人気声優と吉本新喜劇の座員がコラボした異色の朗読劇が2月10日(土)、11日(日)の2日間、大阪・COOL JAPAN OSAKA TTホールで上演されました。「朗読劇『ボイコメ』〜声優×吉本新喜劇~」と題された舞台は、吉本新喜劇の川畑泰史が脚本を担当。朗読劇なのに立ち上がったり、動き回ったり、ネタがあったり……という斬新な公演の様子を、終演後に行われた囲み会見の模様とともにお届けします!
朗読劇では、吉本新喜劇から脚本の川畑のほか、すっちー、池乃めだか、島田珠代、松浦真也が出演。声優界からは、大阪出身で『ヒプノシスマイク』など人気作品に出演する岩崎諒太、デビュー3年目にして話題作『推しの子』ヒロインに抜擢された伊駒ゆりえ、『NARUTO』『鬼滅の刃』など大ヒット作に出演して常に第一線で活躍する鳥海浩輔、数々のアニメ作品でメインキャストを演じている本渡楓が参加し、演出は関西発のエンターテインメント演劇集団「片岡自動車工業」の片岡百萬両が担当しました。
今回は、川畑、すっちー、松浦、岩崎、伊駒が出演した初日の1回目公演の様子をお送りします。
声優陣もボケ倒して大暴れ!
5つの椅子とたこ焼き屋台だけが置かれたシンプルなステージ――。大阪城公園でたこ焼き屋を営む川畑と、アルバイト・すっちーのもとを、伊駒が「働かせてほしい」と訪ねてくるところから物語が始まります。
「きれい」と褒められて喜んだ伊駒が照れて、台本で川畑の頭を思いきりドツくという“お約束”のやりとりで、客席はさっそく爆笑の渦に。その後も伊駒は、可憐な声を武器に見事なコメディエンヌぶりを発揮します。
「働きたい」と言いつつ、川畑の屋台をボロクソにけなしたり、すっちーとはバチバチのバトルを繰り広げるなど大暴れで、新たな魅力を披露しました。
一方、大阪城公園の歩行者天国・城天(しろてん)で歌うミュージシャン役の岩崎は、イキのいい大阪弁でまくしたてる熱量200%の演技で圧倒。すっちーに負けじと客席に向かってアメをまくなど、終始ボケ倒して観客を沸かせます。伊駒とともに、愛のセリフを情感たっぷりに演じるくだりでは、まさに声優の本領発揮!
そんな声優2人を、新喜劇チームは全力で迎え撃ちます。川畑は、次々と繰り出されるボケを一手に引き受けてツッコミまくり、すっちーはおなじみのすち子キャラで物語をこれでもかとひっかき回します。そこに松浦の歌&ギターネタが加わり、立ち上がったり動き回ったり、朗読劇とは思えぬライブ感あふれる演出で大いに笑わせました。
アフタートークでは人気声優のぶっちゃけトークも
コラボならではの見どころもたっぷり。松浦のギターに乗せて、岩崎が尾崎豊の名曲『I LOVE YOU』を熱唱したほか、モノマネ合戦では和田アキ子、なかやまきんに君、芦田愛菜、えなりかずきなどが次々と飛び出して大ウケです。
そしてなんと、声優チームが“乳首ドリル”の洗礼を受けるひと幕も! すっちーが「まきざっぱ(棒)」を持ち出すと、客席は「待ってました!」の歓声と「まさか!?」の悲鳴が入り混じるカオス状態に陥ります。岩崎はすっちーから「めちゃめちゃ声出てるやん」と太鼓判を押され、伊駒も期待に見事に応えて大きな拍手を受けました。
舞台は、ミュージシャンと観客として出会って恋に落ちた男女が、借金取りや母親の妨害を乗り越えて結ばれるハッピーエンドに。大阪城にちなんだ、豊臣家と徳川家にまつわる歴史ネタも絶妙なスパイスとなり、最後まで爆笑の連続でした。
エンディグ後には、FM大阪のDJ・淡路祐介のナビゲートによるアフタートークを実施。川畑が脚本制作のウラ話を語ったり、すっちー、松浦が舞台上でのハプニングを明かして盛り上げます。岩崎、伊駒が「これまでの芸能生活で、いちばん“やってしまった!”ことは?」「今後、解決したい悩みは?」といった質問に答えるコーナーも用意され、人気声優の素の姿がわかるぶっちゃけトークに観客は大喜びでした。
すっちー「台本があることで逆に緊張」
終演後の囲み会見で川畑は、いつもと勝手の違う朗読劇の脚本を書いた心境をこう語りました。
「ふつうにこのメンバーでやったらウケるだろう、という新喜劇にしたつもりだけど、(演者が)台本を持って演じることによって、言わされてる感が出てしまったらむちゃくちゃスベるかもしれんなと怖かった」
そのため、川畑は事前にすっちーから意見をもらったそうで、「(すっちーが)『いける』って言った瞬間、もしスベっても半分はすっちーの責任にできると思ってホッとしました(笑)」と笑わせました。
すっちーは「台本があることで逆に緊張する」と、いつもアドリブ全開でやっている新喜劇の役者ならではの心境を告白。しかし、「いざ出てやってみると、お客さんの反応がすごくよかった」そうで、「台本を持ってるけど、ちゃんとお芝居してるというか……なんか、すごく新鮮な舞台でした」と振り返りました。
松浦は「物覚えが悪いほうなので、最初は台本持ててラクでええわと思ってたんですけど……」と言いますが、朗読劇について調べたところ、「表現力や間といった技術が問われる」とあったそうで、「そこで背筋がぴーんと伸び、めちゃめちゃ台本を読み込みました」と話しました。
演出を担当した片岡は「新喜劇は目で楽しめるコンテンツ。一方で、声優の皆さんは(声で)想像させることが仕事。これをひとつのステージにするうえで、すごく悩んだ」とコメント。一方で、「川畑さんの台本が素晴らしかったので、シリーズになっていってもいいぐらいだなと手応えを感じております」と早くも続編に期待を寄せました。
「声優なのか、役者なのか、芸人なのか…」
大阪出身で、子どものころから新喜劇を見て育ったという岩崎は、「まさか自分が新喜劇の皆さんと一緒に舞台立てるなんて」と感激しきり。台本を見て、「これ、新喜劇まんまやん!」とうれしくなったそうで、「あのドリルをやっていいんかと、このうえなく光栄だった。声優なのか、役者なのか、芸人なのか……みたいな感じで、自分の中に新しい感覚が生まれた不思議なお仕事だった」と笑顔を見せました。
伊駒も「日本のひとつの文化である新喜劇に、このように関わらせていただけるとは思っていなかった」とニッコリ。最近、YouTubeで見たばかりという乳首ドリルを経験することになって、「すごく感動した。このような機会をいただけて本当にうれしかったです」と喜びますが、あまりの称賛ぶりにすっちーが「そんな光栄なことじゃないですよ(笑)」と苦笑いしていました。
川畑は声優チームの奮闘について、「新喜劇のメンバーより声が出ていた。僕もそれに引っ張られて、いまちょっと声が飛びかけてる」と脱帽の様子。すっちーも「歌うときとかも、すごく大きく動きはるし、途中から役者さんとして見えてました」と称賛します。
一方、“声のプロ”である岩崎は、新喜劇メンバーの声を聞いて「これは負けてられへんと思った」とライバル心に火がついた様子。「絶妙な間とボケ・ツッコミは職人技。間近で感じられたのが本当に嬉しかったです」と話しました。