大阪が誇る伝統芸能のひとつ、上方落語。大阪弁などの上方言葉で繰り広げられるこの落語は、発祥から300年という歴史を誇る由緒ある文化であり、娯楽です。その上方落語の若手から重鎮まで一同に会して噺を演じる「第三回 大阪落語祭」が、1月27日(金)から大阪府内で始まりました。初日公演の会場となったなんばグランド花月(NGK)には、一門や所属事務所の枠を超えた上方の落語家たちの噺を聞こうと、多くの観客が集まりました。
上方落語にフランス語も登場!?
白を基調にした高座に、まず現れたのは月亭方正。「この『第三回 大阪落語祭』のトップバッターは僕です!」と笑顔を見せると、満席の会場から大きな拍手が沸き起こりました。方正は言葉遊びが楽しい「十徳」を朗らかに口演、トップバッターという大役を果たしました。
続いては米朝一門の桂吉弥です。高座に座るなりネタに入る技巧者ぶりを見せ、桂三枝作の「ないしょ話」で惹きつけました。声の大きい大阪人を愛嬌たっぷりに描きながら、大きなジェスチャーで熱演する一幕もありました。
はんなりとした足取りで現れたのは、同じく米朝一門の桂米團治。「御曹司です。よろしくおつきあいください」との挨拶で笑いを誘います。マクラではフランスで落語をした話から、フランス語の「動物園」を披露。ネタは「稽古屋」で、下座の三味線と息の合った掛け合いも見せました。
中トリは松竹芸能の桂福團治、おなじみのぼやきで笑いを誘います。ネタでは、大阪・船場を舞台にした人情噺「蜆売り」をたっぷりと。真冬の船場で繰り広げられるシジミ売りの少年と親方たちのやり取りを情感豊かに描きました。
大村崑に教えてもらった「笑い方」
中入り後は口上が行われました。司会を月亭八光がつとめ、桂福團治、六代 桂文枝、笑福亭福笑、月亭八方、桂南光、桂米團治が一列に並び、観客に挨拶します。「今日は気合を入れ過ぎて、右足の足袋を2つ持ってきてしまいました」と茶目っけたっぷりに告白し、沸かせる八光。続く挨拶は米團治から。「まずもって噺家のせがれはアホですね(笑)」と笑わせます。そして「上方落語の存続はお客様にかかっております。今後ともご支援のほど伏してお願い申し上げます」という堂々たる挨拶に、八方や文枝は「もうこの後は(挨拶は)いらんのちゃいますか」と満足げな様子です。
南光は入門した1970年当時の師匠方との思い出話を明かしつつ、「こうして上方の噺家がひとつになってイベントができることを嬉しく思います」と顔をほころばせました。「祭りごとになると、たくさんの方がお越しくださる」と客席を見渡すのは八方です。そして「長生きの秘訣は笑うこと」と、今年91歳の喜劇俳優・大村崑に教えてもらったという笑い方のコツも伝授しました。
NGKの舞台に立つのは初めてという福笑は、「ここで兄弟子の仁鶴や月亭可朝さん、先代小染さんが落語をされていたのかと思うと感慨深い」としみじみと語り、八方と同様、「笑いは健康の源、落語会にお越しになって、大いに笑って、健やかにお過ごしください」と話します。
文枝は「初舞台は松竹の角座」と振り返り、「これからも事務所の枠を超えて、一緒の舞台に立ちたい」と語ります。そして最後の口上、福團治へ。落語家生活も60年を超えた福團治。「落語家を半世紀以上やってきたなかで、300名のプロが育ってきました。これも先達者のおかげと、お客さんのご支援があってこそのものです」と改めて謝辞を述べました。最後は文枝の発声で大阪締めをし、高座と客席とがひとつになりました。
途中で足がつるアクシデントも
中入り後の舞台には松羽目が登場し、高座はさらに華やかな雰囲気に。中入り後のトップバッター、南光はマクラで高齢化社会の話題で盛り上げ、江戸の吉原に負けず劣らずのにぎわいを見せていたと言われる大阪・松島を舞台にした「義眼」を口演。時折、解説もはさみながら観客を落語の世界へと誘いました。
大トリは文枝です。羽織袴で颯爽と登場。演目は三枝時代に創作し、いまでは後進の落語家たちもこぞって演じる「鯛」です。「いけすの鯛のお話です。だから着物も鯛の色です」と言うと、会場からワッと歓声が上がりました。体を使って鯛の部位を表現したり、弱った泳ぎ方を見せたりする文枝。途中、足がつるというアクシデントに見舞われながらも、いけすに集った鯛たちの物語を繰り広げました。
「第三回 大阪落語祭」は吉本興業のほか、松竹芸能、米朝事務所、上方落語協会に所属する約140人の上方落語家が、1月27日(金)から2月14日(火)まで「心斎橋PARCO SPACE14」を中心に府内の定席寄席やホールで寄席や独演会を開催します。
公式サイトはこちらから。