ピストジャムが綴る「世界で2番目にクールな街」の魅力
「シモキタブラボー!」かっこつけすぎ

シモキタブラボー!

「世界で2番目にクールな街・下北沢」で23年、暮らしてきたサブカル芸人ピストジャムが綴るルポエッセイ。この街を舞台にした笑いあり涙ありのシモキタ賛歌を毎週、お届けします。

「世界で2番目にクールな街・下北沢」で23年、暮らしてきたサブカル芸人ピストジャムが綴るルポエッセイ。この街を舞台にした笑いあり涙ありのシモキタ賛歌を毎週、お届けします。

出典: FANY マガジン
出典: FANY マガジン
イラスト:ピストジャム

かっこつけすぎ

こたつ机の上に置いた目覚まし時計に目をやると、19時08分。ぎりぎりやけど、まにあいそう。(もともと18時半には出るつもりやったけど、仕事が終わらんかった)

窓から外の様子を確認すると、一時的に雨がやんでた。部屋を出て、自転車に飛び乗る。(一時的って書いたんは、あとになってわかったことで、このときは「雨やんだやん! ラッキー」と思ってた。つまり、帰りはずぶ濡れになった)

雨あがりの道路と乾いた自転車のタイヤが、ふだんとは違う音を奏でてる。みちみち、みちみち、みちみち。(マジでそう聞こえた)

濡れた砂利がゴムにはじかれる音。ちょっと楽しい。(昨日タイヤに空気入れたから、それも関係してるかも)

進行方向に水たまりを発見。でも、そのまま突入する。足をあげ、はねる水をよける。(これは、まわりに人がおらんかったら子供のころからかならずやる。当方45歳です)

出典: FANY マガジン
出典: FANY マガジン
イラスト:ピストジャム

セーフ。スニーカーにもかかってない。今日は調子いい。(自転車に泥よけ付けてないから、後輪がはじいた水で背中はめっちゃ濡れた)

ERAに行くのはずいぶんひさしぶり。前に行ったのは誰のライブやったっけ。思い出そうとしたけど、全然出てきいひん。そういえばGARAGEなくなってんな。(代わりに出てきたんは、一番街商店街の脇を入ったところにあった老舗ライブハウスのこと。2年ほど前に閉店した。たぶんコロナのせい)

今日はERAが入った5階建てのビル一棟をまるごと貸しきったイベントがある。その名も『デブリンピック』。(太った人が出るわけちゃうで。でぶコーネリアスEXってバンドが主催で、この日はスポーツの日やったから)

後輩の大友達人がベースを務めるでぶコーネリアスEX(※以下「でぶコー」)は、先日12インチのアナログ『Your Of Jamaica』を発売した。今日は、そのレコ発。(レコード自体は先月発売されてて購入済み)

集まった出演者は、バンド、ミュージシャン、DJなど40組。ビル内の音楽スタジオ、イベントスペースすべてが会場になり、ずっとどこかしらでライブをやってるフェスみたいなイベント。(この日は、出演者に知り合いが三人も!)

 チケットを買って入場したら、19時19分。SILENCE HOLDER(バイト先の佐野さんのバンド。※以下「SH」)のライブは19時20分から。ダッシュで2階に向かう。(ちなみに5階では一休さんという友人も同時刻からDJで、一瞬どっちに行こうか迷ったけど、SHのライブ後もまだDJしてるから先にSHに行くことにした)

SHのライブは初やけど、佐野さんのライブを観るのは2回目。(前に後輩の落語家・三遊亭鳳月と寄席やったときに、佐野さんにもアコギの弾き語りで出てもらったことがあって、そのときに一回観た)

佐野さんのピンボーカルは激アツやった。(頭に血管が浮き出るくらいの絶叫。目の前で爆発が起こったんかと思うほどの迫力。前に観た弾き語りと全然印象が違う。気持ちが入ったMCも最高やった。あと最後のダイブも)

ライブ後、すぐに5階へ。フロアで喫茶一房(夜はスナック一房になる)のオーナーの松田さん(昔ピザハットで一緒にバイトしてた)と会う。(一休さんから松田さんが来ることは聞いてたから会えるの楽しみにしてた)

一休さんのDJかっこよかった。(日本のヒップホップがメインで、ビートだけで聴かせるところもあったり、ラッパーのチョイスも渋かったり、次は何がかかるかなって最後まで楽しませる魅力があった)

一緒に出演してた利休さんのパフォーマンスも笑った。(祭りのお囃子で使う横笛を吹いたり、小さい鐘を打ったり、一休さんが次のCDを選んでるときに「ただいま一休、選曲中!」ってラップしたりしてた)

でぶコーのライブは、言わずもがな大盛りあがり。(1曲目から最高潮。反町隆史さんの『POISON 〜言いたい事も言えないこんな世の中は〜』とかマイケル・ジャクソンの『今夜はビート・イット』も聴けた! フロア後方で観てたんやけど、10分に一回くらい、前方でもみくちゃになりながらも必死にビデオカメラをまわしてる一休さんの姿が見えて笑けた)

やらなあかん仕事が残ってるから、でぶコー終わりですぐに出たけど『デブリンピック』いいイベントやった。また来年もスポーツの日にやってくれへんかな。(あの組数をしきるのはほんまにたいへんやと思うけど)

あと、今日は思わぬ収穫があった。5階にあがる外階段から、なんと東京タワーとスカイツリーが一緒に見えた!(しかも、その真ん中には新宿の夜景も!)

シモキタから東京タワーは見たことあったけど、スカイツリーまで見える場所があるとは知らんかった。(やっぱりシモキタ最強やな)


このコラムの著者であるピストジャムさんの新刊が2022年10月27日に発売されました。

書名:こんなにバイトして芸人つづけなあかんか
著者名:ピストジャム
ISBN:978-4-10-354821-8
価格:1,430円(税込)
発売日:2022年10月27日

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出典: FANY マガジン
出典: FANY マガジン

ピストジャム
1978年9月10日生まれ。京都府出身。慶應義塾大学を卒業後、芸人を志す。NSC東京校に7期生として入学し、2002年4月にデビュー、こがけんと組んだコンビ「マスターピース」「ワンドロップ」など、いくつかのコンビで結成と解散を繰り返し、現在はピン芸人として活動する。カレーや自転車のほか、音楽、映画、読書、アートなどカルチャー全般が趣味。下北沢に23年、住み続けている。