ピース又吉“10年ぶり”新作エッセイ『月と散文』にフルポン村上が持論で暴走「ダルいゲスト呼んでもうた」

芥川賞作家でもあるピース・又吉直樹の10年ぶりとなるエッセイ集『月と散文』(KADOKAWA)が、3月24日(金)に発売されました。発売当日に東京・飯田橋の「神楽座」で開かれた発売記念イベントには、又吉が「この2人が書くものが好き」と信頼する“文学仲間”でもある後輩、フルーツポンチ・村上健志としずる・村上純が登場。新著の魅力や、又吉が抱く思いなどを語りました。

撮影:渡邊秀一
撮影:渡邊秀一

新著は、又吉が2021年から執筆活動を行っている同名のオフィシャルコミュニティ『月と散文』に寄せた文章をもとにまとめた1冊。この日のイベントは、コミュニティの会員を招いて開かれました。

朗読「もし1人の部屋に30人の水着ギャルが…」!?

2013年に発表された前作のエッセイ集『東京百景』(角川文庫)は、高校卒業後、芸人になるために上京した又吉の“ドブの底を這うような日々”と、ささやかな幸せが描かれた青春の物語で、10万部を超えるベストセラーとなりました。今回の新作『月と散文』では、人気芸人、そして芥川賞作家という、かつて夢見た生活を手に入れた一方で、相方の渡米、コロナ禍など、思いもよらぬ経験をしてきた又吉が、さまざまな出来事と感情を、センチメンタルかつナイーブに綴っています。

春らしい落ち着きのあるグリーンのスーツ姿で登場した又吉は、客席に向かって「オフィシャルコミュニティ『月と散文』に入ってくださっている皆さん、いつもありがとうございます」と挨拶し、さっそく収録作品のなかから1篇を朗読しました。

撮影:渡邊秀一
撮影:渡邊秀一

ピンスポットに照らされた又吉が朗読したのは、又吉が好きだという“もし”から始まる妄想の話。18歳のころに、出会ったばかりの相方・綾部祐二から投げかけられた「もしも1人で部屋にいるときに、水着のギャルが30人入ってきたらどうする?」という、なんとも綾部らしい“もし”から、又吉の妄想は思いもよらない方向へ展開していきます。

又吉と水着ギャルとのやりとりに、会場からは時にクスクスと笑い声が漏れながら、そのおかしくもあたたかな結末に、会場はほっこりした空気に包まれました。

恐縮した人生の人

そして又吉の呼び込みでMCを務める“1人目の村上”、しずる・村上が登場します。その村上が又吉に、自ら朗読を行った理由を尋ねると、芸人と作家という2つの顔を持つ又吉ならではの答えが。

「書いたものを読むのが好きなんですよ。僕は、舞台でネタやトークを披露することもあるし、文章も書く。この2つは分けて語られることが多いのですが、実はそこまで遠くはないというのを実践できるのが嬉しいんです」

撮影:渡邊秀一
撮影:渡邊秀一

また、『月と散文』というタイトルの由来については次のように語り、作品に込めた思いをのぞかせました。

「好きなものを名前にするのがいいなと思って、まずは”月“が思いつきました。それから、月と何にしようかなと考えたときに、小説、エッセイ、コラムなど含めたいと思ったら”散文“になりました。以前、『人間』という本を書いたときに、芸人、作家とさまざまな肩書きで呼ばれるなかで、『いや、人間や!』って思ったら、活動がしやすくなった経験があって。小説なんか、エッセイなんか、コラムなんか、漫才なんか、コントなんか、『いや、散文や!』みたいな考えに近いですね」

村上は、「“散文”という言葉がしっくりきたんですね」と納得する一方で、「又吉さんって、恐縮してきた人生の人じゃないですか」と独自の又吉論を展開します。

「だから、自分の言葉なんて“散らばった文です”みたいなニュアンスもあるんですか?」

撮影:渡邊秀一
撮影:渡邊秀一

そう続ける村上に、又吉も「そうそう」と気づきがあった様子。「(好きな)散歩にも“散”って付くし、なんとなくそぞろというか、肩に力が入っていない感じも好きですね」と答えました。

もっとも、「肩に力が入っていないといいながら、この装丁が……」と、檀上に飾られた特装版の本を手に取る又吉。

『月と散文』の特装版は数量限定で、ビロードの表紙や昔ながらの活版印刷など、こだわりの素材・技法を採用。そして通常版のカバーと表紙を手がけたのは、又吉が敬愛する漫画家・松本大洋という豪華ぶりです。

「僕は、松本大洋先生の漫画がずっと好きで、登場人物に感情移入できたり、懐かしさを感じたり……。最近の松本先生の作品『東京ヒゴロ』は、いままでのように若い人に焦点を当てた作風と違い、大人が主役の物語で、それを読んだときに感謝や嬉しさを感じました。『月と散文』も、子どものころを振り返りつつ、いまの自分も描きたかったから、松本先生ならそういったことをぜんぶ拾ってくれそうな気がしました」

撮影:渡邊秀一
撮影:渡邊秀一

「月光のように伝えている…」

ここで、遅れていたもう1人のゲストのフルーツポンチ・村上が登場。登場するなり「雨降って、川濁る」とマイクチェック代わりに一句を披露します。

又吉は今回、フルポン・村上を招いた理由をこう語りました。

「村上くんは、俳句や短歌をやったり、文章も書いていて、言葉に対して敏感だからです。本を紹介すると、それを読んだ感想を語り合ったりもできる貴重な存在です。(しずる・村上)純くんもそうですけど」

撮影:渡邊秀一
撮影:渡邊秀一

そんな素敵なラブコールを受けたフルポン・村上は、さっそく「“月”は又吉さんにとっての作品なんじゃないか」という独自の感想からスタート。きょとんとする又吉としずる・村上に向けて、こう続けました。

「この人(又吉)の思いや考えは太陽で、直接に見ると眩しすぎる。又吉さんは自分の思いを直接に伝えすぎると強くて、拒まれるかもしれないから、表現という月に反射させて、月光のように伝えている……」

ここまで聞いた又吉は、「無意識だけど、そうなっているんじゃないかな」とうなずきます。

しかし、フルポン・村上の真意はそこになかったようで、「いちばん聞きたかったのは、又吉さんにとって作品が月であるかどうかじゃないんです。この観点って、ほかの誰も言っていないですよね?」と“承認欲求”全開のイヤらしさを見せると、「ダサいな」「ダルいゲスト呼んでもうた」「主役になろうとするなよ」「おまえは太陽すぎるんだよ」と2人に次々と強いツッコミを受け、会場から爆笑が起こりました。

撮影:渡邊秀一
撮影:渡邊秀一

このほかにも、又吉がこのイベントに向けて書き上げ、オフィシャルコミュニティに先駆けて先行発表したエッセイ『「月と散文」の正しい読み方』や、フルポン・村上による俳句作品の披露などもあり、盛りだくさんだった今回のイベント。作家・又吉のファンたちも大満足の表情を見せました。


オフィシャルコミュニティ「月と散文」はこちらから。

書籍概要

『月と散文』
出版社:‏‎KADOKAWA
発売日:3月24日(金)
単行本:360ページ

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