大阪アジアン映画祭で『愛のゆくえ』上映! 宮嶋監督「家庭環境の負のサイクルをどうしたらプラスに…」

「大阪発。日本全国、そしてアジアへ!」をテーマに多彩なプログラムでアジア映画の魅力を紹介する「大阪アジアン映画祭」が3月10日(金)から19日(日)まで開催されています。今年で18回目を迎えたこの映画祭に、吉本興業製作で宮嶋風花監督の長編デビュー作『愛のゆくえ』がコンペティション部門に選出されました。3月17日(金)に大阪・ABCホールで行われた作品上映と舞台挨拶の様子を、吉本新喜劇の座員で芸人ライターの吉岡友見がレポートします。

出典: FANY マガジン
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監督自らの経験を投影した作品

“愛の唄”が鳴り響く街・北海道で暮らす幼馴染の愛(長澤樹)と宗介(窪塚愛流)。愛の実母でもあり宗介の育ての親でもある由美(田中麗奈)の愛情によって守られていた2人の世界は、由美の死により崩壊してしまう……。

壮大な北海道の自然のなか、胸が痛くなるような現実を突きつけられる物語に、時折、幻なのか現実なのかわからなくなってしまうシーンも織り込まれ、不思議な世界観に引き込まれてしまいます。愛が出会う心にいろいろなものを抱えた人々や、主演2人の透明感や目の力が印象的な作品でした。

上映が終わると会場は余韻に包まれ、拍手が起こります。舞台挨拶の進行を務める映画批評家の宇田川幸洋氏が登場し、白いワンピース姿の宮嶋監督を呼び込むと会場はさらに大きな拍手で包まれました。

宮嶋監督は「こんなにいいホールで、こんなに大きな画面で観ていただけて、大変うれしいです」と挨拶し、顔をほころばせました。

宮嶋監督は大学の卒業制作で作った1作目となる『親知らず』が、「島ぜんぶでおーきな祭 沖縄国際映画祭」の25歳以下の若手映像作家を発掘するコンペ「クリエイターズ・ファクトリー」(2018年度)でグランプリを受賞。そして、この「クリエイターズ・ファクトリー」の歴代受賞者7人が商業デビューをかけて実施されたワークショップで勝ち抜き、制作したのが今回の『愛のゆくえ』です。

出典: FANY マガジン
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宮嶋監督は「アニメーション制作はしていたけれど、映画の勉強をしてきたことがないので、映画のプロセスがわからないまま2作品とも作りました」と驚きの経歴を語ります。

自ら手掛けているという脚本は、自分の内面にあるものや経験してきたことをもとに作っているそうです。宮嶋監督が「(窪塚演じる)宗介は自分がおつき合いした人や好きになった人をぎゅっとまとめた男の子です」と話すと、司会の宇田川氏が「そうなんですか? 最初はイヤな男だと思いましたよ(笑)」と返し、会場から笑いが起こりました。

主人公2人の成長の物語

複雑な家庭環境で過ごす2人の主人公。この物語ができたのは、宮嶋監督自身の家庭環境も影響していると話します。

「孤独な子どもたちや、家庭環境の負のサイクルをどうやったらプラスに変えていけるかを考えながら作りました。そして、作品全体に社会的弱者の方がたくさん出てきます。そんな人たちを“気持ち悪い”という一言で済ませてしまう世の中がすごく嫌いです。しっかり向き合っていきたい」

作品では“カエル”が物語のキーとなり、作中にたくさん出てきます。カエルはおたまじゃくしから成長し、姿かたちが変わります。「主人公2人が成長して、姿かたちも見る世界も変わってほしい」と願う宮嶋監督の言葉は、映画のなかの登場人物でなく、“どこかにいる誰か”に向けての希望と愛に満ちた言葉だと感じました。

それぞれの境遇、環境によってこの作品の見え方も感じ方も違うと思います。みなさんにもさまざまな“愛のゆくえ”を見届けていただきたいです。

そして最後に、吉本新喜劇座員としてのこの作品の見どころをお伝えしますと、座員の大黒笑けいけいが出演しているところです。そちらもチェックよろしくお願いいたします!(笑)