ビスケットブラザーズを育てた「カルト映画」と「お笑いDVD」【あなたは誰に憧れ芸人に?⑪】

あなたは誰に憧れ芸人に?

芸人を志したきっかけや憧れた芸人、そして芸人になるまでの道のりなどを語り尽くしてもらうインタビュー
(イラスト:ネゴシックス)

芸人を志したきっかけや憧れた芸人、そして芸人になるまでの道のりなどを語り尽くしてもらうインタビュー
(イラスト:ネゴシックス)

いまをときめく芸人たち……周囲から一目置かれる存在になった彼らにも、かつて「こんなふうになりたい!」という憧れの存在があったはず。そんな売れっ子たちに、芸人を志したきっかけや憧れた芸人、そして芸人になるまでの道のりなどを語ってもらうインタビューシリーズ『あなたは誰に憧れ芸人に?』。今回は、『キングオブコント2022』王者、摩訶不思議なコントで別世界へいざなってくれる、ビスケットブラザーズ(きん、原田泰雅)の登場です!

出典: FANY マガジン
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TSUTAYAの棚の端から端まで

――まず、おふたりは誰に憧れて芸人になろうと思ったのでしょう?

原田 子どものころは母親の影響が大きくて、最初の憧れは映画『ネバーエンディング・ストーリー』(1984年)とか、そっちかもしれないです。あと、漫画家にも憧れていて、藤田和日郎さんの『からくりサーカス』とか好きでした。そこに乗っかって、『笑う犬の冒険』(1999~2001年、フジテレビ系)……。
だから、ざっくりと「このお笑い芸人さんに憧れて」というよりは、いろんなものを見ては憧れて、「ビッグになりたい」と思っていました。それで最終的に、高校生のときに千原兄弟さんのDVD『プロペラを止めた、僕の声を聞くために。』を見て、「お笑い、やってみようかな」に着地しました。だから、ブレブレかもしれないです(笑)。

——いろいろな刺激から、原田さんのセンスが育まれていったんですね。NSC(吉本総合芸能学院)大阪校33期に入学した動機はなんですか?

原田 僕、高校が芸能文化科で、令和喜多みな実の野村(尚平)さんとかロッチのコカド(ケンタロウ)さん、宇都宮まきさん、ネコニスズのヤマゲンさんが卒業されていたから、なんとなくお笑いのルートがあったんです。で、僕の学年の1個下にヤマゲンさんの弟がいて、双子なんですけど、それが映画監督の(山元)駿と(山元)環で、「お笑い、やってみたら?」と言われたんです。
そのときに「こんな世界もあるで」って見せてくれたのが、千原兄弟さんのDVDやったんです。それで、「こんな世界があるんか!」とNSCに入ることにしました。

出典: FANY マガジン
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——お笑いのルートが、すぐそばにあったんですね。きんさんが憧れた芸人さんは?

きん 僕、めっちゃ芸人さんが好きなんですけど、NSC(大阪)8期くらいから13期生くらいの方々に、かなり影響を受けてるんです。FUJIWARAさん、宮川大輔さんくらいの世代から、ブラックマヨネーズさん、チュートリアルさん、野性爆弾さん、次長課長さん、東京ダイナマイトさんに憧れてました。でも、いちばんでっかいのは、ダウンタウンさんかもしれないです。

——きんさんは出身が香川県ですが、どんなテレビ番組を見て影響を受けましたか?

きん テレビ番組というより、基本はTSUTAYAで借りていろいろな芸人さんのDVDを見ました。高校生のときはもう、DVDの棚の端から端まで借りてめっちゃ見ましたよ。『緊急特別 DVD 追悼ケンドーコバヤシさん』は異質やったので、よく覚えてます。

——お笑い熱がすごかったんですね。NSCに入学しようと思ったきっかけは?

きん 僕はもう小学生くらいから「芸人になりたい」と言ってました。香川県でも新喜劇は放送していて、寡黙な親父が新喜劇だけは笑ってたんですよ。それを見て、小学3年生には芸人になろうと決めてましたね。で、高校を卒業してすぐにNSCに入学しました。

出典: FANY マガジン
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原田 僕は高校自体が芸能系の学科やったから、まわりも落語家を目指す人もいれば、音楽関係とか芸能方面に進む人が多くて、僕もあまり抵抗なくNSCに入学したけど、きんの場合は香川から出てきたっていうのが結構な感じやな、と。

きん まわりは大学に進学するし、僕はNSCにって感じです。NSCも学校感があるし。

原田 そのときって、「無理やったら……」みたいな可能性ってよぎってるの?

きん 「無理なら無理でしゃーない。いま行きたいんやから行こう」ていう感じかな。

ニッポンの社長・辻の言葉に救われた

——NSC入学後に、芸風などで影響を受けた人はいますか?

