笑福亭仁智「50周年」&「古希」記念公演に鶴瓶も登場! 「もうちょっとだけ落語家やりますわ」

上方落語協会の会長を務める重鎮・笑福亭仁智が、師匠の笑福亭仁鶴に弟子入りして50余年。加えて仁智の古希を記念して、4月2日(日)に大阪・なんばグランド花月(NGK)で『芸歴五十周年記念 古希記念公演「笑福亭仁智 独演会」』が開かれました。本来は2021年に開催予定でしたが、コロナ禍で延期になり、この度、満を持しての開催です。

出典: FANY マガジン
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「ボーっとしていたら50年経っていた」

開口一番は、仁智の3番弟子・笑福亭智丸です。仁智作の創作落語「老女A」を披露。マクラでは「師匠が舞台袖で聞いているという、その緊張感も想像しながら聞いてください」と、笑いを誘います。若い女の子をナンパしようと喫茶店を訪れた若者たちと、店主である老女とのユーモラスなやり取りで会場を盛り上げました。

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出囃子「オクラホマミキサー」に乗って仁智が登場。「ボーっとしていたら、気が付いたら50周年、経っていました」とご挨拶します。

「実際は、今日は(入門)52年と2日ですが、コロナで延びてしまって」と3年前の緊急事態宣言を振り返りながら、5年前に上方落語協会の会長に就任後、「私が会長になってから、申し訳ないくらい、ろくなことがなかった」と、次々とアクシデントに見舞われたエピソードでも沸かせました。

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そして、大阪と東京の文化の違いを取り上げた自身作の創作落語「多事争論」を披露します。大阪出身の夫と東京出身の妻が目玉焼きにソースか、しょうゆかで朝から争う姿をユーモアたっぷりに描写。その騒動はどんどん大きくなり……最後は、観客も巻き込んで楽しませました。

続いてゲストの笑福亭鶴瓶の登場です。まっすぐ高座に上がらず、一段下でスタンディングでのトークを。落語は、鶴瓶の身の上に起こったことを落語に仕立てた「私落語(わたくしらくご)」から「青木先生」を口演、次々と爆笑を起こしました。

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落語を終えたばかりの鶴瓶と仁智によるトークコーナーもありました。テーマは「上方落語のこれからを話そう」――ですが、話題は仁智の師匠で、鶴瓶の兄弟子である笑福亭仁鶴のことで盛り上がります。さまざまなエピソードに会場からも「へ~!」と驚きの声が上がりました。

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かつての仕事仲間からの花束に感無量

中入り後は、映像「仁智ヒストリー」が流されました。入門~30代、40代、50代~60代と、年代を区切ってスナップショットなどを公開。仁智のライフワークともいえる落語会のチラシなども紹介され、仁智の源流に触れたような時間でした。

そして、紋付き袴で高座へ上がる仁智。マクラでは「これを避けて通れませんわ」と3月に開催された野球のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の話題を取り上げます。そこから、エビが主人公の創作落語「EBI」を披露。エビ軍団とカニ軍団が大阪・道頓堀の戎橋ではたし合いに臨むという荒唐無稽な物語に会場は笑いが絶えませんでした。

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終演後、仁智が若かりし頃に出演していたテレビ番組関係者からの花束贈呈もあり、「人間、長いことやっていると、こんなうれしいこともあるんですね。ありがとうございました」と感無量の様子。「もうちょっとだけ落語家やりますわ。これを節目にまたコツコツとやっていきます。ありがとうございました」と挨拶すると、万雷の拍手に包まれました。

もうすぐ大阪が落語で盛り上がる!

終演後の取材では、「ホッとしているところでございます」とまずは胸をなでおろした仁智。

ネタ選びに話が及ぶと、2016年に同じNGKで開催した独演会「文化庁芸術祭 優秀賞受賞公演」で創作落語の「スタディベースボール」と「ハードラック」などを披露したので、それとかぶらないように「多事争論」と「EBI」を選んだと言います。

「今日はなごやかな雰囲気のお客さんを想像して、そんなネタを選びました。積極的に笑っていただいて、感謝しています」

出典: FANY マガジン
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また映像「仁智ヒストリー」を振り返りながら、今後に意欲を見せました。

「その年代、年代や節目で思うところがあったのか、新たに(落語会などを)始めていて。いま見たらそんな印象がありますね。70歳になりましたが、またなにかせなあかんかなと思って……。落語をつくりたいな。もっとおもろい噺をね。おもろない自分がおもろい噺をつくれるわけないと、ここ何年か陰気な時期があったんですけど、コロナも落ち着いてきましたし、小さい会場でいろんな試しをしたいなと思っているところです」

さらに、「吉本が漫才・新喜劇・落語と横並びに考えてくれたら、(落語や落語家に対する)世間の見方がガラッと大きく変わるような気がします」と、“吉本の笑福亭”としての本音を吐露。そして、いま伸び盛りの若い世代の噺家たちの成長に期待を込めて、こう語りました。

「落語界は、東京の落語ブームの後に大阪で落語ブームが起こるという、その歴史を繰り返しています。いま東京がバーッと盛り上がっていますから、きっともうすぐ大阪が盛り上がると思います」