「台本遅くてもみんな温かくて…」 きたみな野村が語る劇団コケコッコー新作『あっかんべー』

10月9日(金)から3日間、「COOL JAPAN PARK OSAKA」(大阪市中央区)のWWホールで上演される劇団コケコッコーの企画イベント『あっかんべー』。公演を間近に控え、出演者たちによる本読みと立ち稽古が行われる一室に、FANYマガジンが潜入しました。舞台稽古の合間に、監督・脚本を務めるお笑いコンビ・令和喜多みな実の野村尚平と、共演するオパンポン創造社の野村有志、幻灯劇場の藤井颯太郎の3人に作品への思いなどを聞きました。

出典: FANY マガジン

劇団コケコッコーは、野村尚平が率いる吉本芸人のみで構成される劇団で、2019年の関西演劇祭で4部門受賞(最優秀脚本賞、最優秀演出賞、アクター賞、観客賞)するなど、精力的に活動しています。

今年3月には、受賞作を引っ提げて東京公演を行う予定でしたが、新型コロナの影響で中止に……。代わりに企画されたのが、今回のイベントです。

『あっかんべー』は、野村が9月からYouTubeで配信している“連続ラジオ小説”の舞台化で、大阪の片隅にある映画館をめぐる人情喜劇ドラマです。

9月28日(月)の稽古では、3人にそれぞれ、企画が誕生したきっかけや共演で芽生えた思いなどを語ってもらいました。

出典: FANY マガジン

こんな状況だからこそできることを

野村尚平(以下、野村尚) コロナ禍で舞台に立つ機会が減り、表現の場も激減しました。こんな状況だからこそ、自分にも何かできることがあるのではないか。そう考えて開設したのがYouTubeチャンネルでした。そこで朝ドラみたいな連続ドラマ小説を展開することにしたんです。朝ドラって朝の8時に始まるやないですか。それを1日の始まりに視聴するのを楽しみにしてはる人、多いでしょう。僕のは、1日の終わりに見て「明日も頑張ろう」思ってもらいたいから、夜の8時に配信しています。

出典: FANY マガジン

そしたらちょうど、吉本興業から「なにか公演をやらないか」と依頼があって。じゃあ、企画していたラジオドラマを発展させて、舞台化したらエエんちゃうかなと思いました。せっかくやし、昨年の関西演劇祭でご一緒したオパンポン創造社の野村有志さん、幻灯劇場の藤井さんに声かけさせてもらいました。贅沢なメンバーが加わって、どんなオモロいことができるやろ。想像しただけでも、楽しくなりましたね。

野村有志(以下、野村有) 僕が主宰するオパンポンも、世界中にいる自分と等身大の人たちを応援したいという思いでスタートさせたので、野村作品とも通底する部分があるなと感じています。実際にご一緒してみると、物語ありきで配役するのではなくて、演者に合わせて物語を固めていく、野村(尚)さんの丁寧なものづくりにも惹かれています。

「この人にこういうことをさせたら面白いんじゃないか」という野村(尚)さんの思いに、僕らも応えたい一心で配役に臨んでいますね。

出典: FANY マガジン

藤井颯太郎(以下、藤井) コケコッコーもオパンポンも、うちの幻灯劇場も、まったく作風が違う劇団なので、一緒にやるとどうなるのかドキドキです。今回、このような機会が持てて大変光栄に感じています。

野村有 誤解を恐れずに言うと、心労のかかる作・演出がないのはとても気楽です。贅沢な体験をさせていただいています。野村(尚)さんは毎日稽古がある中で、台本も書かれて、漫才もされて、すごい。お忙しいでしょうが、どうか頑張ってくださいという気持ちでいっぱいです。