原田 僕は、同期で、いまはYouTubeラジオ(『ビスケットブラザーズのバースデースーツラジオ』)とかで作家をやっていて、14年くらい一緒に住んでるニキ(ケイシ)ですかね。それと、ニキとトリオを組んでいた新喜劇の小西(武蔵)さん。小西さんは年齢が僕らの10歳上なんですけど、NSCのときから「お前らは若いし才能があるから」とめっちゃ映画を観せられたんです。

きん 小西さんはNSCに入る前に靴屋の店長さんをしていて、ファッション関係の広告をつくる方々とめちゃ仲良かったので、「いき切った人はこういう映画を見るんや」って18歳の僕らに映画をいっぱい観せてくたんですよ。

出典: FANY マガジン
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原田 「お前らは、とにかくセンスを磨け」って、カルト映画とか、ただただ音が薄~く流れる映像とか……。

きん ヘンな映画をめっちゃ観せられました。そこから僕は(小西と)8年くらい一緒に住むことになるんですけど、当時から僕らのことを「いちばんおもしろい」ってめっちゃ買ってくれてたんです。いま考えたらスゴイなと思います。まったく何も完成してないのに。

原田 ニキはニキで、特殊な音楽とか、めちゃ知っていて。だから当時は部屋ではお笑いのDVDをニキと一緒に観るか、映画観てるか、音楽を聴いてるか。そんなんをずっとやってましたね。

きん あと、先輩では(ニッポンの社長)辻さんにはすごいお世話になりました。当時、辻さんは5人くらいでルームシェアをしてて、そこに呼んでもらってデカい鍋を全員で囲むっていう。

原田 僕らがまだ、ネタが全然ウケない、演技も設定も小道具も荒くて、「見てられるか!」って言われてるようなときに、辻さんが舞台袖で「お前らおもろい」って言ってくれて。

きん 辻さんって、原石を見抜くのがすごいんですよ。まだ整っていなくても、ウケてるとか、誰に評価されているとか関係なく見てくれる。辻さんの言葉で救われた芸人は、めっちゃ多いと思います。

出典: FANY マガジン
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野性爆弾・くっきー!の泣けるくらい“芸人らしい”優しさ

——いまやバラエティ番組や舞台でも活躍する機会が増えましたが、「すごい」と思った芸人さんはいますか?

きん 僕は、ずっと憧れていた(野性爆弾の)くっきー!さんが、ほんまに優しい方やなって。泣けるくらい優しいです。

原田 まだ『キングオブコント』を獲る前、「お前ら、大阪でなんか賞獲ってたよな? 世も末やな」と声かけられたり、なんかすごいチェックしてくれてる。

きん 一緒の舞台に立たせてもらったときも、絶対に僕ら若手がスベらないようにしてくれはって。こんなこと言うと営業妨害かもしれないですけど(笑)、“芸人さんのやさしさ”やなぁと思いましたね。かっこいいです。

原田 僕は、トータルテンボスの大村(朋宏)さんです。去年の『キングオブコント』で決勝進出したときに、大村さんが僕らをインタビューしてくださったんですけど、しゃべり方なのかわからないんですけど、なんか部屋全体がエロい雰囲気になったんですよ。エッチというか色気? ムーディーなエロい空気に包まれて「このぶっとそうな感じ、なんや!?」と思いましたね。鼻血が出そうになりました。

出典: FANY マガジン
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——ちなみに学生時代、芸人になる前に憧れていた芸人さんたちには会えましたか?

きん 僕はほとんどの方に会うことができました。

——きんさんは、憧れの芸人さんがたくさんいましたが、緊張しませんでしたか?

きん 逆にしゃべりやすかったです。なんせずっと見てたし、その人たちに育ててもらった笑いなので。それに、僕が見てきたまんまやから、しゃべりやすいのかもしれません。(宮川)大輔さんもめっちゃ優しく話しかけてくださったんですけど、僕が着替えだしたら「なんやねん、その体型!」って。別にカメラが回ってないのに、まんまじゃないですか(笑)。それがうれしかったです。

原田 僕も千原兄弟さんに会えてます。ジュニアさんに初めてお会いしたのは飲みの席やったんですけど、人生で初めてくらい、カチンカチンになってしまいました。会えていないのは、『笑う犬』で見ていたネプチューンの原田泰造さんかなぁ。僕、“原田泰”まで一緒なんで、早くお会いしたいですね。

公演概要

『僕たちの好きなコント5~旬のコント師が今、大好きなネタを披露~』

日時:8月11日(金) 開場15:45 開演16:15
場所:COOL JAPAN PARK OSAKA TTホール
出演:ジェラードン(アタック西本・かみちぃ)、男性ブランコ、ビスケットブラザーズ、コットン、レインボー、かが屋(マセキ芸能社)
チケット:配信2,000円
※劇場チケットは完売

FANYオンラインチケット(配信)はこちらから。

イベント概要

「真夏のラフフェス in 森ノ宮2023」

開催日:8月9日(水)~8月15日(火)
会場:COOL JAPAN PARK OSAKA

公式サイトはこちらから。

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