2022年度(第77回)文化庁芸術祭の大衆芸能部門で芸術祭大賞を受賞した林家菊丸が天満天神繁昌亭の昼席でトリを務める「受賞記念ウィーク」が、4月10日(月)から16日(日)まで開催されます。3月6日(月)に発表会見を開き、菊丸が意気込みや受賞の心境などを語ったほか、師匠の四代目林家染丸が療養中のため代わりに同席した一門の兄弟子・林家染二から激励も受けました。
「1週間、どの曜日も違う色あいで」
今回の「受賞記念ウィーク」には、歴代の大賞受賞者が登場する予定です。いろものに女道楽の内海英華(第67回)、中トリには日替わりで桂文枝(第38回・第58回)、桂文之助(第71回)、林家染二(第75回)、笑福亭松喬(第76回)が出演し、にぎにぎしく受賞を寿ぎます。
会見では兄弟子の染二が、こう挨拶しました。
「菊丸は2014年に115年ぶりに三代目菊丸を襲名し、2015年には繁昌亭大賞を受賞。そして襲名から8年で芸術祭大賞という大きな賞を受賞しました。2023年度初めての受賞ウィークですので、繁昌亭が連日満席になるようにと思っております」
芸術祭賞は、文化庁の顕彰制度見直しで2022年度が最後となりました。菊丸は次のように話します。
「この賞は2年前に染二兄さんが取られて、その前には師匠も受賞しています。まさか自分が受賞するとは思っていませんでした。(大賞・優秀賞・新人賞とある芸術賞の中で)優秀賞に選ばれたらラッキーかなというぐらいでした。今回は最後の芸術祭受賞ということで、文化庁芸術祭にこだわったウィークをしたく、過去に受賞した先輩方に出てもらいます。1週間、どの曜日も違う色あいで楽しめると思います」
菊丸が天満天神繁昌亭の昼席でトリを務めるのは、今回で4回目。これまでのトリを振り返りながら、こう話します。
「1回目が襲名記念、2回目は繁昌亭大賞受賞。3回目は、当時の上方落語協会副会長(四代目桂春団治)から『お前がトリにいってみろ』と言われてやって……。過去の3回はちょっとお祭り気分みたいな雰囲気で、まだ先輩たちに甘えられるなかでのトリでした。でも、今回はものすごくプレッシャーです。でも、あえて大賞受賞経験のある先輩方に出てもらって、自分を追い込みました。1週間、ちゃんと初日からできるかなという、喜びもありながら不安もありますので、準備だけはしっかりしておきたいと思います」
菊丸は、定評のあった女性役ではなく、侍のネタを披露した「第八回三代目林家菊丸独演会~今宵はサムライのおはなし~」が評価され、芸術祭大賞を受賞しました。受賞ウィークでは、そのとき口演した「癪の合薬」「二番煎じ」「井戸の茶碗」を演じるのかどうか注目です。
「ネタは当日の客席の空気を読み取りながら考えますが、その三席は視野に入れています。『井戸の茶碗』は東京で稽古をつけてもらったネタで、上方でやらないネタを逆輸入でやると違う色合いが出せるかなと思っています」
「古典、創作の両輪でやれたら」
将来のビジョンを問われた菊丸は、「これから真価が問われていくと思う」と表情を引き締めました。
「48歳で大賞をとって、どんなものなのかとお客さんからも噺家同士にも思われると思いますので、『きっちりこなすな』という印象の噺家になりたいと思います。奇をてらわず、舞台に出たときよりも、はけるときのほうが大きい拍手をもらえるような噺家になりたいですね」
染二も菊丸に期待を寄せます。
「林家一門ということで、お囃子、はめもの、踊りの素養もありますし、女性を演じる艶と、これから大きく花を咲かせていく素養はたくさんあります。彼は48歳ですので、50代で大きく花を咲かせていけるだろうと思います。上方落語のトップに立つという自覚をしっかり持っていただきたいと思っております」
1994年に入門した菊丸の同期には桂春蝶、桂吉弥、桂かい枝、桂文鹿ら中堅の実力派が揃っています。染二が「吉弥さんは全国に通用する看板なので、お互いに刺激して、上方落語を盛り上げていってほしい」と激励すると、菊丸もこう意気込みました。
「同期で上方落語を底上げして、盛り上げたいと思いますし、その一員でいたい。上方の寄席小屋は天満天神繁昌亭と神戸・喜楽館がありますが、いずれ世代交代が来ると思います。そうなったときにしっかり活躍できるよう、ネタ数も多彩に、古典、創作の両輪でやれたらと思います」