吉本興業が岩手県で“地方創生”学校を設立! 紫波町×オガール×吉本の「ノウルプロジェクト」始動

吉本興業が、岩手県紫波町で“地方創生”を実践する教育事業「ノウルプロジェクト」をスタートさせます。公民連携のまちづくりで全国的に注目されている同町と、その地域活性化事業を推進する株式会社オガール、そして吉本興業ホールディングスの3者がタッグを組んで、未来の地域創生のリーダーを育成しようというこの事業。11月1日(月)には、東京・新宿にある吉本興業東京本部で3者による包括連携協定の締結式が開かれたほか、地域再生プロデューサーの清水義次氏をゲストに迎えて地方創生をテーマにしたトークセッションなどが行われました。

出典: FANY マガジン

おそろいのハッピで締結式

この日の締結式に登壇したのは、岩手県紫波町の熊谷泉町長、株式会社オガール代表取締役の岡崎正信氏、よしもとエリアアクションの泉正隆社長の3人。プロジェクト名が書かれたおそろいのハッピを着て、壇上に並びます。

「このたびはありがたい機会をいただきました」(熊谷町長)、「日本の教育に一つの選択肢を与えられるような事業にしたいと思っています」(岡崎氏)、「今回、一緒に新たな取り組みができることを光栄に思っております」(泉社長)とそれぞれあいさつすると、さっそく紫波町とオガール、吉本興業ホールディングスの3者による包括連携協定が結ばれました。

その後のフォトセッションでは、この日の司会を務めた岩手県住みます芸人のアンダーエイジが「(みんなでハッピを着て撮影するなんて)ビートルズ以来じゃないですか?」と一言。記念すべき日を盛り上げます。

出典: FANY マガジン

紫波町で実践されている、補助金に頼らない公民連携のまちづくりは「オガールプロジェクト」と呼ばれ、全国の自治体や企業から“視察したい町NO.1”として注目を集めています。その事業運営を通して地方創生に関する多くの実績があるオガールと岡崎建設、そして吉本総合芸能学院(NSC)などの長年にわたるスクール事業でノウハウを積み上げてきた吉本興業の3社は先月、紫波町に「株式会社 吉本・オガール地方創生アカデミー」を設立しました。この新会社が、今年度末で閉校する同町内の小学校跡地を活用して、地方創生を目的とする新しい教育事業「ノウルプロジェクト」を始動させます。

「ノウル」とは、地域の主産業である「農業」を育てて地域をつくる、という思いを込めて「のう(農)る」から名付けられました。プロジェクトでは“持続可能な地方創生の実現“を目指し、高齢化や若い人材の流出、産業・雇用の縮小など、多くの地方が抱える課題の解決に「教育」というアプローチで取り組んでいきます。

出典: FANY マガジン

地域ビジネスの実践を通して地方創生のリーダーを育成

「ノウルプロジェクト」は、地域に根差した農業や飲食業、さらには住宅事業や宿泊事業などさまざまビジネスでの実践を通じて、地方創生に必要な人材を育成する新しい教育の場として「吉本・オガール地方創生アカデミー」(2023年4月開校予定)を設立し、未来の地方創生を担うリーダーを育成するプロジェクトです。新学校は3年制で、高校生たちが地方創生を実践的に学びながら、高校卒業資格を取得できます。年間・短期で学ぶ社会人向けのコースも用意される予定です。

岡崎氏によると、今回のプロジェクトのきっかけは、吉本興業ホールディングスの大﨑洋会長と、「ビリギャル」で知られる坪田信貴氏の共著『吉本興業の約束 エンタメの未来戦略』(文春新書)でした。視察のために紫波町を訪れた大﨑会長と坪田氏が町の取り組みに感動し、さらに熊谷町長が「近々7つの小学校が閉校してしまうので、ぜひ紫波町でも人材を育成してもらえませんか?」と呼びかけたことが始まりだったと言います。

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これからの高等学校は、「実践」のなかで知識・技能を習得するような教育が必要だと力説する岡崎氏。「吉本・オガール地方創生アカデミー」では、その実践の場となる「ビジネス」の企画から運営までを高校生とキュレーターが一緒に作り上げ、そこで“給料”を稼ぎながら技能を学ぶ場を目指す、と言います。「若者が夢を叶え、地域のなかで豊かに幸せに生きる。地域で活躍し、その地域をもっと魅力的に変えていく未来を創っていきたい」と意気込みました。

失敗はあっても成功がないのが地方創生

トークセッションでは、オガールプロジェクトにもかかわる地域再生プロデューサー・清水氏がゲストとして登場。清水氏は、廃校になっていた旧四谷第五小学校跡地に吉本興業の東京本部を誘致したご当人で、ダークなイメージがあった歌舞伎町に明るいエンターテインメントの会社を誘致したことによって、「本当に歌舞伎町が救われたんです」と話します。

出典: FANY マガジン

それを聞いた熊谷町長は、「まさか清水先生がよしもとさんの東京本部にかかわっているとは知りませんでした」と驚きながらも、「紫波町は農業主体の町ですが、いま若い方が農業に魅力を感じていただけなくて後継者がいない。でも、農業は自分で自由に時間を決めて働くこともできるし、農家も経営なので、自分のやりようによって収入の増える面白さもあるんです」と、今回のプロジェクトで多くの若者が農業の魅力を知る機会となることに期待を寄せます。

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一方、よしもとエリアアクションの泉社長は、来年3月に開局予定の吉本興業のBS放送「BSよしもと」との連携にも触れながら、「全国エリアのモデルケースになるような取り組みになればいいと思っていますし、『BSよしもと』でもその取り組みをしっかり全国に伝えて、いろんな方に届けていけたらと思っております」と今後の展望を語りました。

出典: FANY マガジン

最後に岡崎氏がこう語ります。

「オガールプロジェクトは、みなさんからよく『成功している』と言われるのですが、それは“いまのところ失敗していない”というだけ。失敗はあっても成功がないのが地方創生の難しいところです」

大切なのは“利他の心”を持って、それぞれがそれぞれの役割をまっとうしてプロジェクトを進めること――そう指摘する岡崎氏が改めて強い決意を述べて、会見は終了しました。

「本会見は3者がみんな、未来につながる事業を永遠に続けていく覚悟を決めたという表明の場だと思っていただきたいです。ですので、もし今後、事業が進んでいなかったら、メディアのみなさんは(私たちを)フルボッコしにしていただければ……(笑)。それぐらいの覚悟を持って取り組んでいきます」