実行委員長の南野陽子「練りに練った作品を私も客席で楽しみたい」 5年目の『関西演劇祭』開幕

「つながる演劇祭」をテーマに今年で節目となる5回目を迎えた「関西演劇祭」が、11月11日(土)から大阪・COOL JAPAN PARK OSAKA SSホールで始まりました! 今年も有名無名を問わず、全国から多数のエントリーがあった劇団から厳選された10組が登場。開幕初日には開会式が開かれ、実行委員長の女優・南野陽子、初回からフェスティバル・ディレクターを務める板尾創路をはじめ、審査員を務めるスペシャルサポーター、そして参加劇団の代表者らが、演劇祭にかける思いを熱く語りました。

出典: FANY マガジン
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学生から50代まで個性派劇団10組が集結!

開会式の司会進行を務めたのは、ピン芸人の木尾モデルと佐月愛果(NMB48)。参加する劇団は「Artist Unit イカスケ」「演劇組織KIMYO」「餓鬼の断食」「劇団イン・ノート」「劇団FAX」「バイク劇団バイク」「PandA」「MousePiece-ree」「無名劇団」「ヨルノサンポ団」の10組です。

「Artist Unit イカスケ」は「もうすでに楽しいです! 開始10分でこんなに楽しかったら、(公演最終日の)18日はどうなるのか!」とハイテンション。

「演劇組織KIMYO」は「これ(関西演劇祭)はまるで演劇の甲子園ですね! COOL JAPAN PARK OSAKAの砂を持って帰りたいと思います」と挨拶すると、ほかの劇団から「負けてるやん!」と鋭いツッコミが飛びました。

「餓鬼の断食」は、地元関西から唯一の学生劇団。最年少ということもあって、「後輩に求められることは、先輩の背中を追い越すだけ」と堂々と意気込みを語ります。そして「高速の関西弁でまくしたてて、演劇祭を後輩としてぶち上げていきたいです」と気を吐きました。

「劇団イン・ノート」は東京から参戦。「この場にいられることが、たいへん光栄です」と緊張気味な様子で、「未熟者ですが、この場で新しい出会いをつかんで、いろんな人とつながれていけたらなと思います」と思いを語りました。

「アクセル全開で行きます! ブンブン!」

京都の「劇団FAX」は、「細々とやってきた我々が、こんな大舞台に出していただけて恐悦至極」と喜びを表すと、「しっかりストレートな会話劇を楽しんでいただけたらなと思います」とアピールしました。

「バイク劇団バイク」は、ピン芸人の大谷健太が1人で開会式に参戦。みずからの劇団を「ベールに包まれたグループ」と紹介しながら、「演劇祭、アクセル全開で行きます! ブンブン!」と吠え、木尾から「わかりますよ!」とツッコまれていました。

「PandA」は福岡から参戦のベテランです。「近年、演劇界はいろいろと大変だったんですが、演劇をやっている若者たちがキラキラしている姿を見て、もうすでにおじさんは泣きそう」と感極まっている様子。「僕らとMousePiece-reeさんで、だいぶ平均年齢をあげちゃってるんですけど、若者のキラキラとおじさんのギラギラで盛り上げていきたい」と意気込みます。

その「MousePiece-ree」も、20年以上のベテラン。「50過ぎのおっさん3人が21年やっているMousePiece-reeです。若い人たちに負けないように、エネルギッシュにいきたい」とアピールしました。

「無名劇団」は、関西の高校演劇を母体にした劇団。「当時、高校演劇部が全国大会で準優勝した作品をリメイク上演することになりました」と語り、「『高校演劇は泥臭くてカッコいい』と思ってもらえるようなお芝居がしたい」と自らを奮い立たせます。

関西を中心に活動している「ヨルノサンポ団」は、まさにコロナ禍の真っただ中だった3年前に旗揚げ。「小規模でやっていたので、まさかこんな舞台に立てるなんて夢のようです。出るからには勝ちたい」と気合十分のコメントでした。

「5年」はひとつの節目

一方、演劇祭の実行委員長を務める南野から、出演する劇団に向けて激励の言葉が贈られました。

「練りに練られて今日、来られていると思います。緊張もされていると思います。ステージ上で新たに感じる感動、感覚、感情を、思い切り胸に抱いてつくってこられた作品を、私も客席で楽しみたいと思います」

出典: FANY マガジン
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第1回からフェスティバル・ディレクターを務める板尾創路は、5回目を迎える演劇祭に感慨深げな表情でこう語ります。

「5年続くというのはひとつの節目。大したもんやなと思ってます。でも、始めたときから上演のルールとかぜんぜん変わってないんです。それで5年続いたということは、これで間違ってなかったということ」

さらに、これまでの演劇祭参加者の実績について、「いろんな分野で皆さん活躍されている。僕も、ふつうに仕事の現場でお会いしますし、成果は出ている」とアピールしました。

