寛政年代から200年余り、京都の地で錺(かざり)金具制作を続けてきた竹影堂中村家。その当代でアーティストでもある、七代目・竹影堂榮眞さんの個展「竹影堂榮眞 茶の湯金工展」が、2月9日(木)から新宿・京王百貨店6階の京王ギャラリーで開催されています。初日にはサバンナ・八木真澄が会場に訪れ、金工作品の数々を鑑賞。ときおりギャグを織り交ぜつつ、金細工の精巧さと美しさに驚いた様子でした。
香炉、花器、ついにお雛様まで金細工に!
現在、金工・京錺の技術と魅力を伝え、後継者の育成に努めるべく学生の指導にもあたっている榮眞さん。今回の個展にあたっては、代々受け継がれてきた技術を駆使し、金属の良さを活かした繊細かつ優雅な作品の数々をつくり上げました。個展のタイトルにもある茶道具を中心に、香炉、花器、果てはお雛様など、さまざまな作品が展示されています。
実は八木は以前、バラエティ番組の京都ロケで茶道を経験した際に、榮眞さんに会ったというご縁もあるそう。同じ京都出身ということもあって、「工房はどこにあるんですか?」と尋ねるなど、興味津々です。
さらに、「加工の技術は、ぜんぶ先代から教わるんですか?」「銀の細工ってどの時代からあったものなんですか?」などなど、八木の質問攻めに榮眞さんは丁寧に答えていきます。とてもフランクに、ときに笑いを交えながら説明する榮眞さんに、八木もすっかり引き込まれている様子!
一つひとつ丁寧に作品を見ていくなか、気になるものがあると、榮眞さんに話を聞きます。お雛様については、榮眞さんがこう説明しました。
「いま家の中でお雛様を置けるようなスペースがないでしょう。だから、小さくてかっこいいものができたらいいなと思って、つくりました。金でつくってもいいかな、とは思ってるんですよ。そうしたら、付加価値がつくから。でも、それって僕ら物をつくる人間にとっては痛し痒しです。金の価値が付いてると、つくってる人間が見えなくなっちゃうんですよね」
「なるほど」と深く納得した様子の八木は、さらにお内裏様の纓(えい/冠の後ろに差す羽根状のもの)の透かしの細工を見せてもらうなどして感心しきり。「世界に誇る日本の技術ですよー! ブラジルの人、聞こえますかー!」と地球の裏側に向かって叫んでいました。
一緒に「ブラジルの人、聞こえますかー!?」ポーズ
さらに片口やぐい呑みについて、榮眞さんが“お酒好き”ならではの創作秘話を明かします。
「僕は、自分でつくった銀のビアカップを持って、近所に飲みに行くんです。瓶ビールをそのコップで飲むと、めちゃくちゃ美味いんです。いちばんいいのは、ガラスと違って、酔うて落としても割れないこと。で、ぐい呑みは、夏場に冷酒を入れると、まわりが真っ白になって、清涼感があっていいんです。そういう自分の“好き”だけでつくったようなものですね(笑)」
「片口も、持ちやすくつくってあるんです」と語る榮眞さんに、八木は“世界でいちばん細いグー”のポーズで「世界でいちばん持ちやすい片口」とキメ!
水次薬罐(みずつぎやかん)については、「もともと“薬罐“というのは、字の通り薬を煮詰めるためのもので、“やくかん”が転じて“やかん”になった」と、説明してくれる榮眞さん。それを千利休が茶席で水差しに湯を足すために使ったことから、「水次」として使われるようになったそうで、「影の道具やけど、ものすごくいい道具を使っているということが面白いですよね」と語ります。
八木は「やかんが、もともとは“やくかん“だったっていうことに驚きです。驚いた勢いで自分ドリブルしてしまいました!」と、躍動感ある動きで驚きを表しました。
さまざまな作品を見て解説を聞いた八木は、すっかり榮眞さんから刺激を受けたようで、決意を新たにこう宣言しました。
「一つひとつに技術や理論があるなと思いました。そして、その技術に基づいてつくられたものは、時代が変わってもいつまでも変わらず残り続けていく。だから、僕もいつまでも変わらずに『ブラジルの人、聞こえますかー!?』と、永遠に叫び続けたいと思います!」
最後は「僕も一緒にやりたいな」と言う榮眞さんと2人で一緒に、「ブラジルの人、聞こえますかー!?」ポーズで締め。
世界の裏側まで、素晴らしい日本の伝統工芸が届きますように!
展覧会概要
『竹影堂榮眞 茶の湯金工展』
開催期間:2月9日(木)〜15日(水)
場所:京王百貨店 新宿店6階 京王ギャラリー