーションも作ってくれたんですよ。

浦井 『ヘッジホッグホッジグッへ』(2月公演)のときね。

出典: FANY マガジン
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――大澤さんはもともと映像の勉強もしていたんですか?

大澤 いえ、ただ求められるがままに、やらざるを得ず……。

平井 追い込まれて(笑)。

浦井 それで覚醒したんだ。

平井 技術もどんどん上がっていってるんですよ。お互い好きなものが似ているというのもあるし、ライブの雰囲気とかコンセプトを理解してそれに合うものを作ってくれるので、もう僕らからは何も言わないです。

浦井 いい意味で本当にディスカッションが起きないですよね。最初に出されたものを「わー、いいですねえ」って言うだけ。

大澤 時間がないので、事前に見て方向性を共有したりできないんですよね。もうぶっつけ本番でリハーサルのときに見ていただく感じで。

平井 でもそれで毎回、「めっちゃいいやん」ってなるから。映像はお客さんからの反響も大きいんですよ。

大澤 男性ブランコさんの単独はネタが強いので、こちらが多少クセを出してもそんなに邪魔にならないんです。それができる、珍しい芸人さんだと思います。

平井 正直、大澤さんがこんなにデキる人ってバレてほしくないですもん。いま以上にめちゃくちゃ仕事を頼まれると思うから。

大澤 いやいや(笑)。

出典: FANY マガジン
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次回の【芸人と、作家と】では、信頼関係が増すきっかけになった“ある事件”や、3人の関係性などについて語ります。

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