10月15日(土)、16日(日)の両日に開催された「京都国際映画祭2022」。16日、ヒューリックホール京都では、地域発信型映画『遠くを見てみた』が上映され、上映後の舞台挨拶に秋月三佳、長内映里香、石川県津幡町の矢田富郎町長、月亭方正、鈴木Q太郎、嬉野智裕監督が登壇しました。
源平伝説が残る津幡町を舞台に、兄の葬儀のため故郷に戻ったまま音信不通となった作家の原稿を、なんとかして取り立てようとやって来た新人編集者と、作家の甥や近所の女性ら町の人々との交流を描いた本作。俳優陣の自然な演技はもちろん、緑あふれる田園風景の、ゆるやかな時の流れまで切り取ったような美しい映像も大きな魅力となっています。
方正、自身の演技を自画自賛
主人公の葵を演じた秋月は、「何度か見てるんですけど、やっぱり大好きな映画」としみじみ。訪れたのは初めてといいますが、「森の中の澄んだ景色、澄んだ雰囲気をずっと浴びていて、本当に夢のようだった」とすっかりファンになった様子。温かい共演者に囲まれ、「ほっこりした気持ちで演じていた」と振り返りました。
津幡町に住む女性・ともえを演じた長内は、石川弁に苦労したそう。「(出身地の)関西弁と石川弁は、ニュアンスが近いゆえに難しかった」と言いますが、監督はじめスタッフ全員が石川県出身だったため、誰に聞いてもすぐ正解を教えてもらえて大いに助かったそうです。
方正は、源平伝説を研究する大学教授役で出演。妻が金沢市、義母はなんと津幡町出身で、源平伝説をテーマにした創作落語を現地で口演したこともあり、そうした縁で今回のオファーが舞い込んだとか。完成した作品を見るのは今回が初めてで、「(映像が)全編きれい。汚かったのはQちゃんだけ」と笑わせた一方、「自分が(映画に)出てるのを見て、すごくインパクトのある演技をするなと思った。僕しか印象に残ってない」と自画自賛で沸かせました。
「見るたびに、監督の細かいこだわりに気づく」と言うのは、作家役のQ太郎。葵が水を飲むシーンでは、水道水をコップに注いでいますが、その描写だけで「津幡町の水はおいしい」ことが表現されていると指摘します。また、Q太郎も方正同様、俳優の仕事に大きな手ごたえを感じたようで、「だいぶコツをつかんだ気がする」とニッコリ。嬉野監督は、ロケハンを何度も重ねて絵になる場所を探したとのことで、「地元が金沢ですが、自分も知らなかった景色をこの映画で見つけられました」と語っていました。
いつかNHK大河ドラマを津幡町で!
矢田町長は、津幡町には「ここっていう観光地はあまりない」と謙遜しつつ、「“元気な町・津幡”をキャッチフレーズにしており、スポーツが盛ん。人口4万人足らずの町ながら、2021年の東京オリンピックでは女子レスリングで2人の金メダリストを輩出している」と特色をPR。既に津幡町にゾッコンの方正は「心地いい時間がずっと流れている。僕の子どもも、行きたい行きたいと言う。リラックスの仕方が、他のところに旅行に行くのとは違う」と大絶賛で、自身の創作落語で津幡町の知名度をさらにアップし、「いつか(源平伝説を描く)NHK大河ドラマを津幡町で! 」と劇中そのままに夢を広げていました。
また、津幡町ならではのスポットが数多くロケ地として使用されている中、方正が「あれは何? 」と気になっていたのが“禁酒”と書かれた石碑。嬉野監督によると、大正時代に小学校を建て替えるため、集落全員で禁酒してお金を工面したという史実があるそうで、その小学校跡地には現在、その名も「河愛の里Kinschule(キンシューレ)」という宿泊体験施設がオープン。撮影中、キャストやスタッフが滞在したのもその施設で、「朝ごはんのパンもおいしくて。どんなに夜遅くなっても、ごはんがおいしければ頑張れるなって」(長内)、「バーベキューもできるらしいので、また行きたい」(秋月)と大好評でした。
フォトセッションを経て、最後はひとりひとりが改めて挨拶を。嬉野監督は「今回はオール石川県のスタッフでやったが、地元の人だけで作ったものには地域性が出てくる。いろんな地域でこういう映画ができれば、きっともっとおもしろくなる」と地域発信映画の可能性に触れるとともに、本作の企画を持ち込んだ石川県住みます芸人のぶんぶんボウル・まーしに感謝を述べていました。