芸歴5年目以内の超若手芸人のNo.1を決める賞レース『UNDER5 AWARD 2023』の決勝が、6月18日(日)に東京・ルミネtheよしもとで開催されます。「芸歴5年目」といえば、自分たちの方向性に迷ったり、ウケない理由を悶々と考え続けたり……いまやテレビにライブにと大活躍の先輩芸人たちも、同じように試行錯誤の日々を過ごしていたはず。ということで、今回は『THE SECOND』の活躍が記憶に新しい囲碁将棋と、『キングオブコント2023』準優勝のコットンの2組に“あのころ”を振り返ってもらいました。
今回が初開催の『UNDER5 AWARD』は、人数・年齢の制限なし、笑いのジャンルもプロ・アマも不問、出場資格は芸歴5年目以内だけという新しい賞レースです。総勢1797組がエントリーし、4月から全国で予選が繰り広げられてきたこの大会も、いよいよ決勝。大先輩である囲碁将棋(2004年結成:文田大介、根建太一)とコットン(2012年結成:西村真二、きょん)は、この戦いをどう見ているのか――。
6月18日(日)の決勝は、吉本興業のライブ配信サービス・FANYオンラインチケットで無料配信されます。
根建「毎日パチンコ、麻雀。一生その生活でいいと」
――皆さんが芸歴5年目までのころ、コンビとしてどんな状況だったのか聞かせてください。2004年デビューの囲碁将棋さんは、2008年に初めて『M-1グランプリ』の準決勝に進出しましたね。
文田 2008年くらいだと、「準決勝までは上がれるな」くらいの感じになってましたね。劇場では全然ウケなかったんですけど、賞レースだけは調子がよくて。M-1だけが楽しみでした。
根建 当時、準決勝に行って嬉しかったんですけど、そこでゴールだと思っていました。本当になんの欲もなかったんで、5年目は毎日パチンコ打って、麻雀して、その生活で一生いいと思ってました。
――(笑)
文田 そのころ、根建がほかの同期のヤツともユニットで出ていて、3回戦が(囲碁将棋と)同じ日だったよね。
根建 囲碁将棋として頑張んなきゃいけないのに、予選出番の10組前くらいに友だちと舞台に立つっていう、プロ意識ゼロの行動をしていました。いま思うと本当にありえないじゃないですか。それくらい、遊びだと思っていたんですよ。
文田 いや、(根建は)ずっとプロ意識ないよ。賞レースの決勝にバイクで来ちゃうんだから。優勝する気ないじゃん。優勝したら、ぜったいバイクで帰れないの知ってるじゃん!
単独ライブが同級生のいたずらで…
――(笑)。コットンさんは、2012年にラフレクランを結成(2021年にコンビ名を「コットン」に改名)。2014年に『キングオブコント』準決勝進出、2016年に『NHK新人お笑い大賞』で準優勝しました。
西村 ……人気があったピークの時代ですね。
――(笑)
西村 僕ら、元超絶アイドル芸人で、板に付く(舞台に立つ)だけで客席がザワついてたんで。
文田 あのころ、吉本の雑誌の男前特集で、にっくん(西村)が「ウチは、相方もカッコいいです」って、アイドル芸人的なコメントしてたよね?
西村 当時は雑誌の撮影で、両手合わせてしゃがんでポーズしてましたから。
きょん あったねー(笑)。
西村 囲碁将棋さんと逆で、劇場ではウケるけど、賞レースではちょっと……みたいな時期が続いてました。僕ら、決してネタづくりをサボったことはないんですけど、当時の賞レースのお客さんって、ちょっと独特なところがありましたよね。オレらだけ「吉本の人気者が来た」っていう風をブワーッと感じていました。(アウェイの雰囲気で)「声ちゃんと届いてる?」みたいな。
文田 芸歴5年目くらいのとき、一緒に単独ライブやったもんね。
西村 当時、「変わりたい!」と思って、文田さんには作家のチーフとして入ってもらいました。
根建 にっくんの友だちがぶち壊した単独だっけ?
きょん そうです!(笑) ストリートミュージシャンと募金をお願いする人のコントで、ボケに入る手前で(客席から)「ウォーイ!」「イェーイ!」みたいな声があって。漫才だったらイジれますけど、コントっておりられない(コントの世界から逸脱できない)じゃないですか。ビックリしました。
西村 その友だちは、高校の同級生で、ふざけるのが大好きなグループだったんですけど、「西村、いっとこ!」って言われたら、僕が全校集会で何かやる……みたいなことしていて。本当に十何年越しにルミネの客席から「いっとこ!」って声が聞こえてきて……。
根建 最悪!(笑)
文田 オレ、袖で見てて「満員の客席なのに(空気が)重いな」と思ってたのよ。そのネタで、「あいつらがこの空気の原因か」って気づいて。でも、そのネタ終わりに「財布なくした」って帰ったんだよね。そっから巻き返せて盛り上がったからよかったよ。あの空気のままいってたら、マジで終わってたし、満席で恥かいてた。
きょん 花見の途中に来ていたらしくて、お客さんも「演出かな」と思ったみたいですね。あそこからよく持ち直しましたよ~!
『THE MANZAI』2回戦でピクリともウケず驚愕
――5年目までのころは、賞レースについてどんな印象を持っていましたか?