藤井 僕も台本を書くので、同じ立場の人間として、書いて、演出もしてとなると、さぞかし大変だと思います。野村(尚)さんの心労をお察しします……。

出典: FANY マガジン

野村尚 みなさん、ほんと温かくて……僕の台本の書き上がりが遅くても、「大丈夫ですよ〜」「待ちますよ〜」ってね。体たらくを晒しまくっています。

一同 笑

時代設定は「明治」から「昭和」に

大阪の下町の人情味たっぷりに、映画にかかわる人々の悲喜こもごもを描いた『あっかんべー』。YouTubeで配信しているラジオ小説も、今回の舞台も、世界観はまったく同じですが、野村尚平は「時代設定だけ変えた」と言います。

ラジオ小説は明治、舞台は昭和30〜40年代。それは、ちょうど映画館がいま以上に社交場のような意味合いを持っていた時代で、テレビの台頭とともに映画が衰退していったころでもあります。

出典: FANY マガジン

「そんな時代を生きる人々が、それぞれ生きづらさや葛藤を抱えながら、互いの人生を交錯させていく中で、大阪の下町の人情味みたいなんを表現したいと思って書いた作品です。作中の人物たちも、なにかあとに残るものを作りたくて、それぞれ苦悩し、もがいています。いまの時代の僕らと、なんら変わらない」

そう語る野村が、今回の作品で「映画」をモチーフに選んだのは、自分にとって子どものころから映画が救いだったから、とのこと。

「演劇を通じて、映画を切り口にして、舞台を観に来てくれたお客さんと同じ目線で、同じ言葉を紡いで、『明日どうやって生きようか』と一緒に考えたいなぁと思うてます」

出典: FANY マガジン

「全員、負けてるよね」

最後に改めて3人から、舞台を観るお客さんたちに向けてメッセージをもらいました。

野村尚 コロナウイルス感染の心配がありますので、いまはまだ「お越しください!」とは言いにくい状況です。今回は配信も用意していますので、遠方の方にはご自宅で楽しんでいただけたらと思います。ご来場いただける方には、漫才も演劇も“生もの”ですので、毎回異なる現場の息づかいを共有してもらいたいですね。くれぐれも無理のない範囲でお越しいただけたら、と思います。劇場でお待ちしています。

野村有 今回はコロナ対策も踏まえて、WWホールという1,000人キャパの大きな会場を用意してもらいました。これまでの役者人生でいちばん大きな劇場で演じられることになったのは、素直に嬉しい(笑)。皆さんとご一緒できるのも、野村(尚)さんの台本にかかわれるのも、こういう機会だからこそと思うので、すべてに感謝していますね。WWホール、ありがとうございます!

出典: FANY マガジン

藤井 3劇団が力を合わせ、演技の色も個性も、感性もまったく違う人々が集まって、それぞれの良いところを出し合っているのが魅力。また本作には、いわゆる“力のある人”は登場しません。お金がなかったり、コンプレックスを抱えていたり、それぞれ苦悩しながらも頑張って生きている人たちばかりです。どうやって毎日を生きようかと、頭を抱えながら生きている様子が描かれている。これって、いまの世の中、時勢にも通じる部分があるので、いろんな人に見てほしい作品です。

野村尚 全員、負けているよね。生き方が下手なりに、頑張って生き抜いている。きっと共感していただけると思います。一緒に泣きましょう!

イベント概要

コケコッコー企画「あっかんべー」presented by 関西演劇祭

日時:10月9日(金)19:00開演(18:15開場)
10月10日(土)13:00開演(12:15開場)/17:00開演(16:15開場)
10月11日(日)12:00開演(11:15開場)/16:00開演(15:15開場)
場所:COOL JAPAN PARK OSAKA WWホール
出演:野村尚平、伊丹祐貴、中谷祐太、堀川絵美、洲崎貴郁、鎌田キテレツ、萌々、野村有志(オパンポン創造社)、川添公二(テノヒラサイズ)、一瀬尚代(baghdad cafe’)、藤井颯太郎(幻灯劇場)、鳩川七海(幻灯劇場)
脚本・演出:野村尚平
チケット:全席指定 前売4,000円 当日4,500円 配信2,500円(最終日のみ)

詳細はこちらから。

劇団コケコッコー公式YouTubeチャンネルはこちらから。

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