盲学校の生徒たちが新喜劇を体感「僕らのボケがこんなふうに伝わるんだなぁ」 慶應大学×吉本新喜劇がタッグ

慶應義塾大学の塩田琴美研究会と吉本新喜劇がタッグを組み、3月27日(月)に東京都立文京盲学校(東京都文京区)で、生徒たちを前に、ミニ新喜劇が披露されました。視覚障がいがある人により多くのエンターテインメントを楽しんでもらうことを目標にしたこのプロジェクト。盲学校の生徒たちがより新喜劇を楽しめるよう、あらかじめストーリーやキャラクター、効果音などを説明してから、実際に新喜劇を鑑賞してもらいました。生徒たちも笑い声をあげ、お笑いの新たな可能性が感じられるイベントになりました。

出典: FANY マガジン
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舞台や小道具を触って体感

今回の試みは、障がい者たちに広く開かれた社会を実現するための研究を続けている慶應大の塩田琴美研究会が、64年の歴史を誇る上方のお笑い文化「吉本新喜劇」とタッグを組んだものです。“笑いで真のインクルーシブな未来を創造する!”というテーマのもと、新たなエンターテインメントを目指す取り組みの第1弾として、視覚障がい者たちが理解して楽しめる新喜劇に挑戦。盲学校の生徒たちに、新たな自己表現やコミュニケーションの楽しみ方を体感してもらいました。

この日、参加したのは文京盲学校高等部に通う9人の生徒たち。まずは今回、上演される新喜劇の簡単なあらすじが説明されたあとに「バックヤードツアー」が行われました。

生徒たちが、実際に新喜劇が行われる舞台に上がり、どのようなセットが置かれているか説明を受けます。ときにはセットや小道具に触りながら、新喜劇への理解を深めました。

出典: FANY マガジン
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この日の舞台は「ラーメン屋」。小道具のお盆が2枚ある理由について、新喜劇の作家が「お盆で頭を叩くとき、2枚で叩いたほうがいい音がするからなんです。しかも、ぜんぜん痛くないんですよ」と説明すると、生徒たちも興味深そうに聞き入ります。なかには実際に痛くないのか、自分の頭にお盆をぶつけて確認しようとする生徒の姿もありました。

また、シーンによって違う音楽について、「美人が出てくる音」や「チンピラが出てくる音」、「一目惚れしたときの音」などをあらかじめ聴いておきます。さらに新喜劇メンバーが自己紹介し、声を確認してもらいます。さらに自分の名前や容姿の特徴、着ている服の色、どんな役柄で年齢は何歳かという説明を終えたら、いよいよミニ新喜劇のスタートです!

出典: FANY マガジン
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グループワークで活発な意見交換

この日のミニ新喜劇のメンバーは、諸見里大介、もじゃ吉田、レイチェル、小林ゆうの4人。

公園内にあるラーメン屋の店長(もじゃ)とバイトの面接に来た大学生(レイチェル)、美人の客(小林)、街のチンピラ(諸見里)が登場する舞台は、盲学校の先生の名前を登場させて身内ネタで笑わせたり、ボイスパーカッション(ボイパ)や悪い滑舌など、耳で笑わせるネタが満載で、あっという間の15分間でした。

出典: FANY マガジン
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終了後は盲学校の生徒、慶應の学生、新喜劇メンバーがグループに分かれ、どんなところが面白かったか、わかりやすかったかなどを聞いていきます。生徒からは「テンポが早かったのに内容が全部わかってすごく面白かった」「(弱視でも)服の色がわかりやすくて、何をしているかがよく理解できた」など、好意的な意見が多く聞かれました。

なかには「ボイパがわかりやすかったので、僕が面接を受けるときにも取り入れたいと思います」とボケた(?)生徒に対して、新喜劇メンバー全員が一斉に「それはあかん!(笑)」とツッコむ場面も。

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コケるシーンにも挑戦!!

次はいよいよ体験会です。生徒たちが上演されたばかりの新喜劇のワンシーンを実際に演じます。

まずは、もじゃの「やめんのかい!」というツッコミのセリフを合図に、一同がコケる場面から。コケ方のコツを伝授するレイチェルの説明を聞いて忠実にマネする生徒もいれば、ちょっと恥ずかしそうに遠慮がちにコケる生徒までさまざま。最後には全員がコケをマスターし、新喜劇メンバーたちが絶賛しました。

出典: FANY マガジン
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続いて、ボケとツッコミのかけ合いで笑わせるという少し難しいシーンにも挑戦。始めは恥ずかしそうにしていた生徒たちも、新喜劇メンバーの熱心な指導とユーモアたっぷりのアドバイスにだんだんテンションが上がっていきます。最後はアドリブまで飛び出すほど、どのグループからも爆笑が起こるようになりました。

終了後の質疑応答では、生徒から「キャッチーな、心をつかむ自己紹介はありますか?」と聞かれた諸見里の自己紹介ギャグがウケて採用されるなど、新喜劇メンバーとの楽しいコミュニケーションが繰り広げられました。

出典: FANY マガジン
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生徒たちからは、「テレビでは感じたことがないようなリアルな臨場感を感じられて楽しかった」「実際にやってみて感じるものがたくさんあったし、これからもお笑いを見ていきたいと思いました」「みなさん、明るくはっきりした声で話されていて、私も楽しくコミュニケーションをとることができてよかったです」といった感想が出ました。

終了後の囲み取材では、新喜劇のメンバーたちがそれぞれこう語りました。

「生徒さんたちがすごく楽しんでやってくれたのが印象的でした。僕らのボケがこんなふうに伝わるんだなぁというのがわかって勉強になりましたし、今後の新喜劇にも生かせるんじゃないかと思いました」(もじゃ)

「音楽やリズムなど、音で笑いがとれるということがわかって勉強になったので、今後のギャグづくりにも生かしていきたい」(レイチェル)

出典: FANY マガジン
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「素直な生徒さんばっかりで心が温かくなりました。人間、笑って生きていくことが大事だと思うので、またこんな機会があったら、いろんなことに挑戦させていただきたいです」(小林)

「やる前はちゃんと伝わるのか少し不安だったんですけど、ボケとかも伝わってすごく楽しかったです。あと、僕の(ギャグの)『やばいね〜!』が、いままでは顔芸で笑わせてると思ってたんですけど、言い方も面白かったんだなぁということが再確認できました」(諸見里)

出典: FANY マガジン
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