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スペシャルサポーター(審査員)の野上祥子さんは、ミュージカル『テニスの王子様』、ライブ・スペクタクル「NARUTO-ナルト-」など2.5次元ミュージカルを中心に多くの舞台をプロデュースするネルケプランニングの代表で、昨年に続いての参加です。

「なにが嬉しいって、舞台上に立つ人たちがものすごく元気。(上演時間の)45分で見せていただきたいのは、各劇団の生きざまや色、個性ですが、皆さんがそれぞれ自分に向き合いながら、お客さんに向き合いながら、新しいつながりを見つけていただければいいなと思います」

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映画「幼な子われらに生まれ」「しあわせのパン」などを手掛け、国内外で多数の賞を受賞してきた映画監督・三島有紀子氏も、昨年に続いての参加。今回の演劇祭にこんな期待を寄せます。

「去年、参加したなかから役者さんおふたりの方に、新作映画(来年2月公開の「一月の声に歓びを刻め」)に出ていただいたという“つながり”をつくることができました。今年も、そういうつながりができたらいいなと思います」

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「この演劇祭、夢しかないから!」

連続テレビ小説や大河ドラマなど多数のドラマを手掛けるNHKエンタープライズのエグゼクティブ・ディレクター、岡田健さんは「皆さん、ユニークでギラギラしていて、『これからやってやるぞ』という気合が感じられてとても楽しみ」と嬉しそう。「初参加ですが、どういうドラマが繰り広げられるか、いまから楽しみ。思い切ってやってみてください。我々も受け止めて丁寧に審査したいと思います」とエールを送ります。

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最後に、第1回からスペシャルサポーターとして携わり、前回からスーパーバイザーとして参加する脚本家・演出家の西田シャトナー氏からも挨拶が。

「全劇団のゲネプロを見させていただきましたが、芝居すべてすごくおもしろかったです」と太鼓判を押すと、「キャストと演出家とスタッフの付き合いを見ているだけで胸いっぱいになるチームもありました。その舞台のまわりのことも審査員にしっかり伝えますので、安心してやってください」と激励しました。

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また、過去の「関西演劇祭」から2021年にベストアクトレス賞・観客賞を受賞した福富タカラ、2022年にベストアクター賞を受賞した北野秀気、2021年にベストアクター賞を受賞した寺井竜哉がVTRでコメントを寄せました。

なかでも寺井は、「関西演劇祭2021」で審査員を務めた行定勲監督に見出され、映画「リボルバー・リリー」に出演。この映画に出演している板尾は、「あとから聞いて、『めっちゃいい役、してるやん!』と。すごいなあ」と感心した様子でした。

そして、今年も参加している「Artist Unit イカスケ」主宰の青木道弘も、演劇祭で“つながり”を見つけたひとり。「野上祥子さんと出会い、ミラクル☆ステージ『サンリオ男子』の演出をやらせていただきました。この演劇祭、夢しかないから!」と参加劇団にハッパをかけました。

今年の劇団はハイテンション!?

開会式を終えた実行委員長の南野と、フェスティバル・ディレクターの板尾に話を聞きました。過去4回の「関西演劇祭」を見続けてきた板尾は、今年の印象をこう語ります。

「今年、なにか妙に劇団さんのテンションが高い。いつもはもうちょっと緊張していておとなしいんですけど、(今年の劇団は)すでに2~3泊、団体旅行に行ってきたみたいに和やかで、みんなテンションが高いです。4年前はこういうのはあまりなかったですね」

出典: FANY マガジン
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一方、「いまからワクワクしています」という南野は、演劇祭の見どころをこう語ります。

「お芝居を観ると、自分の感性というか、『私はこんなふうに考えるんだ』『自分はこういうのが好きなんだな』と、いろいろ感じることができます。なので、そのままでいらっしゃったらいいなと思います。そうすれば、きっと何か持ち帰るものがあるはず」

テレビドラマのイメージが強い南野ですが、じつはこれまで数多くの舞台に立ってきました。

「デビューは40年近く前になります。ヨーヨーを構えたドラマ(『スケバン刑事Ⅱ』)よりも前に舞台に立っていまして、そこから年に1作品は必ず出ています。大きい劇場から小劇場まで、いろんな作品に出ていて、そういう場はこれからも大切にしていきたいと思います」

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そんな南野は兵庫出身。地元・関西のお客さんたちに、こんな期待を語りました。

「関西のお客さんは温かく、参加意識を持って観てくださる方が多いのかなと感じます。『わーっ!』て笑いながら手を打っていただくと、私たちも、より頑張っちゃう! みたいなところもあるので、一緒に(舞台を)つくっていただいていると感じますね」

『関西演劇祭2023』公式サイトはこちらから。