きょん めっちゃ憧れがありましたね。当時、芸歴1、2年目の勘違いなんですけど、劇場ではすごくウケていたし、『THE MANZAI』(M-1休止中の2011~2014年に開催された漫才の賞レース)の1回戦も反応がよくて、このまま受かるだろうなと思っていたんですよ。2回戦当日、2人ともウケる気満々で(ネタ合わせのため)カラオケに入ったんですけど、にっくんはもともとアナウンサーだったんで、マイクで「今宵、ルーキーがやってきた! ラフレクラン!」ってアナウンスの練習もしてね。
文田 何の練習してんだよ。
きょん いざ2回戦出たらピクリともウケなくて……。大勘違いしてましたね。
文田 むかしの賞レースってクセあったよね。若手の戦い方は、変化球を投げるしかなかった。
西村 特に『THE MANZAI』の時期は変化球しか受け入れられなかったです。異名がつけられない漫才師は、落とされていたような気がしますね。
文田 『THE MANZAI』は芸歴制限がなかったから、若手の正統派では(予選を勝ち上がるのは)無理だった。(ベテランの先輩芸人とは)キャリアと人気が違うからね。
西村 僕ら、第1期の『M-1』が終わって『THE MANZAI』の時期にデビューしたんですけど、全員が、漫才をどう崩してどうフリに使うか、っていうメタ漫才をやりまくってました。僕らもメタ漫才作ってましたね。
文田 (『THE MANZAI 2012』で披露された)アルコ&ピースさんの「忍者」ネタみたいなやつね。
賞レースでしか味わえない喜びや悔しさがある
――若手が活躍できる大会『UNDER5』の印象を教えてください。
文田 芸歴が浅い子でも正攻法でいけるから、フォーム崩さずにやれるのかなって思いますね。
西村 僕らの時代にこの大会があったら絶対に出てます。『UNDER5』は、囲碁将棋さんたちも出られていた『THE SECOND』の(出場資格)芸歴16年以上と対極になっていて、ひとつ大きなムーブメントになるんじゃないかなと思いますね。
きょん 僕らが5年目ぐらいのときって、『KOC(キングオブコント)』とか『M-1』を観ていても、「あー、これはもう僕らは出られないんだろうな」「上のお兄さんたちが出る大会なんだろうな」って思っていました。本当に賞レースコンプレックスがあった時期で、雲の上の人たちの戦いを見ている感じ。コツコツやっていくしかないなって……。だから、自分たちが5年目のときにこの大会があったら、「もしかしたら優勝狙えるかもしれない」って思えたかもしれないですね。
文田 5年目ぐらいのときのコットンって、賞レースにめっちゃ卑屈だったもんね。いまはボケで言えるけど、もっとシリアスな感じだった。
西村 2016年にNHK(新人お笑い大賞)の決勝に行ったくらいで、ガラッと変わりましたね。
――やはり、賞レースは若手にとっても最大のチャンスであり、大きい存在なんですね。
根建 僕ら『THE SECOND』で「(活躍できる)機会をいただける」という素晴らしい経験をさせてもらいましたけど、『UNDER5』もそうなると思います。出場者も5年目以内に限定されるなら活躍できる可能性が高まるし、そもそも打席に入る機会を与えてくれるって、幸せなことだと思いますね。
西村 賞レースをきっかけに売れる芸人って多いじゃないですか。いまMCされている方々も、賞レースで活躍した人がほとんど。だから、絶対に目指すべきところだと思います。出ないのもひとつの選択肢だけど、そういうヤツにこそ出てほしい。たぎるものがあるはずだから。
文田 全国大会だからね。
西村 囲碁将棋さんって、日本一を決める賞レースのことを「全国大会」って言うんですよ(笑)。もちろん、SNSとかほかのジャンルで活躍するのも素晴らしいんですけど、全国大会に参加しなきゃ味わえない悔しさとか喜びとか絶対あると思います。
文田 たまに賞レースで「ネタがない」とかで出ない芸人いるじゃん。本人はそれでいいけど、応援してる客からしたらたまったもんじゃないよね。「ウチの学校の野球部すげえ練習してんのに、公式戦出ないんだ!」みたいな。
きょん 確かにたまったもんじゃないですね。応援しがいがない(笑)。
文田 「客商売だから」って思う(笑)。
西村 あと、僕らのちょっと上に囲碁将棋さんの世代がいて、さらに上に東京NSC(吉本総合芸能学院)5期生(ピース、平成ノブシコブシほか)の世代がいて、その上には品川庄司さんの世代(NSC東京1期生)がいる。正直、邪魔なんですよ!(笑) だから、『UNDER5』に出る芸人にとって、オレらクソ邪魔でしょ!?(笑) いま上が詰まって若手が飽和状態のなか、第1回の優勝者はたぶん売れると思うし、希望の大会になってほしい。
文田 ただ、5年目以内の大会が作られたってことは、「あんたらが『M-1』とか『KOC』の決勝に出られないから」ってこと。5年目以内の芸人全員ナメられたってことでもあるよね。それはちょっと奮起してほしい。やっぱり「優勝したらテレビ出られるラッキー!」じゃなくて、「『UNDER5』も勝つし、『M-1』とか『KOC』も決勝に出る。ナメんなよ」という気持ちは持ってほしいです。
文:浜瀬将樹
『UNDER5 AWARD 2023』公式サイトはこちらから。