仮想空間のノンスタ石田を相手に漫才疑似体験→プレゼン能力は向上する!? 東大×吉本の共同研究「VR漫才」の可能性

吉本興業と東京大学バーチャルリアリティ教育研究センターが共同で研究を進めている「VR(仮想現実)漫才」プロジェクトが、9月12日(火)〜14日(木)の3日間にわたって東京・八王子の「東京たま未来メッセ」(東京都⽴多摩産業交流センター)で開催された『第28回 日本バーチャルリアリティ学会大会』で発表されました。仮想空間上でNON STYLEになりきって漫才ステージを疑似体験することで、ふだんの「掛け合いプレゼン力」が向上するか調べたい、というこの研究。果たして、その成果とは――!?

出典: FANY マガジン
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仮想空間のノンスタ石田にツッコむ!

「日本バーチャルリアリティ学会」は、バーチャルリアリティ(仮想現実)に関連する技術と文化に対する貢献を目的として1996年に設立。年に1回開催される「日本バーチャルリアリティ学会大会」では、バーチャルリアリティの学術に関する講演とともに、実験やアートのデモンストレーションが行われます。

大会最終日の14日のデモ展示では、吉本×東大「VR漫才」のデモンストレーションが登場しました。

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「VR漫才」でユーザーは、仮想空間上でNON STYLEの井上裕介になりきって、相方の石田明との漫才を疑似体験します。ヘッドマウントディスプレイを装着すると、目の前に舞台とサンパチマイクが出現。ユーザーのアバターとして登場する井上が、隣にいる仮想空間の石田との漫才を始めます。

とは言っても、難しいことはありません。ユーザーがやることは、目の前に流れてくるテロップのセリフを読むだけ。井上になりきってセリフを言うと石田が返してくれるので、まるで自分がNON STYLEになったかのような気分を味わえます。

実際にVR漫才を体験した人に感想を聞くと、「恥ずかしかったけど、隣に石田さんがいて、本当に相方になって漫才をしている気持ちになれた」と、漫才師の疑似体験を楽しんだ様子でした。

出典: FANY マガジン
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漫才の疑似体験で“掛け合いプレゼン力”アップ!?

この「VR漫才」プロジェクトにかかわる研究者らによるパネル討論では、東京大学バーチャルリアリティ教育研究センターの雨宮智浩教授らが登場。宮本道人特任研究員が「『掛け合いプレゼン力』向上のためのVR漫才トレーニングの開発」と題して、VR漫才で鍛えたいと考えているコミュニケーション能力について説明しました。

「『どうすれば、緊張せずに人前で話すことができるのか』という思いが根っこにあります。日本人は特に、人前で話すことが苦手な人が多いと思います。僕自身、人前だと緊張してうまく話せないことがありますが、失敗を繰り返すと、誰でも人前で話したくないと思ってしまいますよね」

出典: FANY マガジン
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「対して芸人さんは、人前で話すのがすごくうまい。漫才はその最たる例だと思います。その漫才を疑似的に体験することで、“人目が気になって話がうまくできない”というケースが改善されるのではないかと考えました」

「たとえば会議では、上司に進捗を報告する場面は多いですが、実は一方的に話すだけではなく“掛け合い”になっていて、相手の反応に合わせて、こちらも即座に打ち返す必要がある。これは現在定着したオンライン会議でも同じです」

そこで、“掛け合いプレゼン力”向上のためにVR漫才トレーニングを開発しようと、白羽の矢を立てたのがNON STYLEだったと話す宮本氏。今後は、この仮説の有効性について実証実験していきたいと意気込みを語りました。

さらに同じく東京大学の谷川智洋特任教授からは、サービス業向けに開発された接客業務訓練システムについて紹介があり、それをベースに漫才VRコンテンツ制作などへの転用を容易にするためのプラットフォームの紹介がありました。

出典: FANY マガジン
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また、同じパネル討論に参加した明治大学大学院 経営学研究科の児玉麻衣子特任講師は、宮本氏の話を受けて、「VR漫才は掛け合いプレゼンテーション能力を高めるのか」「VR漫才の可能性」といったテーマを説明。

VR漫才を体験した人としない人を比較した場合、体験した人のほうがコミュニケーション能力やユーモアセンスが向上するはずだという仮説のもと、ビジネスにおけるユーモアセンスの重要さを解説しながら、つながりや創造力といった点でVR漫才体験がビジネスにも役立つのではないかと指摘します。

そして、「今後、実証実験の結果、これらの仮説が実証されれば、学生のみならずビジネスパーソンにも有効なアプリケーションになる可能性を秘めています」と語りました。

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ノンスタ石田「VRには無限の可能性があると思う」

ここで、VR漫才の“相方”として登場したNON STYLE・石田のインタビュー動画が紹介されます。

ふだんからNSC(吉本総合芸能学院)の講師を務め、芸人を目指す若者に笑いを教える立場でもある石田。漫才を指導する際のポイントについて、「まずは(漫才のなかの)会話をどれだけナチュラルにするかが大事」だと言い、そのためには適切なサイズの音や目線、間でリアクションする必要があると話します。

「漫才のどういう点がプレゼンに役立つと思うか」と聞かれると、こんな持論を語りました。

「どちらも準備してきたことを話しているが、漫才は準備してきたことを隠す。準備してきたことを、まるでいま考えて話しているかのように見せることで、鮮度を上げているんです。プレゼンに足りないのはそこだと思う。鮮度が低いから言いたいことが伝わりにくいんじゃないか。いま自分が思ったことを話しているように見せることができれば、伝わり方も違ってくるのではと思う」

出典: FANY マガジン
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また、間の取り方も重要だと話す石田は、「漫才では、お客さんの笑い声がおさまってきたタイミングで次に展開する。そうすることで、お客さんにも参加意識が芽生えていると思う。お客さんに興味を持たせること、意見を持たせることは難しいが、そこが大事」だと指摘します。

さらに、「漫才はお客さんの想像力で成り立っているし、漫才というのは想像力を育てるものだと思っている。VRはそれを補うものになるのかなぁ……?」と話し、「漫才もそうですけど、VRも、ここが宇宙だと言えば宇宙になるし、『ここにリンゴがあります』と言えばリンゴがある。だから、VRには無限の可能性があると思います」と、VRと漫才の共通点やVR漫才の可能性にも言及しました。

パネル討論の最後に、児玉氏は「お笑いは劇場に観に行くほうが楽しいと思っている」と言いながら、「VRは世界観に没入できるところがすごいと思う。研究は始まったばかり。VR漫才にはまだまだ多くの可能性があると思います」と締めくくりました。

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